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【あらすじ】昭和20(1945)年8月15日に日本はポツダム宣言を受諾したが、宣言には軍人の帰国が明記されていただけで、民間人については示されていなかった。8月31日の終戦処理会議で日本政府は「在外邦人は現地に於て共存」との方針を出し、日本の人口の1割:660万人は異国に置き去りとなった。
特に200万人がいた満州では、8月9日にソ連軍が侵攻するや関東軍は南方に逃れ、捕虜となった男性60万人はシベリア抑留。女性・子供・老人には中国人とソ連軍による略奪・暴行を受けた。それを逃れるため長春に集まった11万人の中の有力者が日本人会を結成し支援活動をするが、すぐに22万人へ膨れ上がり、越冬できずに1万3千人が死亡。
昭和21(1946)年3月に日本人会の使者が吉田茂外相に引き揚げ実現を訴えるが、占領下の日本政府は無力と回答され、マッカーサーと面会。人道的立場から引き揚げ実施を約束された。その頃の旧満州ではソ連軍に代わって中国共産党軍が入り、アメリカは国民党軍を送り込んで内戦状態。
国民党軍を輸送して空になった船に引揚者を乗せ、日本政府も引揚援護局を設置し医療・食料・衣服・資金援助をした。博多湾では望まぬ妊娠をした女性の身投げが相次ぎ、堕胎手術を行う「二日市保養所」などで対応。ソ連はシベリア抑留者を復興の強制労働に利用し、彼らの帰国は昭和34(1959)年までかかった。
最終的に昭和36(1961)年6月27日に引き揚げは完了し、660万人の内628万人が帰国。だが中国残留孤児などの問題は未だ解決していない。
【感想】○
満州に置き去りとなった開拓民を中心に扱っているので、その時歴史が動いた:ソ連参戦の続編的な位置付け。満州軍に逃げられ、敗戦で無力となった日本政府から見放された開拓民。その引き揚げは米・ソ・中の大国間の思惑というパワーゲームに翻弄された。
そしてあまりにも悲惨な体験をした人々は、その記憶を封印して戦後を生き抜き、死を前にして重い口を開き始めているのが現状か。この記憶や事実に対してどうこう思うよりも、まずは知る事、知りたいと思う事が重要ではないかと思う。マスメディアには多数の声を集め伝える力があるのだから、もっとこうした企画を通していけばいい。
引き揚げに関しては国と個人、国家と国民の関係の無情さを感じずにはいられない。アジアに進出・侵略していった大日本帝国から、アメリカの支配下に入った日本政府は、自らの無力さを言い訳に邦人の現地共存を決め、660万人を置き去りにしようとしていたとは。
その本音は、国内の食糧不足や復興の遅れを懸念したからであるが、戦前の満州開拓団からしても、農村人口の爆発と恐慌による食糧不足、それによる人心荒廃で富国強兵策の失敗を恐れたために移民を進めたのであって、根本的な日本政府の発想は戦前も戦後も変わっていないのでは。
満州や中南米への移民政策は、政府の手に負えなくなった貧しい民を、体よく外へ放り出す棄民政策だった。引き揚げ問題より遥か以前に彼らは棄てられていた。
アメリカの占領地となった地域では戦後2年ほどで引き揚げがほぼ完了した。人道的とも言えるが、米国は太平洋戦争中に大増産体制を作り上げ(毎週空母が完成するほど)、終戦になると船があり余っていた面もある。その一方、軍人の復員に際しては旧日本海軍の軍艦を優先して使わせる小憎い演出もしてる。
アメリカのような余裕のないソ連は対照的で、2000万人を失った大祖国戦争からの復興に捕虜を使った。抑留者を共産主義者に転向させる事にも努め、転向者と非転向者に分かれた日本人に内部対立も起きた。
それとは別にシベリア抑留では、支給の食料が少ないために栄養失調になり多数が死んだが、直接の死因は栄養失調死よりも暴行死が多かった。死ぬ寸前の者は食料を離さないため、寄ってたかって暴行して奪ったからである。
開拓団に土地や生活を奪われた中国の人々は、その復讐に残った日本人を襲い、その事実は因果応報の論理や日本の侵略を持ち出す事でうやむやになっている。中国としても共産党と国民党の対立が米ソの覇権争いに利用された面もあり、本当の戦後はやって来なかった。朝鮮戦争の起きた朝鮮半島も同様に。
日本人への暴行・略奪の一方、人身売買もどきや、捨てられた日本人の赤ん坊を引き取って育てた中国人もいた。差別等で不利となるのを承知で妻に迎えた人もいた。赤ん坊を泣く泣く置き去りにするしかなかった日本人がいた一方で、望まぬ妊娠で自殺したり、赤子を堕胎した女性もいた。
各国の思惑や動向と、人々の様々な思いや行動が交錯し合い、引き揚げ者の運命は一様ではなく、個々の事象を知れば知るほど言葉を失っていく。番組内でも一言触れられていた樺太の韓国人の帰国問題。他にも徴用され、日本で強制労働に従事していた朝鮮・台湾・中国の人々の帰国問題などもある。もっと他にも知らないだけの問題があるはず。
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