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【あらすじ】駿府の由比の宿に着いた柳生十兵衛(村上弘明)一行。軍学者:由比正雪(和泉元彌)の生家を見て人となりを知りたい十兵衛。その前に佐山寛平(苅谷俊介)が謝罪。自分の告げ口のせいで十兵衛の母:りん(富司純子)は柳生家を出て、茂平ゆかりの紀州へ行った。そして妊娠していたりんは松下兵衛(大沢樹生)を産み、妹:しのは徳川頼宣(西村雅彦)の側室となり梅之丞(星野亜門)を産んで死亡したのだと。
由比正雪の生家は紺屋で、母:かつ(吉行和子)・妹:のぶ(山岸舞彩)、吉岡道場に養子に出た兄:吉岡又五郎(モロ師岡)がいた。又五郎は武士になっても藍染めの手伝いを止めなかった。それもこれも跡継ぎでありながら出ていった富士太郎(正雪)のせいだと言う母:かつ。
十兵衛は又五郎と話をする。又五郎は兄でありながら自分から養子に出てしまい、弟:富士太郎に迷惑をかけたと悔やんでいた。十兵衛も剣術に生き、柳生家を弟:又十郎(森岡豊)に任せてしまったと共感する。そこへ正雪の勧めで弟子入りを志願する浪人100人以上が押し掛ける。その後、正雪本人も又五郎に会いに来る。十兵衛が来ていると知り身の危険を口にする正雪。
久能山東照宮に参詣する十兵衛。そこに正雪が現れる。さらに丸橋忠弥(照英)が徳川家光(寺泉憲)死去の知らせを持ってくる。一方、正雪の生家が紺屋だと知った武士達が正雪を嘲笑。又五郎は正雪のために戦う事を決意。十兵衛の妻:るい(牧瀬里穂)を人質に十兵衛を呼び出す。
「弟の夢に賭けてみる事に致した」
駿府での挙兵を宣言し、東照宮の境内にて十兵衛に長巻で斬りかかる又五郎。十兵衛は石段から落ちそうになるが、身を返して又五郎を斬る。
【感想】◇
由比正雪の生家を舞台に繰り広げられる肉親の愛。口では悪態をつきながらも子を心底案じている母。純粋に兄を信じている妹。そして最も弟を理解しているが、何もできずにいた兄。その兄は弟のために命懸けで十兵衛に勝負を挑み死んでいった。そんな家族を見て、遠くで泣く事しかできない正雪。
…と、まとめると非常に胸に迫る話なのだが、やはり善い人の家族というイメージが消えず、又五郎が戦いに向かう決意と矛先が少しちぐはぐ。その決意の引き金を引いたのが、直接会いに来た正雪本人というのも拙い部分。正雪の帰郷は本当に必要だったのかも若干疑問が残る。
吉岡又五郎は自分から養子を申し出たために弟:正雪が紺屋を継ぐ羽目になり、それに反発した正雪が武士になるため出ていったと悔やんでいる。せめてもの償いに紺屋の手伝いを続けているが、弟には直接的に何も出来ていないと思っている。
自分よりも弟の方が武士になりたがっていたのに自分が武士になってしまい、弟の道を邪魔してしまった。今、弟は誰よりも武士らしい武士として武士のための世を作ろうとしている。ならば自分はその夢の魁となろう!その決意の引き金が武士達の嘲笑、母への侮辱であり、正雪が言った「兄上も紺屋の子と言われた事はないか」との言葉だった。
ここからなぜ十兵衛と戦わなくてはいけないのか、の繋がりがしっくり行かない。十兵衛が正雪の夢の障害だから、8300石の当主という身の上でありながら武士など要らないと言ったから、などの理由付けがされていたが、どうも観ている方としては又五郎の決意とその矛先が完全には一致しない。決意は妥当としても矛先の方は狂気の決断のような。
戦いに使用した長巻は、長い柄の先に刀がある。自分から遠くに刃がある兵器。この距離が優しい又五郎と戦闘の遠さを表現しているようにも思えた。遠くから正雪を思っていた又五郎の心でもある。
石段から落ちそうになった十兵衛は踏み留まる。そして斬られた又五郎は石段を落ちていく。将軍に近い東照宮で落ちなかった十兵衛は、柳生家当主だから落ちず、あえなく落ちた又五郎は紺屋の子だった。どうしようもない身分の違いが勝敗を分けた。
その手は藍色に染まっていたが、死んでしまうと赤い血しか流れなかった。もはや武士でも紺屋の子でもなくなった又五郎。そして、紺屋の子の身分を捨て武士として生きようとしている正雪は、そんな又五郎に駆け寄る事もできない。彼の心の負の傷は、より一層幕府転覆という歪んだ情動となっていく事だけは確かだ。
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