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【あらすじ】天文17(1548)年、病弱な兄から19歳で家督を譲られた長尾景虎(上杉謙信)は越後の守護代として、電撃的攻撃と統率力のある軍事的才能に溢れたカリスマ性を発揮していく。連戦連勝の一方、仏教に帰依して殺生戒とのジレンマを抱えた。平和な越後を実現するため、肌着や夏服に使われる「青そ」の生産を奨励し、自ら京に出向いて販路拡大に尽力した。
商業の発達で越後は豊かになり争いは無くなったが、武田が信濃そして越後を狙ってくる。謙信は仏を守る四天王の一人である毘沙門天と自らを重ね、正義を守る事を自分の使命とする。戦で勝っても領土を広げず、私欲で戦わない男との評判を得て室町幕府から永禄4(1561)年に関東管領に任じられた。
武田を当面の敵とする織田信長は謙信に近づき、元亀3(1572)年に同盟。謙信は信長の「幕府を守る」との言葉を信じた。信長は浅井・朝倉を滅ぼしても謙信には贈り物攻勢で敵対の意思を示さず、足利将軍邸に向かう謙信の姿を描いた洛中洛外図屏風も贈った。
だが鉄砲を大量に導入した信長は武田を破り、足利義昭を追放。謙信と親交のある村上・佐竹・小山らの離反を促す。ついに謙信は信長の真意を知り、足利義昭の命に応えて石山本願寺・毛利家と同盟し、瞬く間に反信長包囲網を形成した。天正4(1576)年に毛利水軍が織田水軍を破って本願寺への補給を果たすや、謙信も呼応し越中を平定。能登の七尾城に迫った謙信軍に信長は4万の軍勢を差し向けた。
天正5(1577)年9月23日、七尾城を陥落させた謙信軍は手取川を渡った信長軍と対峙。鉄砲の威力を封じるため夜襲を敢行。味方同士の合言葉を徹底し統制のとれた謙信軍は信長軍を正確に攻撃、折からの雨もあって鉄砲は無力化し、敗走する信長軍は手取川の濁流に消えていった。
「戦ってみると信長は案外弱い」
天正6(1578)年、上洛に備えて6万の軍勢を動員した謙信だったが、出陣直前に脳卒中で倒れ49年の生涯を終えた。
【感想】○
私利私欲でなく義のために戦い続けた男:上杉謙信。織田信長とは全くの対極にあり、だからこそ信長は謙信を恐れた。二人が唯一戦った手取川の戦いでは謙信が圧勝。信長は絶体絶命の窮地に陥った。だが謙信は急死し、信長包囲網は崩れて信長の時代となった…という話。
誰もが天下を狙う戦国時代にあって、負け知らずの強さを誇るのに領土を拡張しない謙信は、信長以外にも理解不能な人物であっただろう。異端でありながら最強という存在は「触らぬ神に祟り無し」。信長が可能な限り謙信と事を構えずに済まそうとしたのも当然か。
番組では謙信が私利私欲の領土拡張に走らなかった理由の一つに、「青そ」の生産による商業発達を挙げていた。他国の領土を奪わずとも自国が豊かになれば戦をせずに済む。これで殺生戒の仏教に帰依した謙信の姿勢も理解できる。
ただ、自ら戦をせずとも他国の攻勢は防げないわけで、武田信玄との川中島の戦いは5度に及んだ。この苦しみを救ったのが毘沙門天であり、謙信は自らを重ね合わせて戦い続けた。「天下の乱逆を討ち平らげる。この志が駄目なら病死を与えよ」と考え、義のために戦う決意を示した。この姿勢が幕府からの信頼と関東管領の職を得る事に繋がった。
謙信は室町幕府という現在の秩序維持を毘沙門天の力で為そうとした。乱逆者に仏罰を与えるため遠征を何度も行った。関東での北条の勢いを止め、武田も食い止めた。だが足利義昭を擁していた信長は幕府も謙信も裏切った。
信長は義による仏罰などは信じず、鉄砲という道具を利用した。謙信VS信長はある意味、宗教と科学の対決にも思えてくる。人知を超えた軍事的才能を持ち、仏の力を信じている謙信と、軍事力を鉄砲によって増大させ、神仏を信じず神をも超えようとした信長。その勝敗やいかに。
手取川の戦いは、極めて冷静に相手の弱点を突いた謙信の勝利だった。仏を信じていてもその行動は神頼みではなく、合言葉や夜襲・地形利用といった地に足の着いた戦法だった。毘沙門天はいわばシンボルであり、実戦においては人間臭い作戦が勝利を呼んだ。その結果を毘沙門天の力と言わせ、恐怖を与える心理的効果は大いにあったが。
謙信は毘沙門天ではなく、やはり人間だった。義のためと心で思ってはいても、信長への恨みがあった。これは一つの私利私欲ではないだろうか。ここで初めて謙信は私怨という禁を犯した。さらに自ら戦の準備を始めた。それによって「病死を与えよ」との誓いどおりに死を招いてしまったのでは。むろん、神仏をないがしろにした信長の最期はご存知のとおりとして。
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