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【あらすじ】魔神剣を手にしようと進む堕天使ルシファー:榊拓海(津田寛治)に大天使ミカエル:切人俊司(笠原紳司)が斬りかかるが、思念で剣を奪われ刺される。榊にはさらに大天使ガブリエル:鬼頭真澄(渡辺健)が立ちはだかる。鬼頭は刺されながらも天使の羽で榊を拘束し、その間に神崎澪(阿井莉沙)は魔神剣を手にする。爆風が起き洞窟は崩れ、澪と榊は放り出される。
魔族化した榊は魔神剣を奪おうと澪に語り掛ける。
「人間は生きているのではない。生かされている。なぜ人は大量に死ぬ?なぜ自然界は猛威を振るう?全てはゲーム。神の戯れ事なのだ」
榊は手を伸ばし、娘である澪の頭を撫でる。
「寂しかったか。ずっと独りだっただろう。魔界こそが自由。真の安らぎ。娘よ、デビルシャドーを手に入れ、共に魔界へと光を降り注ごう」
だが澪は拒絶。
「人は心がある以上、繋がっている。私は独りじゃなかった」
榊は攻撃魔法で澪を倒す。澪は緑の血を流す。榊は魔神剣を取ろうとするが弾かれる。そこへ女神:神埼那美(大西結花)が現れる。
「悪魔は心に宿るもの。全ては幻」
那美は澪にも語り掛ける。
「澪、全てを終わらせなさい」
澪は魔神剣を手にし、デビルシャドーを呼び起こす。
「呪われし悪魔の鍵よ、永遠の劫火の海より姿を現せ!」
巨大な黒い羽根が出現し、澪の体内へと宿る。澪が選ばれし者であり、真の悪魔であった。
「デビルシャドーよ、この迷える悪魔の魂を救いたまえ。榊、もはやデビルシャドーは呼び起こされた。魔界へと戻るがいい」
神からも許されなかった榊は澪に情けを掛けられる。榊は切腹。その体から赤い血が流れる。
那美は澪に、なぜトドメを刺さなかったのかと尋ねる。だが澪は
「善と悪の境界なんてどこにあるの?ただの都合の良い思い込みに過ぎない。人間はあらゆる感情を背負って存在する」
と答える。魔神剣とデビルシャドーを封印せよと命じる那美にも
「人間は生まれた時から罪と向き合って生きていく。悪魔は人の心に存在する」
と答え、那美とも別れる。
澪は普通の生活に戻って生きていく。その背中に大きな黒い羽根を背負って。
【感想】○
極めて妥当なラインで決着したなという印象。しかしドラマ的(テレビ的)には物足りないかもしれない。もっと派手に悪魔:榊との決戦が行われたり、死んだ仲間が蘇って一緒に戦ったり、神の降臨で世界が一新されたり…といった展開にも出来ただろうに。
よく、原作があると結末は曖昧になるが、これは原作もスポンサーも無いオリジナルドラマだからこそ、逆に分かりやすい結末にはならなかった。現実に対して本当に言いたい事をやると、テレビ的には見栄えのしない物が出来上がる。悪く言えば、脚本家(この作品は監督兼脚本)の頭の中で完結してしまう。でも伝えたい事をやりきったというのは評価したい。
天使達は一心に悪魔と戦い死んでいく。悪魔は神を消し去る事に執着する。全てを創造したとされる神は悪魔の台頭に悩み、人間世界での戦いを見守るのみ。天使と悪魔の血を引く澪の決断は、悪魔としてデビルシャドーを手に入れるが、その力を神のための戦いには使わず、自分の心に留め置くというものだった。そして人間の姿で生きていく道を選択した。
天使・悪魔・神のどれにも従わず、人間の自由意思を示した澪。世界は何事もなかったかのように変わらず、人々は生活していく。心の中に悪が潜み、心があるから善は行われるのか。人間界では新しい命も生まれる一方、犯罪や災害で人は死ぬ。それらを善と悪に分けるのは人間の考えに過ぎず、神も悪魔も概念でしかなかったのだ。
澪は父の姿をした悪、母の姿をした善の戦いを見た。子供から大人への成長の中で、世の中が善と悪に分けられない現実を知った。自分の意思に目覚めて父の命令・母の干渉から自立した。善のための戦いもせず、悪に情けを掛ける生き方を選択した。悪魔を心にしまい込み、神も信じずに生きていく。
【総評】◇
ここ2年ほど、録画ミスをしなかったのに初回を失敗するほど静かに始まったマイナーなこのドラマ(笑)。TVKでは金曜夜9時というそれなりの激戦区で放映された。
最初に観る事になった#2◇は、説明ばかりで逆に助かった。世界観の描写が説明というのは禁じ手だが、見逃した身には有り難かった。
しかし#3◇でもまだ説明を続けているのには苦笑した。もしかしたらずっとこの調子のドラマ(返って斬新だ)なのかと思った。自分に閉じ篭る澪が戦いを意識する話ではあったが。
説明調だった分、#4○の動きには目を見張ってしまった。榊と切人の思惑の中で、駒のように使われる澪達という構図も上手く形成されていた。
#5○も緊迫した展開が続き、ローカルなマイナードラマとは思えないほどの盛り上がりだった。でも水穂の早過ぎる死はやはりもったいない。沙耶との悲しい物語をもっと全面に持ってきてもよかったと思う。
#6◇でも人物の死の意味する所が薄く、このドラマの弱点が浮かび上がった。生き死にの虚しさを伝える意味合いでもあったのだろうか。
#7◇は薔薇十字団側と榊側のそれぞれが疑念を抱えるという構図は良かった。さらに視聴者には榊父親説が浮上するという疑念までもたらした。
#8◇はまた説明調に戻った印象。というかアクションシーンが下手だった。ここで森の精霊が言っていた「神の恩寵と人類の自由意思」というのが最終回での澪の決断を暗示していた。そして、本筋とはあまり関係ない重岡スパイ説に執筆者が拘り続けて来た点は猛省せねばならない。
#9◇で澪は悪魔に魅入られてしまう。天使の悪行を知り、悪魔に付いて行った澪。この辺りから澪の心の有り方が主軸となってクライマックスへと進んでいく。
#10○では天使に身柄を救出された澪だったが、心はどっちつかずで、その乖離に苦悩する様子が上手く描かれていた。
#11◇になっても澪の心は固まらず、ただ人物が死んでいく展開。そんな澪では魔神剣を掴む事はできなかった。
そして最終回○。天使でも悪魔でも神でもない心に目覚めた澪は魔神剣を手にする。デビルシャドーを呼び起こすという悪魔の願いを叶えつつ、その力を神のために発動する事もせずにしまい込む。両方の血を引く澪にとって、片方を消す事は自分の否定でもあった。どちらも受け入れ、どちらの思いどおりにもさせない。それが澪の(人類の)自由意思だった。
役者の演技面は、主役の阿井莉沙の表情が良かった。何かをしなければと思いつつ、それが分からず迷い続ける立場を表情で演じ切った。榊を哀れむ表情、事が終わってからの虚脱の表情も出来ていた。そして敵役の津田寛治はやっぱり凄い。最終回なんて、長尺でも目を剥いて瞬きを一切していない。完全に悪魔に成り切っての熱演だった。この二人が対峙するシーンは情感に溢れ、大変に見栄えのするものだった。
シリーズ後半は携帯も通じない場所での撮影(集中合宿みたい)だったそうで、役者の感性が研ぎ澄まされていた。津田寛治が阿井莉沙の良さを引き出したとも言えるし、阿井も津田さんには負けないっ!との気迫を見せていたようにも思えた。
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