テレビ批評的視聴記 - 2007/03

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2007年03月30日(Fri)▲ページの先頭へ
しにがみのバラッド。(最終回)

【あらすじ】モモ(浜田翔子)は死神が持ってはいけない「心」を持っていたから処分された。ダニエル(吉田里琴)は仕え魔を辞めてでもモモの記憶を取り戻そうと決意する。他の仕え魔から白い目で見られ、モモも戻らないため、ダニエルはカーネル先生(牧口元美)の下を訪ねる。

カーネルがかつて仕えた死神も「心」を持ち、処分されたが「心」が消えなかったため、今も地下牢に囚われている。ダニエルはその死神からモモの心を取り戻すヒントを得ようと会いに行く。その死神バラード(小林高鹿)は、元々は心を持ってなかったが、対象者である目の見えない少女(鈴木かずみ)と出会った。少女は死神に、今までの経験や楽しさ・悲しさなど色々な事を話した。

バラードはある日、泣いていた少女に遂に話し掛けてしまい、その少女の命を奪えなかった。
「心を取り戻すのは、心だけだ」
答えを教えた見返りとしてバラードは、自分を殺すようダニエルに頼む。バラードに鎌を渡したダニエル。

その頃モモは下界で、起こらないはずの事故を起こし、死なない運命の人間の魂まで奪っていた。その違反によって5人組の死神に拘束されそうになるが、持っていた鎌で5人組まで殺す。ダニエルが止めようと鈴を見せる。そしてダニエルは、それでも目覚めないモモを鎌で斬るのだった。

ダニエル「ごめんよモモ」
モモ「なんで泣いてるの」
ダニエル「きっとモモの代わりに泣いてるんだよ。おかえりモモ」
助かったモモは裁判にかけられたが、カーネルの計らいにより、その処分はダニエルがモモを監視するというもので済んだ。

【感想】◇
記憶を失い、暴走を続けるモモを元に戻そうと奮闘するダニエル。結局すべてが丸く収まってエンド。原作の方が続いているため予定調和ではあるが、よく見ると展開に非常に不自然な部分があり、このドラマの製作側がやりたかった結末と原作とのせめぎ合いが感じられる最終回だった。

死神バラードは少女によって「心」を持ったのに、その望みは死ぬ事だった。あまりにも長い投獄と、それでも少女を愛している苦しみに耐えきれなくなったのだろうか。心を持つがゆえに、投獄も愛の感情も辛い。でも心を失って普通の死神として働くのも嫌。その答えは死しかない。

モモも心を持ち、死神としての職務を果たさなくなったが、バラードのように心を持ち続ける事はなかった。処分され記憶を失う。モモは究極の心である愛を誰かに向けていたわけではなかったから。だからダニエルと再会しても断片的に脳裏によぎる程度にしか思い出せない。

結局ダニエルは、モモから貰った鈴を見せてもモモを取り戻す事は出来なかった。モモを鎌で斬りつけモモを倒す。心あるダニエルは、心を失って普通の死神として働くモモに耐えられなかった。その答えはモモを殺す事だった。

ここまで、「心」を持った者の悲劇を見せておきながら(しかも物語的に完結してる)、最後の最後でご都合主義な大団円となる。モモはなぜか一命を取りとめ、裁判でも軽い処分となり、しかもダニエルとモモにとって幸せな処分となる。モモはこれからも対象者におせっかいを焼き、ダニエルはそんなモモと仲良くやっていくそうな。

【総評】◇
○評価にするか非常に迷う所だが、やはり主役であるはずのモモ(浜田翔子)とダニエル(吉田里琴)の格好や演技、その二人のエピソードの拙さはどうしても減点材料となってしまう。しかし、個々のエピソードでは良い回が結構ある。演出も色々と解釈が可能で自由度が高そうに見えつつ、無駄のない仕上がりになっていた。

#1◇は無気力になった父に何も言えず、淡々と家事を続ける息子が、モモによって心情を吐露した所で死を迎える話。死という無常さを描き出したが、モモのビジュアルとダニエルのセリフ回しへの拒否反応で、視聴を断念する者多数(笑

#2○は死を悟った少女がそれを受け入れたがゆえに、好きな相手に死を隠そうとする葛藤を描いた。かなり複雑な心情ではあるが、その心情を全て汲み取れるほど相手の男の子と気持ちが通じ合っていたという、とても良い話。

#3○は父の再婚で欲しかった妹が出来たのに、他人を愛する心を知ってしまったがゆえに、父を許せず妹にも素直になれない姉の話。これも複雑な心情の話だが、家族と恋人との違いを混ぜつつ新しい妹との関係を理解させた無駄のない脚本が巧い。

#4◇は姉を救えなかった過去を持つ男の子が、同様の運命を辿りだす恋人を助けに動く話。ただ、姉が恋人にとって代わるという単純な教訓を見せるのではない所が渋い。姉と恋人の違いを男の子の過去からの成長を軸に描こうとしていた。

#5△は居場所のない男の子がモモと出会い絵に感情をぶつけ、父にも解らせ、同級生にも立ち向かっていく話。死を迎えた父にも暴言を吐く所が意外。死んだら仏などという甘い見方を否定する事で、イジメが無くなっても心の傷の深さとその継続性を訴えようとした…とも考えられなくもない。

#6◇は解釈が難しく、お手上げ状態で勝手な妄想に走った。そんなに難しく考えず、娘を思いやるがゆえの母の愛情を主軸に、その方向を仕事ではなく娘に向けるべきだった…という解釈で良かった。母と先生は単なる対比となる。

#7、#8◇は最も明るい感じのエピソード。冒険を通じて祖母の思い出と、大切なものを知るという王道的な展開。若い俳優が出るドラマは本来、このくらいの明るさが必要なのかも。

#9○は一転してドン底を見せた。娘の死を受け入れられない父は、周囲から励まされても立ち直る事は出来なかった。一話完結でバッドエンドを迎えるという大胆さが度肝を抜く。この話が後々の展開のためという含みではあるが、このドラマならではの手法であって高く評価したい。

#10○はさらに殺人・虐待・心中という重いテーマをいくつも重ねた救いのない展開。だからこそモモは運命を変えてしまう。不遇な男の子と女の子のささやかな幸せすら奪ってしまう死神の役割を考えされられる。役者の演技も良かった。

#11◇でモモだけでなくダニエルも死神の役割に疑問を持ち出す。普通の死神の働きを見せ、さらに普通以上に働くようになったモモも見せる。

そして最終回◇。「心」を持っていれば死神として存在できない。バラードもモモも存在してはいけない死神。ダニエルにこの現実が突き付けられ、それを変える事も出来ずにモモを殺すはめになる。でも他のメディアとの都合上、ハッピーエンド。

死神との出会いによって今までの生き方の見直しをする人々。懺悔や転向を見せた所で訪れる死の運命。モモはその運命を変えずに理解し合える仲を対象者に求めた。だが人にとって死はあまりに大きく、死神によって残された人の運命は良い方向にも悪い方向にも変わった。やがてモモはその現実に耐えられなくなり、死神の仕事を放棄し天上界に反抗する。

モモと出会った対象者は生き方を変えたが、それは「死」を知った上での変化だった。死があるから人は変わる。死神は死によって人を変える、死を知らせる事で人を変えるのではなく、ただ死がある事で人は変化するのだ。その死を遂行する死神が仕事を放棄すると、人は成長しなくなる。

だから死神には余計な心はいらず、ただ遂行する事が求められる。それが死神の本質であり、それが「死神の心」であった。ダニエルは「死神の心」を殺すため、モモ自身を斬るしかなかった。それでしかモモの心を取り戻せないはずだったのに…。
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しにがみのバラッド。DVD Vol.1(1、2話)
Vol.2(3、4話)
Vol.3(5、6話)
Vol.4(7、8話)
Vol.5(9、10話)
Vol.6(11、最終話)
しにがみのバラッド。(本・コミック)
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2007年03月26日(Mon)▲ページの先頭へ
デビルシャドー #11

【あらすじ】魔神剣のある洞窟前まで森の精霊(高橋幼奈・声:浅木勝)に案内される一行。だが森岡涼子(川合千春)は怪我が悪化し倒れる。普通の生活に戻るためにも神を信じろと言う涼子だったが、突如として氷室沙耶(吉沢キヨ)の放った剣が刺さり絶命。神崎澪(阿井莉沙)は沙耶が娘:水穂(藤岡範子)に託した短剣を手に戦う。

森の精霊も沙耶に飛び乗るが沙耶に刺される。そのまま羽交い締めにした格好で澪にトドメを促す。澪は呪文を唱えて二人を消滅させる。切人俊司(笠原紳司)は涼子を葬った後、神を憎む心のある澪に魔神剣を手にさせるわけにはいかないとして、澪と対峙する。

榊拓海(津田寛治)は神埼那美(大西結花)との戦いを思い起こす。通常攻撃では敵わないと悟った那美は、呪文を唱えて魔神剣を召喚。
「天地乱れる時、十字架に薔薇を絡める者の下、魔神剣現る。その剣を使いし者、栄光と共に魔の影を降り注ぐべし」
デビルシャドーを呼び起こす体勢に入った那美。だが榊の突撃が一足早く那美の体を貫く。那美は倒れ魔神剣は消失した。那美は元々女神だったのかもと思う榊。

切人と戦う澪。
「あなたさえ居なければ皆死なずに済んだ。神様はどうして私にこんな力を与えた?どうして私を生んだ?」
切人の剣も澪の剣も吹き飛ぶ。涙を浮かべて口から出血する澪。切人は血も涙も流せる人間が羨ましいと語る。澪には神から授かった人としての感情も流れている。
「澪は今のまま、人間の心のまま、魔神剣を手にすればいい」

洞窟に入った澪と切人。祀られている魔神剣を手にした澪だったが光と風が起こり弾かれる。そこへ榊と鬼頭真澄(渡辺健)が現れる。切人と鬼頭が戦い切人は窮地に陥るが、鬼頭は切人に神への忠誠を示す方陣を見せる。澪は榊の言葉に迷いを見せる。
「そこをどけ。我々魔族が神を超える時が来たのだ」

【感想】◇
神か悪魔か。どちらの陣営に従うべきか迷い続ける澪。天使と悪魔。どちらも神が創った存在である以上、戦う事の無意味さを悟った切人。澪に切人は人間として魔神剣を手にせよと答えを導くが、魔神剣は澪を撥ね返してしまった。ではやはり榊が手にしてしまうのか。デビルシャドーは現れるのか…といったところで最終回へ。

#6記事でも書いたが、今回もやはり登場人物の死の意味する所が読み辛い。前回、もろに沙耶に斬られた涼子が生き残った割には、今回あっさりと死んでしまう。澪にあくまでも人間の立場を主張するためだけにいたキャラだったのか。絶対的に神側を信じる一本気な性格が人間を代表していたとも思えないが。

沙耶の死も…。そもそもこのキャラはどうやって生き返ったのか生誕部分が不明で、その死が軽く思えるのは無理ないか。悪魔に操られて生死の境界を越えた人物で、中身が空っぽだった。その中身を水穂の短剣で呼び起こした部分をもう少し膨らませれば、結構良いサブストーリになれたかもしれない。澪と那美の関係との対比としても上手く使えたかもしれない。

榊と那美の対決場面はCGもあってかなり迫力があった。この18年前の戦いの回想は今回で終了なのだろうか。那美が最初から女神だったというオチでいいのか。まぁこれで那美は倒れたのにどうやって澪が腹から生まれたんだ、という疑問は解消される。澪は降臨した魔神剣のように天から源三の所に降りてきた感じかな。そんなアバウトな解釈で良いのか分からんけど。

切人の導き出した答えは、善が天使、悪が悪魔、それらを超越したものが神。天使も悪魔も神が創り、神の意志の下でしか動けない。だから天使と悪魔は表裏一体。対して人間の心には善も悪もある。澪は神と悪魔の子という身体だけでなく、心もその両面を併せ持つ人間。ならばその心のままに魔神剣を手にする事こそ、この戦いを終結できるのでは…というもの。

だが、魔神剣は澪を撥ね返してしまった。澪にはまだ何かが足りないのか、余計な物があるのか。それは世界を救いたいと願う心なのか、他者を憎む邪念なのか。この辺は最終回できちんと解決すると信じたい。

鬼頭の立場が神の側にあったという種明かしもされたが、天使でありながら悪事を働いた切人と、悪魔に付いていながら善行をなそうとする鬼頭、という対比にはなっている。でもこんな終盤に来ての複雑な事情は、混乱を招くだけというか、意外性を狙っただけの設定にも思える。大丈夫か、ちゃんと決着するよね。本筋は澪の心なんだけど。
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2007年03月23日(Fri)▲ページの先頭へ
しにがみのバラッド。#11

【あらすじ】死ぬ運命の人間を助けた死神モモ(浜田翔子)は裁判にかけられ、裁判官(横田直幸)から極刑を申し渡される。モモは処分され、ダニエル(吉田里琴)は死神Z-115461号(堺屋さかい)に仕える。115461号は老若男女、事故、病死、自殺、殺人などの事情に関係なく淡々と仕事をこなす。
「それが普通。それが死神。なのにどうしてこんなに心が痛むのですか」

モモから貰ったダニエルの鈴を取り上げて捨てた115461号。仕え魔カイル(ナジメ・ナザリオ)はダニエルに、仕え魔を従えない新人の死神が一日100人の魂を運んでるとの噂話をする。ダニエルはモモと一緒に仕事をした人間達のその後を見に行く。

仕え魔の役目に疑問を持ったダニエルは師匠カーネル(牧口元美)に訴える。
「人間の思いや執着を無視してまですべきなのか?モモは彼らの痛みも悲しみも涙も引き受けていた」
だがカーネルは答える。
「それはエゴ。死神が人間の感情を背負おうなんて、自惚れも甚だしい」

病院で死にそうな女の子と必死に呼びかける両親を見たダニエル。無情にも魂を運んだ死神。なんとその死神はモモだった。

【感想】◇
天上界の掟を破ったモモは消され、代わって大量に仕事をする新人の死神の噂が流れる。ダニエルは普通の死神に仕えるが、モモのやり方が正しい&死神と仕え魔の役割に疑問を持ち始める。そして再会したモモが噂の新人で、おせっかいや優しさなど持ち合わせていなかった。

展開に捻りはなく、新人がモモというオチも読めてしまうものだったが、総集編のように今までの登場人物を振り返り、モモと普通の死神の差を際立たせる意図は明確だった。

淡々とこなす普通の死神は様々な人間の魂を運ぶので、いちいち感情移入しないために感情も言葉も殺して仕事をするのだろうか。それに仕える仕え魔の本来の役割はいまいち重要性が感じられないが(ここまできて根本の設定が分かってない執筆者w)。死神への情報提供や案内役か。監視までしてるかは不明。

生まれ変わったモモは仕え魔を使っていない。過去の回で「死の匂い」を嗅ぎ付けたシーンがあったので、その能力が高ければ仕え魔いらずで仕事ができるという事か。対象者の選定作業をすっ飛ばしているようなので、逆の意味でディス(変わり者)では。

モモが関わった人々と遺族は、その後それぞれ乗り越えて前向きに暮らしていた。それを見たダニエルはますます「普通」に疑問を持つ。やはり#9がポイントで、力の限界を悟ったモモの暴走と諦めへと繋がり、極刑を素直に受け入れたモモの心情もこの#9のショックが大きい。という事で#9の評価は高まるばかり。

次回予告映像では、髪が白から茶色になり冷酷な死神:浜田翔子が良い感じになってた。やはり白髪が似合わない・セリフ要らない、という評価で終わるのだろうか。ハマショーの真価(進化)が問われる最終回になりそうだ。
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2007年03月20日(Tue)▲ページの先頭へ
デビルシャドー #10

【あらすじ】「神に見放された堕天使。人間界での名は榊」
榊拓海(津田寛治)は神崎澪(阿井莉沙)の切人俊司(笠原紳司)への憎悪を確かめると同時に、澪の母:那美(大西結花)の死の真相を語る。
「那美は世界平和のために戦ったんじゃない。君は悪魔である私の子。那美はその宿命を断ち切るために私と戦った」
榊は澪に炎を見せ、術を掛ける。澪の瞳は赤く染まる。

森岡涼子(川合千春)は迷い続ける切人俊司(笠原紳司)を説得し、澪を救出するため榊のアジトに向かう。しかし切人は思念で重岡辰巳(大和琢也)に行動を教え、涼子と切人は出迎えを受ける。澪が既に悪魔に目覚めた事を知った切人は降伏の構え。まだ諦めていない涼子に氷室沙耶(吉沢キヨ)が斬り掛かる。

腕を負傷した涼子に重岡が銃でトドメを刺そうとするが、切人の思念に操られ重岡は自殺させられる。さらに那美の力によって澪・涼子・切人はアジトから外へ瞬間移動。澪に掛けられた術も解けたものの、澪は自分の存在理由を見出せないでいた。
「私は何のために生まれてきたの?善のため?悪のため?自分が自分じゃない。誰かに突き動かされている。本当の私は何なのよ!」

切人が答える。
「どんな心を持とうが、どんな心に支配されようが、全ては自分自身」
澪の心が一つになった所で森の精霊(高橋幼奈・声:浅木勝)も現れ、魔神剣の下への案内を申し出る。一方、榊はまだ諦めていなかった。
「一度目覚めた悪魔の血は、そう簡単には戻らない」

【感想】○
澪に悪魔の子である事が明かされ、切人への憎悪から澪は悪魔に目覚める。天使:切人は観念したかに思わせておいて逆転を狙う。見事に澪を救出し説得したかに思えたが、澪自身は完全に決意が固まったわけではなかった…という話。

悪魔と神の両方からの引き入れ工作が激しくなり、澪の身柄確保を廻っての攻防が繰り広げられるが、根本である澪の心はどちらの陣営に付くとも決まっていない。澪の心と身体の分裂と、両陣営の内実を知っての進むべき道、そのための心構えなどがまだまだである事がセリフと阿井莉沙の表情で説明される。

榊は澪に出生の秘密を教え、那美が父の存在を否定するために戦ったと語る(これは榊の解釈であって那美の本心とは言い切れない)。さらに澪の憎悪を利用して榊は悪魔の血を目覚めさせる。一応、榊は澪の心を汲んだ上で術を掛けたが、澪の悪魔的な心を最大限に利用しただけであって、完全なる悪魔にはできなかった。

切人はお得意の「敵を欺くためには味方から」戦法を発揮。澪を助けると見せて涼子に内緒で榊に降伏するふりをする。だが榊の言う「切人のスキルの分裂」はその事を指すものではなかった。天使の使命の放棄=悪魔への降伏ではなく、天使自らが戦う事を意味していた。

那美によって強制的に救出された澪だったが、その事がまた彼女の心を混乱させる。悪魔の実態を知り、今また目の前で天使が重岡を殺す所を見た澪。裏切り者の重岡は簡単に殺されたのに、同じく裏切りをした自分は、天使の子でもあるという理由で救出された。

天使も悪魔も、自分の血と力を欲している。そのために何人も人が死んだ。いったい自分はどうすべきなのか。どちらのために戦うでもなく、普通の人間・何もない生活に戻りたい。そんな澪に切人は、全て受け入れろと説得。涼子は人間のために戦ってと言う。森の精霊も精霊達の魂や世界のためにと言う。

この辺りのセリフは非常に青臭いものがあったが、それ自体で評価を下げる必要はなく、若干の空々しさと、言葉と心の理解の違いを際立たせるためだったと解釈する。その解釈を成立させる阿井莉沙の演技が上手かった。皆と魔神剣の下に向かう身体と、はっきり納得したわけではないやや虚ろな表情。それに被さる榊の執念。津田寛治も上手い。

神と悪魔の戦いを描きつつ、実は思春期でよく悩む両親との関係、世間と自分の折り合いのつけ方などが根本のテーマだという気がしてきたが、これは最終回を迎えてから書くべき事のような気もするのでその時に。
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2007年03月17日(Sat)▲ページの先頭へ
しにがみのバラッド。#10

【あらすじ】樋浦トイロ(南明奈)は春山高校でいつも早弁をしている華山マコト(中村優一)に自分の弁当をあげて仲良くなる。トイロは父(三浦影虎)と二人暮らしで、マコトは両親を亡くして兄と暮らしていた。放課後、マコトは食堂で調理し、トイロは食材を買って帰宅。だが家では父が酒を飲んでいた。

バイトの終わったマコトは公園で時間を潰しているトイロを見掛ける。雨が降ってきて雨宿りしている時、マコトはトイロにアザがあるのを見つける。やがてトイロはマコトのために弁当を作ってくるようになる。マコトは死神モモ(浜田翔子)とダニエル(吉田里琴)を目撃した話をする。その様子を見ていたモモは、対象者でもないマコトに見える事に意味があるのではと考える。
「見てみたいの。人間に運命を変えられるか」

実はマコトの両親は事故死ではなく、暴力をふるう父を母が刺し殺し、その後飛び降り自殺していたのだった。モモはトイロが父から暴力をふるわれる映像をマコトの脳内に送る。バイトを抜け出したマコトはトイロの家に走り、トイロに灯油を掛け火を付けようとしていた父を止めて助ける。

死神として天上界の掟を破ったモモ。心配するダニエルにモモは微笑む。その直後、モモは天上界の使者によって拘束される。泣き叫ぶダニエルにモモは微笑み続けるだけだった。

【感想】○
父から虐待されていたトイロの運命を、同じく過去に父から虐待されていたマコトによって変えてしまったモモ。「運命だけは変えない」というダニエルとの約束も破って、ダニエルの懸念どおり逮捕されてしまう。

今回のモモの行動は前回の反省から来ている。ただ人の命を奪い、残された人の人生まで台無しにする死神の在り方に疑問を持ったため。対象者でないマコトに自分達が見えた事に意義があるのではと(都合良く)考え、トイロの運命を変えさせた。それは死神が一番やってはいけない任務の放棄でもあった。

マコトとトイロの境遇は料理で表されているのかもしれない。マコトは客のために食堂で調理のバイトをしている。トイロは父のために食事や弁当を作っている。しかし、トイロは父から虐待を受ける。対してマコトは店長や客から感謝される。

マコトは多くの他人のために調理し、トイロは父と自分のために料理する。マコトの方が世界が広い。トイロはマコトに弁当をあげ、マコトにも作る事で世界を広げようとした。マコトは父とは違ってトイロに感謝の意を表する。実はトイロはマコトの食事を支援していたのではなく、マコトによって助けられていた。

そんなささやかな幸せをも奪ってしまう死神の仕事。「不幸を運んでくるもの」とまでモモは思い詰める。このまま運命に従ってトイロを死なせると、前回のようにマコトまで生きる希望を失ってしまうのではないか。トイロの死後、その死因が虐待の果てのものだったと分かるのは必定。同じく虐待を受けていたマコトはトイロの死に耐えられないのではないか。

死神は、ただその人の死の運命を遂行するだけのはず。なのに現実は残された人の運命まで不幸に変えてしまう。ならばいっそのこと、死の運命を変えた方が良いのではないか。全てを運命だと片付けられなくなったモモの決断は、死神の存在を否定する重大な掟破りだった。

今回の主演:南明奈は「めざましテレビ」に出てくる(8時直前の占いコーナーとか)人との認識しかなかったが、演技の方は若干ブリッ子ぽかったものの、なかなか上手かった。今までこの番組の出演者に共通していたぎこちなさは全くなかった。中村優一の方も結構できていて、今回は安心して観ていられた。

また、吉田里琴も最後の泣き叫ぶシーンは熱演で、あとは主役?の浜田翔子だけだ(笑)。最終回までに成長を見せてくれるのかどうか。
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2007年03月14日(Wed)▲ページの先頭へ
デビルシャドー #9

【あらすじ】神崎澪(阿井莉沙)と森岡涼子(川合千春)に、切人俊司(笠原紳司)が仲間を見殺しにした事実を教えた重岡辰巳(大和琢也)と氷室沙耶(吉沢キヨ)。涼子は沙耶に斬り掛かるが体勢を崩す。そこへ澪が沙耶に短剣を突き付けるが、重岡が涼子に銃を突き付けて両者は引き分け。澪は涼子を置いて重岡達に同行する。

榊拓海(津田寛治)は18年前の神埼那美(大西結花)との対決を思い起こしていた。神崎源三(野上正義)の下した追放の方針に逆らって榊に戦いを挑んできた那美。榊に倒された那美はなぜ女神になれたのか。鬼頭真澄(渡辺健)は「神の恩寵を受けただけ」と答える。その鬼頭は切人に重要な事実を教えて返って来たところだった。

澪は榊の館に到着し、部屋に案内されるが閉じ込められ、煙を吸って眠ってしまう。夢の中で澪は榊に倒された結界師(愛染恭子)と会う。結界師は澪の邪悪な魂(切人への憎しみ)を消せと命じる。
「消し去る事が出来ぬなら、お前の心は悪魔に支配される」
目を覚ました澪の前に榊が現れる。

切人は再度、森の妖精(高橋幼奈・声:浅木勝)と話す。那美の命を受けて人間界に遣わされたが、自分の使命と那美への信頼が揺らいだ切人。妖精は涼子の居場所まで案内して消える。涼子は今までの切人への信頼と好意を口にするが、切人は自分が天使だと明かし、さらに自分の知らなかった澪の秘密を告げる。
「澪は…榊の子。澪は悪魔の子だったんだ」

【感想】◇
前回から始まった榊による心理戦は大いに効果を上げ、涼子の切人への信頼・切人の那美への信頼は揺らぐ。さらに、切人への不信を募らせた澪は榊の館へと足を運んで捕われてしまう。切人と涼子には、澪が悪魔の遺伝子を持つという驚愕の事実が残された。次回はこの事実が澪に提示されるのだろう。

冒頭の4人の対決は引き分けに終わったが、澪は涼子のスキルを試したとも解釈できる。榊の手下にも勝てない涼子と、力を上手く制御できない自分。切人も信用できないし、これでは重岡の言うように「勝ち目が無い」。味方の力を知った澪は敵の力を知るため、素直に榊に会いにいった。もちろん、澪の行動は若さゆえの無謀で危険知らずの、思慮に欠けるものだったというのは、簡単に捕われてしまう所から分かる。

榊の計画は常に用意周到で、自分が魔神剣を手にしてデビルシャドーを呼び起こせればそれでよし、駄目だった場合の保険として澪を仲間にしておこうというもの。でも、澪の仲間である切人への信頼を失わせ、涼子に失望させる事には成功したが、澪を仲間にするのは上手くいくかどうか。悪魔の自分が父であるというだけで澪が悪魔側に付くかが鍵。

前回、夢の中での源三の言葉が榊によって曲げられたものでは?との推測をしたが、今回の夢に出てきた結界師の言葉は榊の干渉を受けていないように思われる。結界師は、澪の心一つでどちらの陣営にもなれるという事を伝えたかったのだろうか。

切人は澪の正体を知り、那美への忠誠が失せる。悪魔の子を覚醒させ魔神剣を手にする事は善なのか?と。だが神への忠誠は持っている。だからこそ那美と神の関係にまで考えを及ぼす。それはおのずと答えの出ない神学論争の域に達し、切人は悩みを深める。那美と神は別物(別の意思を持つ)だとしたら神の御使いである自分はどうすれば良いのか。森の妖精は使命を守るだけと言ったが、切人はその使命からして揺らいでいるので行動できない。

涼子の切人への好意は意外だったが、今の所は彼女が一番安全圏というか、複雑な問題に直面していない感じはする。真っ直ぐな性格がそうさせているのかも。悩んで行動できなくなっている切人(実はこれこそ榊の当面の作戦)を動かすのは涼子の単純さかもしれない。
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2007年03月11日(Sun)▲ページの先頭へ
その時歴史が動いた:イタイイタイ病裁判

【あらすじ】富山県婦中町では大正時代から中高年女性を中心に骨が脆くなる奇病が多発していた。医師:荻野昇は神通川上流の三井金属神岡鉱業所の廃水が原因と推測。患者の骨にはカドミウムが含まれており、それは亜鉛加工で出るものだった。昭和36(1961)年11月、荻野はイタイイタイ病の研究発表を行うが他の学者から無視された。

この発表を知った農家:小松義久は「米が売れなくなる」「嫁が来なくなる」との強い地元の声を説得し、対策協議会を結成。昭和42(1967)年に鉱業所へ直接交渉に出向くが、「公の機関が三井に責任があると言うなら補償する」と言われた。この件を知った弁護士:島村樹を始めとする20人の若手弁護士が無報酬で協力を申し出る。

昭和43(1968)年1月6日、イタイイタイ病訴訟弁護団が結成され、裁判を起こす事になったが、民法709条での過失の立証には膨大なデータと予算が必要だった。これを鉱業法109条を用いて因果関係のみに絞って提訴。三井側は全面否認し現場検証が行われた。やがて裁判費用は底を尽いたが、訴訟救助で支払いを猶予してもらい、町村議会も訴訟支援の助成金を出した。

昭和45(1970)年に入り、最高裁の全国民事裁判会同で、公害裁判では加害企業に立証責任を負わせるべきとの見解が示され、三井側が裁判引き伸ばしのため求めていた科学的第三者鑑定は却下。昭和46(1971)年6月30日、原告勝訴の判決。因果関係の立証には必ずしも科学的証明は必要無いとする画期的な判決だった。この後、新潟水俣病・四日市ぜんそく・熊本水俣病などでも勝訴が続いた。

【感想】○
風土病とされてきたイタイイタイ病の裁判闘争に立ち上がった医師・農民・弁護士。大企業相手に勝訴は無理とされてきた公害裁判で、住民が勝利を掴むまでを描く。小さな活動から次第に支援の輪が広がり、世論を動かし、裁判所の姿勢を変えさせ、公害裁判の在り方を決定付けた。

題材が題材なだけに、これを見て低評価など下せない。語弊があるが「ズルい」内容ではある。ただ、公正を旨とするNHKらしく、住民が絶対善で企業が絶対悪という勧善懲悪はなるべく控えていた。

「三井金属神岡鉱業所」という名前は字幕で出すだけで読み上げない。三井側の主張はこれまでの公害裁判(足尾鉱毒など)での企業のやり口と同じだった点を強調。それは裁判所に立証責任に関しての指針が確立していなかったからだ、とする解説者(原告の弁護副団長)のコメントも差し込んだ。

住民側にも、米や嫁の心配の声や、原告団に対する冷たい視線、敗北したら土地を出ていかなくてはいけないとまで思わせた地域社会を描く。そして裁判後は、三井側が廃水対策を住民と共に行っている事、土地の復元事業にも参加している事を伝えた。

これらを企業側への配慮のバランスで切れ味が良くない、と見るかどうかは視聴者次第だが、こういったバランス感覚は、センセーショナルに善悪を決めてかかる民放ではなかなか発揮できないのでは。

逆に、こうして住民・企業・裁判所のそれぞれの問題点を指摘してくれた方が、事の本質が浮き上がったりする。今回はイタイイタイ病に苦しむ患者の声であり、将来の子孫のためという願いが原点だと理解できた。

住民の実利から来る泣き寝入りの過去、企業の過去の勝訴と利益優先行動、裁判所の公正さの考えと私人VS企業の判例の少なさ。これらのしがらみを解き放ったのは、住民の悲痛な叫びであり、弁護士の若さゆえの純粋な行動だった。

誰もが何となく、公害の原因は直感で分かる。だから世論も被害者に味方する。それが町村議会を動かし、裁判所の指針も変更させ、無限の科学論争に持ち込ませる事を阻止した。番組後半の動きは原告側が問題点を次々にクリアしていったように見えたが、そこまでの道のりは遠い。

荻野昇の発表から協議会結成まで5年以上かかっている。この間に一軒一軒説得に回った小松義久の苦労は並大抵のものではない。しかも5年かかっても30人しか賛同者を得られていないのだ。どれだけの人が泣き寝入りして(させられて)死んでいったことか。
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イタイイタイ病の記憶
イタイイタイ病―発生源対策22年のあゆみ
三井資本とイタイイタイ病
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2007年03月08日(Thu)▲ページの先頭へ
しにがみのバラッド。#9

【あらすじ】町野源(眞島秀和)は恵子(小野麻亜矢)と離婚し、娘:彩(高坂真琴)を男手で育て始める。同僚:恩田(長澤奈央)は町野が生き生きしていると評する。町野は動物園に彩を連れていくが、彩はインフルエンザに倒れ、熱も下がらず死んでしまう。葬儀の後、母親の恵子がやってきてこう言う。
「これであんたも第二の人生を送れるわけだし、良かったのかもよ」

町野は恵子を追い出す。何もする気の無くなった町野の前に死神モモ(浜田翔子)とダニエル(吉田里琴)が現れる。
「あなたの様子を見てきて欲しいって言われたの」
なぜ彩が死ななくてはいけなかったのか尋ねる町野にモモは、運命だからと答える。
「何が運命だ!この人殺し」

町野は会社を辞めるが、心配した恩田が町野の家を訪ねてくる。自分も幼い頃に父を亡くし、母と共に落ち込んだが、前向きに生きる事が供養になると思っていると話す恩田。励まされた町野は再就職面接を受け合格。その帰りに動物園に寄ってみる。

だが、彩が好きだったキリンを見て町野は泣き崩れる。現れたモモとダニエルに町野は泣き叫ぶ。
「何でオレ一人残したのか。頭では分かっていても、どうしても理解できないんだ」
「オレはお前達を許す事は出来ない!」

【感想】○
いやー、やったねぇ。やりきったね。娘の死で打ちひしがれた父親が、立ち直るかに思わせておいてやっぱり受け入れられない。問題が何も解決しない、ドラマとしては逆のオチとなる展開にしての終幕。遺族の悲しみをストレートに爆発させ、死神に現実を突きつけた。

普通の一話完結ドラマだったら、恩田の励ましで少しずつでも立ち直る所でエンド。でもこのドラマは微妙に連関しているため、後々のシリーズ展開のために悲しみ続ける人のエピソードを差し込んだ。このドラマ形式ならではの展開とエピソードになっていた。

第二の人生のため、子供が邪魔だと思っている恵子に対して、源は彩と一緒が第二の人生だと思っていた。彩の死を恵子は喜び源は落ち込む。彩が自分の中で大事であればあるほど、それを失う事に耐えられない。

彩の遺品整理はさらに失う事だからそれもできない。対して会社の私物整理をして出て行く源。源は自分を失ったかのような行動をとる。自分の中で彩の重要性がその死によって増し、自分の生計よりも大事になってしまっている。

そんな源に救いの手を差し伸べる恩田。自分の境遇と重ね合わせて源を励ます。だが恩田の立場はむしろ源とは逆だった。父が亡くなり母と二人で生きてきた恩田。源は母:恵子が出ていき、彩と二人で生きていこうとしたのにそれが出来ないのだから。

恩田がくれたクッキーも食事も実は母が作ったものだという。恩田には母が居る。しかし源は一人残された。彩と二人で作ったハンバーグの思い出。恩田の施しは源にとっては、辛さを増すだけのものだった。

それらが噴き出すのが動物園。キリンが好きでその絵を描いていた彩。そのキリンを見る前に彩は倒れた。そして今、自分はキリンを見ている。彩なら楽しめたであろうキリンを見ても、自分は何も楽しくない。キリンを見るべきなのは彩なのに、彩はもうこの世にはいない。ここにいるべきなのは彩であって自分ではない。

「死ななきゃいけない人間がいくらでもいる」
それは自分。彩を助ける事も出来なかった自分。運命で片付ける事は責任放棄ではないのか。娘を置いて出ていった恵子と変わらない。だから源は悲しみ続ける。

死神モモは死を運ぶのを仕事とし、運命だと片付けてきた。それを少しでも緩和するため普通の死神とは違う行動もしてきたが、そんな優しさで死を打ち消す事など出来なかったのだ。
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2007年03月06日(Tue)▲ページの先頭へ
デビルシャドー #8

【あらすじ】「俺に魔神剣の情報を教えたのは切人俊司(笠原紳司)」
重岡辰巳(大和琢也)は榊拓海(津田寛治)からの拷問でそう答えた。榊は新たな手を考え、鬼頭真澄(渡辺健)・氷室沙耶(吉沢キヨ)と正気を取り戻した重岡を樹海へ向かわせる。
「もし全てが真実なら、その全貌を見せてくれるだろう」

樹海では森岡涼子(川合千春)が悪霊と戦っていた。神崎澪(阿井莉沙)も見事な剣さばきを見せ、次々と悪霊を倒す。涼子は澪のスキルが上がっている事を確信する。だが澪は執拗に悪霊を突き刺し、力尽きてその場に倒れる。一方、切人は澪と涼子とはぐれ、悪霊に取り囲まれていたが、森の精霊(高橋幼奈・声:浅木勝)に助けられた。

魔神剣を守る森の精霊にその必要を説く切人だったが、森の精霊は
「人魔同根。榊が手に入れるのも神の思し召しかも」
と言い、神の使い:切人には迷いという邪念があると指摘する。選ばれし者が善の者とは限らないと思い始める切人。森の精霊は
「神の恩寵と人類の自由意思。それらを正しく統一する者である事を願うばかりだ」
と言って消える。

切人の前に鬼頭が現れる。自分の娘と戦う鬼頭を責める切人だったが、鬼頭は
「善と悪は表裏一体。神のために働くお前も悪魔のような事をしている」
と答える。休んでいた澪と涼子の前には沙耶と重岡が現れる。沙耶は切人が裏切り者だと告げる。重岡は切人が水穂(藤岡範子)・木田・総長(野上正義)を見殺しにしたと言う。切人に疑念を抱いていた澪はその言説を信じ始める。
「やっぱりあいつが。あいつが…」

【感想】◇
源三からの忠告を受け、切人への疑念が大きくなる澪。榊はその亀裂を利用して心理戦に打って出る。神の使いである切人の邪念(迷い)を膨らませ、女神:那美(大西結花)の意図を頓挫させる。また、選ばれし者と思しき澪を自陣に引き入れるため、切人の目的をこれまでの行動から決定付ける。デビルシャドーを我が物とするための榊の新たな作戦が始まった。

重岡に情報を教えたのが切人だとの推理は#3#4からしており、それは的中したが、重岡がスパイだと言えるのかという点では、重岡の意思が完全に悪魔側にあったため、当たりとは言えないかも。切人目線で見ると、魔神剣の情報を得るため重岡を送り込んだので「スパイ」と言えるが、重岡自身は切人に魔神剣情報を伝える意思が無い。

魔神剣情報は源三が死んだ結果として思念で伝わり、切人の目的は果たされ重岡の榊への忠誠も示された。こういう人物はタレコミ屋と言うのだろうか?それも違う気もするが。適切な用語が思い付かない。ともかく、重岡の役目が切人にも榊にも薄れた以上、彼はいつ死んでもおかしくない。

榊は「澪の心に邪気を植え付けた」と語る。これは切人への疑念を指すが、いつどうやって植え付けたのか。もしかして#6源三の最後の言葉「神の使い:切人には注意しろ」は、源三の澪への思念ではなく、榊によって変えられた思念なのか。ここだとするなら榊の手の打ち方は恐ろしく早い。

今回は前半が殺陣で後半が心理戦という構成。澪と切人の亀裂から生まれたかのような悪霊と戦う澪。力を付けたがその力を上手くコントロールできない様子を、阿井莉沙が気迫のアクションと表情で演じきった。それが迫力に欠けたのはカメラワークの下手さが主因か。引きとアップのカット割がまずい。あと、悪霊の動きが鈍いため、殺陣を一生懸命やればやるほど動いてる方が滑稽に見えてしまう難点も。

森の精霊と鬼頭から同じような事を言われる切人。魔神剣情報を得るために薔薇十字団を犠牲にした手段。当面の目的(選ばれし者の覚醒と魔神剣確保)が榊と同じであるという弱点。真の目的は悪魔:榊を倒す事にあるが、自分は天使であり直接戦えず、その身分も明かせない。

それらの弱みを榊に完全に握られてしまった。そして榊はそれを最大限に利用して、切人を断罪し澪を仲間にしようと画策する。魔神剣の行方は天使も悪魔も追っているので、見つかるのは時間の問題とも言える。ならば争点は、選ばれし者として可能性の高い澪をどちらに付けるかではないか。切人が使命に迷ってる間に榊の先手が効いている。

人間の心が善と悪から成る事、澪が天使と悪魔の子である事、天使の迷いと悪魔の囁き。魔神剣が焦点だったシリーズ前半から、主人公:澪への焦点移行が次第に進んでいる。その二つが同時に解決するのがクライマックスというシリーズ構成には問題が見当たらない。
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2007年03月04日(Sun)▲ページの先頭へ
その時歴史が動いた:黒田如水

【あらすじ】天正3(1575)年、30歳の黒田官兵衛は播磨領主:小寺氏に仕えていた。毛利と織田の勢力に挟まれる中、「信長が天下を獲る」と確信し小寺氏を織田方につかせ、秀吉と出会ってからは毛利方諸将の切り崩しに奔走。しかし天正6(1578)年に小寺氏が毛利に寝返り、官兵衛は有岡城に幽閉される。織田軍に解放されるまでの1年間、毛利方につく事を拒み続けた。

秀吉直属の家臣となった官兵衛は中国地方の討伐に参加。だが天正10(1582)年6月3日、本能寺の変の知らせを受ける。動転する秀吉に官兵衛は
「御運が廻って参りましたな。天下をお取りなさいませ」
と進言。中国大返しを実現し山崎の戦いで明智光秀を討ち破った。天正14(1586)年の九州討伐では戦場を駆け回る息子:長政を諌めつつ、自身は諜略によって平定のお膳立てをした。

だが、あまりの才気に秀吉は次第に官兵衛を遠ざけ、豊前18万石しか与えなかった。秀吉から疑われている事を知った官兵衛は「心清きこと水の如し」如水と名を改め隠居する。そして秀吉の死後、徳川家康と石田三成の対立が深刻になると、如水は情報収集を開始。天下を狙った構想を練り出す。
「こういう時こそ絶好の機会が来る」

黒田如水の三段作戦は、九州の諸大名が出兵した隙に九州を平定する第一段階、兵力を増やしつつ中国地方を攻め上る第二段階、戦いで疲弊した家康・三成の勝者(如水は家康勝利と予想)と最終決戦で勝利する第三段階から成っていた。この作戦の条件は、家康と三成の戦いが100日以上の長期戦となる事だった。
「花々しく一合戦つかまつる」

まず如水は天下獲りを悟られぬため、長政軍5400を家康の東軍に参加させ、残った兵力の増強のため、蓄財を叩いて農民を召抱え、9000の軍を結成。
「我と共に天下を頂こう」

慶長5(1600)9月9日、豊後に攻め入り、大友軍を降伏・吸収させた。立石・安岐・富来へと進撃する如水軍に関ヶ原の戦況報告が入る。なんと決戦は半日で家康が勝ち、その勝因となった小早川秀秋の寝返り工作を息子:長政が行ったというのだ。
「長政の大たわけめ。急いで家康を勝たせて何になる」

止む無く如水は、家康の味方のふりをして小倉・久留米・柳川・水俣を攻め続け、10月末には島津以外の九州を平定、如水軍は3万に膨れ上がっていた。だが11月12日に家康から攻撃停止命令が届く。家康は如水の動きに只ならぬものを感じ取ったのだ。
「如水の働きは底心が知れぬ」

如水は遂に時間切れを悟り、兵を引き揚げさせる。
「上方治まりたる上は是非もなし」
ここに黒田如水の天下獲りは未完に終わった。その4年後の慶長9(1604)年、如水は59歳で病死する。

【感想】◎
観ていて単純に面白かった。こんな面白さを感じたのはこの番組では久しぶり。類まれなる智略を持った軍師:黒田官兵衛が、その才気ゆえに疎まれ不遇をかこっていたが、その智略を自分のために使った一世一代の大勝負に出る。だがその野望を意図せずに打ち砕いたのは、自分の才能を受け継いだ息子:長政だったという運命の皮肉。

中途半端な知識の執筆者は、黒田如水が関ヶ原の際に天下獲りに動いた事は知っていたが、九州で戦う事がどうして天下に繋がるのかよく分かっておらず、単に如水は混乱に乗じて隣国をかすめ取って勢力拡大を目論んだ…くらいにしか思ってなかったが、実は壮大な作戦構想があったと知った。

たった18万石の領地で隠居生活を送っていた55歳が、精鋭兵力を息子:長政に出して、農民兵で隣国を攻め始める。それが天下獲りに繋がるなんて信じがたい。そりゃ長政も父の真意に気付かないよ。でも如水は戦国を智略で生き抜いてきて、この混乱ならチャンスがあると踏んだ。そして実際、九州のほとんどを手中にしてしまうのだから恐ろしい。

平時での諜略と混乱での迅速な行動が如水の基本原理で、中国・九州討伐は諜略、中国大返しと天下獲りは迅速な行動。戦いも事前の諜略で勝利が決定づけられてから戦っているので、やはり根本は智略の人といえそう。勇敢に戦うだけの長政を侮っていた。

中国大返しの進言から秀吉は官兵衛を恐れるようになったという。それで18万石しか与えなかったが、そんな境遇にあっても官兵衛の才気は人知を超越しており、三段作戦を練り上げてしまう。中央から遠く離れ、兵力もロクに無いのに瞬く間に九州平定目前までやってのけた行動力。確かに中央に置いていたら脅威だろう。

如水の三段作戦は条件付きの他力本願的な要素もあったが、家康勝利の読みまでは当たっていた。だから関ヶ原以前に西軍領地に攻め入っていたのだし。その勝利の仕方を読み誤った所が致命的で、しかも息子の働きで計算が狂ったというのが哀しすぎる。でも関ヶ原前日まで西軍は大垣での持久戦をやるつもりだったから、そうした情報を掴んでいた如水が読み誤るのも仕方ない。

忘れてはいけないのは石田三成の存在。官兵衛に代わって秀吉お気に入りとなった軍師だが、長政は父:官兵衛失脚が三成のせいだと思っていた。だから三成襲撃もしたし、喜んで東軍に加わって小早川工作も行い、関ヶ原では三成軍を目掛けて怒涛の突進をしている。長政は父に認めてもらいたいがために、父の仇と思しき三成を憎んでいた。これが行動の源泉。

如水は勝利する家康に長政をやった方が生き残ると踏んで送り出した。あくまでも息子にはさしたる働きを期待していなかった。だが長政は父のためを思って打倒三成に死力を尽くした。親子の互いを思う心が招いたちぐはぐな大誤算が浮かび上がってくる。そう推理してしまうのだが。

関ヶ原後も如水は進撃を続け一気に九州を獲得する。これは如水軍の強さというより、事前の準備があったからではないかとも思う。解説者の言う何らかの同盟・連絡網があったからでは。秀吉時代に九州諸大名を諜略した事、キリシタンだった如水への共感など。これらがない限り、戦ってから如水軍に加わって兵力が膨れ上がるという事象を説明しにくい。

恐らく九州だけでなく、如水は中国にもこのような関係を築いていたと思われる。中国諜略も官兵衛が行っていたし、毛利の関ヶ原での不可解な行動ももしや…と。また、三成も捕らえられた際に「再起の機会を窺っていた」と語ったが、これも家康が一度の勝利で天下を獲るとは限らないと思っていたからだろう。つまり家康に立ち向かう勢力はまだ現れると思っていた。それが如水でも伊達正宗でも良かった。

全ては関ヶ原が半日で決してしまったから、これら各勢力は手出しが出来なかったわけだが、如水もやがてこの現実に気付く。九州を迅速に制圧できたのは、自分の力というよりも、関ヶ原で家康が圧勝したからではないか。表向きは東軍の自分に味方が増えるのは勝ち馬に乗っているだけで、本当に家康と決戦をする事になったら如水軍など消えて無くなるのではと。

自分の好調な進撃は、所詮は家康がもたらしたものであり、その勝因は息子:長政によるものだった。如水の天下獲りへの智略は家康の掌中での動きに過ぎなかった。ここでやっと悟った如水は何事も無かったかのように兵を引き揚げたのだ。

晩年のエピソードは如水の生き方と長政への思いが溢れている。家臣を罵るのは、自分が嫌われ者になって長政の世にしやすくするためだと長政に囁く。床に臥せる如水が最後に出来た智略は、息子への愛が込められていた。長政は父からやっと認められたのである。
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2007年03月01日(Thu)▲ページの先頭へ
しにがみのバラッド。#7 #8

【あらすじ】市原カンタロウ(佐藤健)は祖父:康太郎(外波山文明)とのTVゲームでいつも負けていた。そんな祖父が夏の補習合宿前に死去。遺品を整理していると「ロープレの主人公になって宝を見つけろ」との手紙と地図が出てくる。カンタロウは合宿を休んで宝捜しの旅に出る。

だが駅には幼なじみで優等生の藤浦トマト(秋山奈々)がいて一緒に旅する事になる。そんな様子を先生二人(高橋のぶ・渡辺江里子)が見つけ、大胡駅を降りた所で連れ戻そうと追い掛けて来る。捕まりそうになったがモモ(浜田翔子)が邪魔して二人は逃げ切る。日も暮れて旅館に泊る。トマトは二人が夫婦だと言って嬉しそうにしている。

その旅館には偶然にも先生達も泊っていた。翌朝、二人は先生達に見つかり再び逃げる。道から転落した二人は洞窟を進む。地図を拾った先生達も追い掛ける。一旦は捕まるがダニエル(吉田里琴)が邪魔して逃げ切る。宝の在処に辿り着いた二人。そこは幼い頃の祖父(石井天地)がエリザベス(シャーロック・レイラ)と遊んだ場所だった。

祖父は外国に帰るエリザベスと別れ二度と会う事はなかった。トマトも高校は遠くに通うらしい。トマトはこの旅行を最後の思い出にしたかったのだ。カンタロウは宝箱に入っていたビー玉をトマトに渡す。
「会いに行くよ。お前がどこに行っても」

【感想】◇
ゲームに負けてばかりのカンタロウが、じいちゃんとの最後のゲームを通じて、大切な宝物を見つける話。仮面ライダー電王で主役を務める佐藤健と、女優路線を歩む若きアイドル秋山奈々という、このドラマにしては豪華なキャスティングのためか2回に分けていた。でも内容的には1回に凝縮できたような気もする。

TVゲームで逃げてばかりだからいつも祖父に負けてるカンタロウ。学校でも成績は落ちこぼれ。ゲーム中の会話から、祖父は人生とゲームの似てる点と違う点を教えようとしていたのだろう。カンタロウに旅のゲームをさせ、自分が掴めなかったもう一つの人生を教え、カンタロウに可能性を提示しようと企画した。

カンタロウは祖父の遺志を充分に理解し、最後のトマトへの告白となる。一人では辿り着けなかったであろうゴールへの道をトマトに助けられ、成長していき、トマトを気遣い・助け、トマトと一緒にゴールした。ロールプレイングゲームの主人公のように。

ゲームの敵役のようでもあった先生二人だが、こちらもカンタロウとトマトを追い掛ける内に意気投合し、距離が縮まっていく。

ビー玉と太陽光線の意味する所の解釈があまりできないが、宝のイメージとは遠いビー玉も、思い出が詰まっていれば価値がある。そのビー玉に当たった太陽光線の美しさは物に換算できない価値がある。それらを良いものだと感じる心を持つ事や、そう思う人が自分以外にもいる事が重要…とかまぁそんな感じかな。

佐藤健と秋山奈々は俳優路線なだけに、先生二人よりも上手く演技が出来てた。日暮れ時にフラフラ歩くシーンはかなりの長尺で、アドリブ交えてたようにも見えたし。浜田翔子の演技は相変わらずだが、ゲームをしてた時の顔は初めて自然な感じの笑顔になってた。あれは本当にゲームをやってたのだろうか。
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