テレビ批評的視聴記 - 2006/12

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2006年12月31日(Sun)▲ページの先頭へ
ガールズボックス #1 #2

【あらすじ】#1「箱入り娘のクリスマス」中江有里脚本。
クリスマスが誕生日の森田未来(星井七瀬)は家出をする。そんな未来に付きまとって来る女の子:レン(伊藤沙莉)。最初はレンを邪険に扱っていた未来だったが、レンと色々な所へ向かう内、未来はレンに家出した理由を話し始める。

母は自分を産んですぐに死んでしまった。誕生日・クリスマスは母の命日。でも父(山崎一)は自分にケーキを用意していた。だから家出した。レンは未来に母の墓参りを提案。

未来は母との思い出がないから墓前で言葉もない。そこへ父がやってきて母からの手紙を渡す。「あなたが元気でいてくれれば悔いはありません」
いつのまにかレンは消えていた。未来の母の名は廉子。

#2「いもうと」渡辺千穂脚本。
明日香(長谷部優)は姉:今日子(西山繭子)と充(唐橋充)の結婚を期に家を出る事にした。家は今日子と充が住む予定。明日香は充が好きだったが、今日子に充を取られたと思っていた。

充は、今日子がマリッジブルーだと話す。明日香は充を家に泊め、駆け落ちを期待する。だが充は今日子への想いを語り出すのだった。

翌朝、充は式場へ。今日子は明日香のために料理ノートを持ってきた。今日子と充の新しい表札を掛ける明日香。

【感想】△
中江有里脚本というだけで視聴した番組。#1だけ担当だと知らず#2も録画したのでオマケで書いておく。#1はレンという母の霊を通して未来への母の想いが綴られる。特に捻りもなくオーソドックスな展開。

一応、外出にも許可が必要だった箱入り娘が家出するという冒頭だが、主演の星井七瀬の演技には家出という重大決意とか悲壮感とかは全くない。顔付きがほんわかしてるからか、このドラマ全体が優しい基調だからか、惹きつけられるものもなく終わってしまう。

レン役の伊藤沙莉は「女王の教室」にも出てた子。声の低さが特徴。ちょっと悪戯好きな演技は上手い。

なぜ小学生の女の子が母の霊なのかが不明。未来か廉子にとってこの年頃に何かの転機があったとかなら分かるが。単に女の子なら未来が本心を話しやすいという理由だけなのか。

結局、レンが母だった事は父の持ってきた手紙で分かり、レンが成仏?するオチなのだが、これだと未来の前に現れたレンの果たした役割が薄まる。レンが母の想いを伝えるか、父が手紙で伝えるかは、父との和解も入れないといけない点を考えると、どっちもどっちか。

#2の方も、姉妹での未熟な三角関係というベタな展開。妹の方がずっと片想いでしたというオチ。マリッジブルーな今日子も、駆け落ちを期待する明日香も、今日子との不仲を口にする充も、結局は変わる事への不安を抱えているだけだった。

本心では、今日子は明日香の身を按じており、明日香も今日子の幸せを願っており、充は今日子を愛していたのだった。だから収まる所に収まって終わり。山場も何もない。

オープニングはこれからの話にも出てくる主演アイドルらが、勢揃いで歌っている。ちょっと引いた(笑)。丹羽多聞アンドリウがプロデュースの番組なので、黒川芽以・堀北真希らを売り出した「ケータイ刑事 銭形シリーズ」商法。とりあえずアイドル出しとけば誰かが後々売れて、自分の目利き神通力が大きくなるだろ的な、いかにもテレビプロデューサーらしい安直さが…。というか、どうも無理して若者受けするよう合わせてる感じがする。
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2006年12月30日(Sat)▲ページの先頭へ
その時歴史が動いた:知的障害児教育

【あらすじ】明治時代、石井筆子(旧姓:小鹿島)は鹿鳴館の華と呼ばれる良家の子女。仏留学し津田梅子と共に華族女学校教師だったが、高級官僚に嫁いで明治19年に長女出産。だが、長女は知的障害児で次女は1歳で死に、三女も発達障害だった。新聞も筆子を「憐れ」と書き立て、筆子も「わが身の終わり」と悲観した。夫が亡くなり離縁され筆子は信仰にすがる。

立教大学出身の教育者:石井亮一は米留学で障害児教育を学び、明治30(1897)年に全寮制の滝乃川学園を開設。学園を訪ねた筆子は感銘を受け、亮一と共に教育に携わる。6年後、二人は結婚。だが石井筆子は良家の子女相手の教育とは全く違う現場に無力だった。それでも、生活の中で五感を刺激して発達を促す方針は、次第に成果を見せ始める。筆子は嫁入り道具だった「天使のピアノ」を弾き続けた。

大正9(1920)年、学園に火事があり園児6名が死亡。「慙愧の想い」と筆子。しかし大正デモクラシーの社会状況が学園への寄付を呼び、学園は巣鴨から国立市谷保へ移して再建。亮一は大人になった園児の働ける農場を作る。だが昭和恐慌で学園の経営は悪化、亮一は病に倒れ昭和12(1937)年6月に70歳で死去。日中戦争開戦で学園閉鎖も検討される。

筆子もまた病魔に侵されながら学園の存続を決定。10月16日に自ら学園長に就任。あらゆるつてを頼って寄付を募り、職業訓練設備拡充や小学校への養護学級導入を訴え続けた。筆子は昭和19(1944)年1月に82歳で死去、学園は戦乱を生き延び、視察した教育者によって戦後の障害児教育が全国に広まるきっかけとなった。

【感想】◇
上流階級の華やかな教育者だった筆子(朗読:常盤貴子)が、障害児を産んだ事で転落したが、石井亮一との出会いで障害児教育に一生を捧げる。富国強兵の日本で著しく差別された障害児を守りつつ、手探りの教育をし、火災や不況、戦乱をも乗り越えていく。石井亮一と筆子の並々ならぬ使命感と精神が知的障害児教育を守り、戦後の拡大に繋がった。

この滝乃川学園が閉鎖されていたとしても、戦後にはアメリカによって知的障害児教育が日本に導入されただろう事は想像できるが、あくまでも日本人の手によって知的障害児教育が興り存続したという点が重要なのだろう。先駆者:石井筆子・亮一の遺志が脈々と受け継がれ、日本の障害者福祉が確立したと。

学園の存続決定、筆子の学園長就任が「その時」だったが、借金だらけの中、筆子も戦中に亡くなっているし、その後どうやって存続したのかという具体的な点は明確にされず、ややスッキリしないまま番組は終わった。というかその時よりも、明治・大正・昭和とずっと筆子と亮一が第一線で携わっていた事が、番組内の年代テロップでサラっと分かる所が衝撃的だったが。

筆子が華族で教育者だったという点は学園経営にも有利に働いた模様。親交のあった金のある華族からの寄付(教え子だった華族も含めて)、そして番組ではなぜか極力抑えた表現になっていたキリスト教の協力。教育者だった筆子は学園でも先生となる。石井亮一の最新の障害者教育理論を実践し、五感の刺激というヘレン・ケラーのような発達を見せる園児達。

だが、兵隊になれない人間以外の価値を認めない富国強兵の日本での、障害者への差別は今の比ではなかっただろう。そしてどんどん戦争に突き進む社会情勢と不況。亮一も筆子も病魔に倒れ、追い詰められる。

ここでの解決が精神論で説明される。学園を卒業し普通に働く教え子からの手紙、亮一の言葉「人は誰かを支えている時、実は恵みを貰っている」。筆子はもう一度気持ちを奮い立たせ、存続を決定する。…で、やっぱりどうして存続できたのかが解らない。

障害者への支援に関連し、旧政府も現政府も批判する事は容易なのだが、筆子の事例を見る限り、政府の方針よりも国民一人ひとりからの支援の方が重要なのではないか。大正デモクラシーで一般人からも寄付が来たというような事が今の日本で可能か。まぁ寄付は目に見える形として、一人ひとりのちょっとした気遣いの行動はどうかという意味で。
前回記事
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無名の人 石井筆子
天使のピアノ―石井筆子の生涯
育てにくい子にはわけがある―感覚統合が教えてくれたもの
子どもが伸びる関わりことば26―発達が気になる子へのことばかけ

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2006年12月26日(Tue)▲ページの先頭へ
N・H・Kにようこそ!(最終回)

【あらすじ】自殺しようとしている中原岬を追って石濱岬の森にやって来た佐藤達広。たった5分違いで到着した事に岬は驚く。だが自分が居ると皆が不幸になる、両親の死、二番目の父の不幸、伯母と伯父の不仲など全部自分のせいだと話す。
「私は不幸を呼ぶ最低ダメ人間です。この世に要らない人間なんです」

佐藤へのプロジェクトは、自分を必要としてくれる人間を作るためのものだった。だがそれも失敗したから死ぬと言う。佐藤は思いつく限りの言葉を発する。
「生きてれば良い事もあるさ。伯父さんや伯母さんが悲しむぞ。俺には岬ちゃんが必要なんだ。好きだ。愛してる。頼む、死なないでくれ」
「面白いこと言うね、佐藤君。でもダメだよ。死ぬんだから」
岬は柵から身を投げる。

佐藤は辛うじて岬をキャッチして抱き締める。
「岬ちゃんは悪くない。悪い奴は他に居る。俺達を苦しめる悪の組織。
奴らの名はNHK。全世界を覆い尽くす悪の秘密結社だ。
岬ちゃんの身の回りに起きる悪い出来事は全部NHKの仕業なんだ!
日本ひきこもり協会(NHK)。佐藤達広をひきこもりにした悪の秘密結社。佐藤はNHKの秘密を話したせいで精神攻撃を受け、苦しみながら叫ぶ。

「世の中で起きる悪い出来事は全てNHKの陰謀なんだ!!」

「NHKって名前が気に入らなかったら好きに呼べば良い。例えば、神様」
海より巨神現る。佐藤にトドメを刺しに来たNHK。佐藤はケータイという名の革命爆弾を手に走り出し、捨て身の特攻を試みる。
「馬鹿だな俺は。好きな女の子の命を繋ぎ止めるためにこんな方法しか思いつかないなんて。あっ“好きな女の子”…なんだ、俺やっぱ岬ちゃんの事が好きだったんだ」
柵を破って佐藤は飛び降りる。

だが、自殺防止用の金網が下に張ってあり佐藤は助かる。佐藤を追い掛けて来た岬が上から覗き込む。
佐藤「何だよ。見んなよ。なに泣いてんだよ」
岬に引き揚げられた佐藤。岬は泣きながら力無く佐藤の頭を叩く。
「死んじゃダメだよ。死なないでよ」
近くにある、岬が中三まで住んでいた家(廃屋)で一夜を明かす二人。

季節は春。山崎は渋々見合いをした相手とラブラブになり結婚するらしい。
「三次元の女の子は最高っす。究極の萌えはやっぱ眼鏡っ子」
柏瞳は出産し城ヶ崎と豪邸に住む。
「佐藤君、元気にひきこもってますか。私の人生“順風満帆”です」
佐藤は警備のバイト。
「皆せいぜい頑張ってくれ。俺も適当にやっていくつもりだ」

夜は三田4丁目公園で岬の「必勝ノート」の受験勉強をみる。岬は大検を受けて佐藤より良い大学に入るのだという。そして新たな契約書を差し出す岬。日本人質交換会。お前が死んだら俺も死ぬぞ。これで冷戦下の核保有国のごとく、死にたくても死ねなくなるという。契約書にサインする佐藤。

『NHK会長 中原岬 会員第一号 佐藤達広』
岬「これで佐藤君も私もきっと大丈夫。NHKにようこそ」

【感想】○
中原岬の自殺を止めようとする佐藤達広だったが、説得に失敗。しかしキャッチする「奇跡」を起こす。さらに妄想のはずのNHKを実体化させる事に成功し、岬の命を救うため身を投げる。転落防止ネットで助かった佐藤は死ぬのを諦め、岬と共に適当に折り合いをつけて生きて行く事にする。結局、何も解決しない。だからこそ死ぬでもなく生きていく。

最終回という事を気にせず、この回単体で見れば結構面白いものがあったが、シリーズ全体の最終回という視点からすれば、力及ばずの観あり。前半の佐藤の行動が有り得ないとか、この番組独自の新たな答えを提示できなかった所、それも含めての「ダメ」括りで終わらせた感じもした。

結局、佐藤自身のひきこもり問題は前回で解決していたようだ。引きこもってられない環境になれば引きこもらないという、答えになってないような答えで。前回の記事で予想した岬のカウンセリング効果についても触れられず…。今回は岬の解決のみに絞っていた。

その岬の解決は良く出来ていた。全て自分のせいだと悲観する岬には、妄想でもいいから他者のせいにする事が(少しは)必要だよ、という答え。岬の心の闇とこれまでの生き方については、#22前回#23で山ほど書いた(書き過ぎてもう書けない)。

そんな岬の長年に渡って蓄積された日本悲観協会(NHK)という暗雲を取り払うには、佐藤の持ち合わせている言葉では通用しなかった。海に落ちていく岬をキャッチするという奇跡の行動と強い抱き締めが必要だった。ここで岬は、神様のような奇跡が自分に起きた事に驚き開眼する。

「いっそ神様を信じられれば、全部神様のせいに出来るのに。そしたら私は悪くないって確信できるのに」
岬の回想セリフが流れ、佐藤の妄想をも信じ始める岬。佐藤の日本ひきこもり協会(NHK)と岬の日本悲観協会、そして神様。自分のせいではないと必死に演じる佐藤が、岬には演技とは思えなくなってくる。

海から現れた巨神は完全な妄想だが、他者のせいだと思う心の表れ・象徴である。それが佐藤だけでなく岬にも見えてしまう。岬の発想の転換と佐藤への共感の表現が巨神。さらに佐藤は演技ではない事を証明するかのように、走り出して柵を破って転落していく(そういえば、N・H・Kにようこそ!のキャッチコピーは“ノンストップひきこもりアクション”だったw)。

だがこれは岬にとっては非常に困る迷惑な行動。折角、自分にも芽生えた転嫁の心を、佐藤の革命爆弾で消されては困る。遺書も無く佐藤が転落すれば自殺か事故か分からず困る。自分の母の転落を見た自分に、もう一度同じ光景は耐えられない。そして奇跡を起こした佐藤が死んでしまっては大変困る。

佐藤の頭を力無く叩く岬のシーンは、牧野由依の声の演技もあってグッと来るものがある。ここは#14冒頭シーンと、セリフも行動も対比になっている。「あの…、死ななくて良かったね」という軽い?言葉に対しての「死んじゃダメだよ。死なないでよ」。佐藤が力任せに殴ろうとするのに対する岬の力無い殴り。怯える岬に対しての佐藤の無抵抗。

季節が変わって、岬と佐藤の立場は逆転し、岬の勉強の面倒を見る佐藤。外に出るのは相変わらず億劫だがバイトする佐藤。岬なりのNHK(日本人質交換会)の契約や「必勝ノート」などを見ると、岬もまだまだ妄想が足りない気もする。でも少しずつ現実にも妄想にも折り合いを付けて生きていくのだという。死ねないなら生きるしかない。

てゆーか、大学中退から4年経っても大学受験勉強を教えられる佐藤ってスゴイ。工事現場警備員より塾講師のバイトした方が良いのでは。

【総評】◎
引きこもりだった佐藤達広がN・H・Kの陰謀に気付き、突然の中原岬のカウンセリング提案によって幕を開けたこの番組。引きこもりを隠すための「逃げ」から様々な人と出会い、再会し、色々な事件や社会的現象に巻き込まれていく。昨年の加藤夏希主演ドラマGO!GO!HEAVEN!は、自殺しようとして成功してしまう物語だったが、N・H・Kにようこそ!は成功すらしない物語で、とことんダメっぷりを描いていた。

シリーズ前半はひきこもり星人と一般人の境界線の無さを強調し、後半は一般人の陥る罠から引きこもりよりもダメな状態を描いた。前半・後半のクライマックスは共に自殺か否かで括ってあり、シリーズ構成がとても巧かった。

声優陣の演技もとても良く、各人物の性格を反映した声になっていた。佐藤役の小泉豊の声が低いとの指摘もあったようだが、あの疲れた感じから退廃的で諦観している様子が良く出ていたように思う。

#1は、やや妄想シーンと佐藤の精神的な症状が強調されすぎていて、初回から引きこもりとは違うとの声もあった。でもテレビだから、と納得できたのはN・H・Kという発想と岬の出現の面白さだった。この回を見た限りでは、岬によって色々な仕事に就かされ失敗したり、岬が戦うヒロインなのかとも思った。

#2がシリーズ最大の鬼門・難関で、ここで視聴を止めた人が多数居たのでは。当ブログへのこの番組記事アクセスも#3以降はガタ落ちしたし。#1での誤った過大な期待の喪失と、ギャグになってない切実な雰囲気が痛々しく、見てられない・辛いとの感想をあちこちで見掛けた。

#3は一転してサービスカット満載。…で喜ぶのは当ブログの趣旨ではないので、現実・仮想、一方向・双方向で小考察してみた。すると突然現れたはずの岬が、極めて妥当な存在にも思えた。

#4はアキバのお勉強。あれだけ妄想する佐藤が架空世界に入れないとか、引きこもり症状は何処へいったのかなどの疑問はあったが、一般化した秋葉原の生態を見せ、境界線の曖昧さを描くというシリーズ前半の試みはこの回から始まっていたのかも。

#5は高校の先輩:柏瞳との再会。社会的に立派に生きている柏の持つ、引きこもりの佐藤よりも深刻な病気。学生:山崎の二次元への傾倒、正体不明の岬のカウンセリングへの失望など。まともな人間はどこにいるのかという主張。

#6は山崎薫の彼女疑惑を通して描く、人を見下す見下されるという考えのダメさ。だったら引きこもりの方が対立を生まないのではとの主張が見え隠れ。

#7は一番のギャグ展開。岬との恋人気分が始まり、岬の行動と目的がますます分からなくなる佐藤。

#8で岬を偽恋人に仕立てて母親と対面。普通とベタで、佐藤も(岬も)普通の人間になれるかもとも思わせた。

#9ではさらに、恋愛感情の芽生えで引きこもりと一般人の差異の無さを強調。それが二次元へと向かったかと思えば、三次元にコロっと豹変する山崎の主張と行動が面白かった。

#10は、この回を根拠にしてシリーズ後半の佐藤の考えを正当化できる結構重要な回。外面・内面での人の判断という意味では意外な名作回でもある。

#11から前半の山場が始まる。柏瞳の心の鬱と佐藤の躁状態が二人を引き寄せる。

#12で明らかとなる自殺オフ会。引きこもり以外の人が陥る死への様々な誘い。楽しい一日を自ら最後の日と定めるメンバー。佐藤が試される時が来た。

#13は前半の山場。各人の思いが吐露され、まさに生きるか死ぬかの状況に。ここで何の力も発揮できなかった佐藤は咆哮する。

#14での後処理の余韻に執筆者は深く感動してしまった。山場からのクールダウンをあれほど見事に描いた作品はそうそう無いのでは。これは原作にもないオリジナル話らしく、この製作陣の力量の確かさにも参った。

#15はダウンしすぎてパワーダウンした回。#16とセットと考えて良い。この回ではネトゲーへの山崎の冷静さが光り、岬の先行き不安を思わせた。

#17はマルチ商法、#18でクーリングオフ。働く小林の陥った罠。それは佐藤達よりも未来のない生き地獄。またもや佐藤は外に出て社会の暗部を見る事になる。

#19はハッピーエンドの一形態を見せた回。結局、この回のパターンを佐藤も踏襲してしまう。だったらこの回は小林兄妹にやらせないで取っておけば良かったのに。

#20は佐藤に多大な貢献をしてきた山崎の、社会への失望と諦観。この回は哲学的で甚く感動してしまった。青春の終わりというか、人が変わらざるを得ない状況とそれに対する気持ちの変化、それでも変わらない不偏のものの存在など、色々と考えさせられた。

#21でいよいよ山崎との別れ。この回は考えさせられた#20とは打って変わって、とにかく雰囲気の出し方で感情に訴えた。この全く違う手法が、いとも容易く出来てしまう製作陣が凄すぎる。

#22は柏との別れで孤立する佐藤と、佐藤を掴まえられなかった岬の孤独。佐藤と岬の不思議な関係と恋愛関係の破綻を同時に解らせた柏とのホテル描写が巧い。決して柏の体の綺麗さに心を奪われないよう(笑

#23で岬は一気に自殺モード。後半の山場が開始。最後の望みを託した新契約を佐藤に蹴られ、引きこもりも脱出した佐藤を見て、岬はこの世への別れを決意する。

そして最終回#24。引きこもりを完全に脱したわけでも、岬とも恋人になったわけでもない佐藤。新たな答えも提示できぬまま終わったシリーズ。逆に言えばこのどっちつかずで曖昧な部分がN・H・Kにようこそ!の面白さを引き出す魅力か。

佐藤が主人公でありながら、実は佐藤を描くのではなく、佐藤を社会を見る眼(スコープ)として使っていた。佐藤という双眼鏡を通して様々な人の立場や心理を見抜かせる。だから佐藤は同じ位置に居て変化しない。よって引きこもりという設定が好都合。

だけどちょっとだけ佐藤も変化する。住んでいた三田ハウスとは違うアパートで暮らす。その三田ハウスは修繕工事中。建て替えでなく建物の延命である修繕。佐藤にも死と再生はなく、延命で生きていくのだ。
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2006年12月22日(Fri)▲ページの先頭へ
たったひとつの恋(最終回)

【あらすじ】神崎弘人(亀梨和也)と工場で再会した月丘菜緒(綾瀬はるか)だったが、弘人は「会いに来たりすんなよ」と菜緒を追い返す。後日、菜緒は斎藤(池内博之)とその両親と会食。北海道の養護学校へ赴任する話も結婚を理由に断る。弘人は造船所で仲間を助けながら働く。現場監督:原田(平泉成)はそんな弘人に
「お前の楽しそうな顔は人の事ばっかり。もっと自分の事を楽しめ」
と声を掛ける。

神崎亜紀子(余貴美子)は松坂屋のデパ地下で月丘みつこ(田中好子)を見掛け、その後姿に深くお辞儀をする。菜緒はウエディングドレスを試着するが斎藤は「笑顔が足りない」と言って、自分は安全パイではないかと尋ねる。結婚辞退を決意した斎藤。菜緒は養護学校の話を請ける事にする。

菜緒の送別会に行こうとする弘人に、亜紀子も付いて来る。月丘家で亜紀子は泣きながら「ゆすり」の件を謝罪。みつこは許し亜紀子を喫茶店へ誘う。草野甲(田中聖)、大沢亜裕太(平岡祐太)、本宮裕子(戸田恵梨香)らと楽しく過ごす5人。だが、亜裕太がオレンジのイガイガの思い出話を始め、弘人が覚えていないと発言した事に菜緒が激怒。
「弘人は壁作って人の陣地に入ってこない。自分の陣地にも人を入れない」
「弘人は、ちゃんと人を好きになる事なんて出来ないんだよ!」
弘人は反論せずに帰る。

菜緒の出発の日、裕子と工場跡を訪れ、3年前に渡されるはずだった菜緒宛のクスリマス&バースデーカードと、クジラの置き物を見つけた菜緒。裕子は甲に芝居を打たせて弘人を工場へ向かわせる。弘人は菜緒からの手紙を見つける。
「私はどこかでずっと弘人が私を見ててくれるような気がしてた。私、あなたの事、忘れません。今もやっぱり好きです」

弘人は菜緒の出発する空港行きバス乗り場へ走る。追いついてバスを降りる菜緒。
弘人「今だったらその壁、一緒に乗り越えられないかな?」
菜緒「がんばる。乗り越える。二人でもう一度がんばる」
弘人「でも養護学校の先生はちゃんと頑張るんだからね」
菜緒「遠距離恋愛ってやつ?」
弘人「でもいつも一緒だから。そいで、そいで一緒になるから」
菜緒「うんっ」
バスにスーツケースを忘れたと知り、弘人・菜緒・甲・裕子・亜裕太はバスを追いかけ走り出す。


【感想】◇
やや無理をしてあっさりとハッピーエンド。身分の違いも周囲の反対・妨害も過去の事にして3年後を描き、時間こそが障害を乗り越える力だった。その時間を想い続ける二人は幸せをいつか手に入れる。

…と書けばキレイかもしれないが、要は視聴者のハッピーエンドを望む声に製作側が応えざるを得なかっただけかも。当初の設定を下回る視聴率で制作費の回収が放映(CM料)によっては叶わなくなった今、関連商品の売上で赤字を埋めるしかなく、買ってくれるファンの期待を裏切る結末には出来なかったんでしょ。この最終回も予算節約で、送別会がスタジオセットの菜緒の自宅開催だったり、普通は空港がラストになるはずなのに、バスって(笑

だからこの結末を良いとか悪いとかあんま言えないよね。視聴者が決めた事だし。特に、公式BBSにハッピーエンドを望む書き込みをした人(カキコした人ほぼ全員だけど)は、関連商品を買う義務がちょっぴり生じるのでは。自分の予算や好みに応じて、書店でノベライズ本を買うも良し、CD店でサントラを買うも良し、DVD-BOXを予約するも良し…。

前回にも書いた通り「このドラマのラストシーンは次回の劇的な展開には繋がらない法則」があるので、再会の工場では二人は結びつかなかった。そこで話す二人の間にロープが強調され線引きの分かり易い演出。で、前回も書いたように、そういった場面場面での演出が後に活かされない。その線とか壁だとかを越える弘人のシーンが最後にセットになってないと意味が無いのに。

#8で書いた「弘人と斎藤が対決、菜緒が断るのに悩んだりする」ではなく、悩むのは斎藤の方だった。結婚辞退を自分から申し出る斎藤。視聴者からすれば「いい人だな」で消えていくわけだが、会社中に社長の娘との破綻が知れ渡る事を考えれば、彼は今後スタージュエリーに居続けられないでしょ。彼の結婚適齢期3年と今後の人生へ菜緒が与えたダメージは大きい。

亜紀子の謝罪をきちんと描いた所は偉い。#8で罪悪感を喚起させる時間の掛かる方法と書いたが、本当に3年越しの謝罪になるとは。でも謝るべき相手は雅彦(財津和夫)だと思うけど。他にも亜紀子(余貴美子)は美味しい役だった。総菜屋の黄色エプロン制服姿とか。Yさん、ちゃんと録画して見ました?(個人的な発信でごめん)

菜緒の北海道行き、工場で見つける置き物、手紙の発見、バスに追い着く、長距離走の割には息切れが小さくプロポーズまでいったり、もう最後になるにつれ御都合主義満載だ。ベタと明るい雰囲気で許すしかない。

以下妄想。一番のミラクルハッピーエンドは、菜緒と廉(齋藤隆成)が結ばれる展開(ォィォィ)。養護学校に赴任した英語教師:菜緒。そこには養護学校で学ぶマセガキ:廉が居た。女教師と中学生の禁断の恋。二人には弘人とも無かった年齢差という障害が加わる。でも弘人は他人の事で喜ぶ人間だから大丈夫。

菜緒の「おいしい」手料理で健康になった廉は野球選手に。月丘家の面々も最初は反対してたが、廉が「60億の男」となってメジャー入りすると知るや手のひら返しで賛成。廉は菜緒から教わった英語を駆使しつつ、米国で「サンシーン!(三振)」の山を築く…。
…ホント、いつもとノリの違うテキトーな感想ですみません。そのくらい本編から心が離れたという事で。


【総評】◇
当ブログ:テレビ批評的視聴記でゴールデンタイムの恋愛ドラマの記事というのは初の試みで、書き方の勉強のつもりで記事を執筆してきたが、やっぱりドラマの読み方も記事の書き方も間違えてばっかで、各話を振り返るのも気が進まないが、例外を作らないためにも振り返る。

#1は、かなり気合を入れて書いただけあって、弘人の屈折、水と魚のキーワード括り、脇役の活躍ぶりへの期待、今後の波乱要因など、良く書けた方だった。この記事での指摘である脇役は、このドラマでもあまり活かされなかった。そして病死を匂わせた演出も、最終回では全く関係無い結末に。

#2で既に「前後の文脈よりもその場のトキメキやもどかしさを重視」と指摘している自分に驚き。この、部分と全体の不整合が回を重ねる毎に悪い方向に作用した気がする。

#3が一番楽しんで観られた。あまりに入り込み過ぎてあらすじが全然まとまってない。この回の良さを思えば、そもそも悲劇設定や環境悪化のシリアス展開がこのドラマに必要だったのか?という疑問にまで突き当たる。

#4では一気に波乱材料が噴出する展開と、弘人の自分の責任を放棄したあんまりな怒りシーンに引いた。はっきり言ってこの回からもう、弘人にも菜緒にも感情移入できなくなっていたのかもしれない。

だから#5では脚本の伏線や構図、甲と裕子を評価したり。

#6は#5との対比で見て、ヒーローとヒロインの入れ替わりや男女の役割の描かれ方に言及。どうもこの辺から弘人も菜緒も相手に言えない事が次々に出てきて、それでも付き合おうとする無理っぽさが出ていた。終わりを予感させたという点では巧かったのかも。

ひと恋 出演者が選ぶもう一度見たいシーンという番宣記事も書いた。これも初の試み。この記事を書いてる間が一番楽しかった。だらだらと書いたが、甲のカットの多さの原因、リアル演出と視聴率・制作費の関係などの指摘もした。

#7はとにかく月丘みつこ(田中好子)の演技が良く、みつこへの感情移入で一本記事を書いた感じ。

#8は展開の読みを見事に間違え、既成事実がどうのこうのと諦めの悪い執筆者。その感情が各シーンへの難癖へと転化し、全体の流れを正当に評価しないダメっぷり。

#9は最終回の結末予想のみ。「互いの身体的距離は離れても、心は繋がっているという結末」という部分が当たったが、色々書けばどれかは当たるわな。

そして最終回#10では強引な結末を、非視聴者と他の視聴者のせいに転嫁した執筆者。このエンドは最初から予定されていたものかもしれないのに。テキトーな菜緒と廉の物語で笑いに逃げるしか…。

…なんか、番組の総評でなく自分の記事の総評になったが、「たったひとつの恋」について上手く評価するだけの力が執筆者になかったという事。勉強になりましたと言うしかない。この失敗を少しでも教訓にして次のドラマの記事執筆に活かすよ。失敗を糧にって、恋愛も同じでしょ(←これも逃げ)。「亀サイコー」って言ってる方がどんなに楽か…と思いつつ(←これも転嫁)。いや、亀梨も綾瀬も良い演技をしてたと思うが。


【追記】
あまりにも低レベルな記事だ!との自分自身からの心の抗議があったので追記してみる。「たったひとつの恋」はシーン毎の良し悪しとドラマ全体の良し悪しがちぐはぐだったと思う。

シーン毎には弘人と菜緒の恋愛シーンと悲劇設定シーンが評価軸。弘人と菜緒の恋愛シーンは最初から最後まで、くすぐったさ、甘い切なさ、もどかしさなどが良く表現されていた。一方の悲劇設定シーンは、身分違いというスタートは有り得るとしても、各人物の行動がやや無理やりというか、悲劇にするための御都合主義が感じられた。

恋愛シーンの多かった#1から#3までは、良く出来た恋愛ドラマだと思わせたが、段々と悲劇設定シーンが多くなり、そうなっても弘人と菜緒の恋愛シーンの調子は変わらない所に次第に疑問を持つようになった。弘人には弘人の、菜緒には菜緒の悲劇がそれぞれに振りかかるが、二人が一緒にいる時はそんな事が無いかのようなラブラブが続く。

それが、悲劇(陰)を打ち消す「陽」だと思えればまだ良かったが、二人は互いにひたすら陰を表に出さず、陰の部分を明かして二人で解決しようとか、励まし合ったりだとかも無く、ラブラブを続けている仮面恋人のようだった中盤以降。

それでいて弘人は命を差し出すだの、菜緒は弘人しか見えないだの、なぜこの二人は好き合っているのかという根本からして、見ている方としては良く分からなくなっていった。悲劇設定シーンも増えていったが、これも極めて外面的な悲劇で、弘人は悪くない、菜緒は悪くないという説明を補強するだけ。マイナスではないからといってプラスにはならないのに。

弘人も菜緒も恋愛部分での心は守られていて、それ以外の人間関係が次第に破綻していく。よって二人が会えばラブラブになるというのは、良く考えると稚拙な設定ではないか。そして二人の関係が破綻するのも、二人が会えなくなるという理由による所が大きかった。

これで再会によるハッピーエンドへの道筋が完成しているわけだが、二人の心は純愛なままと評価していいものやら。愛を育んだとは言えない・プラスになっていない好きの感情では悲劇設定を打ち崩せない。だから3年の時間で解決させたという所が、最終回で感じた強引で非現実的な部分。そして結局は時間だったのかよとの拍子抜けが、あっさりした結末に思えた部分だった。

序盤の恋愛シーンは、ドラマ全体の良さに繋がっていたが、回を重ねても調子の変わらない恋愛シーンは、悲劇設定シーンが多くなるに連れ、滑稽でズレてるように感じられ、悲劇設定シーンの御都合主義もあって、ドラマ全体の良さがどんどん崩れた。

ところが困った事に、それぞれのシーンを切り離して見てみると、亀梨和也は細かな一瞬の表情や息遣いまで駆使して感情表現しているし、綾瀬はるかは戸惑いとトボケの表情が抜群で、主役二人の演技には文句の付け所がない。

演出も終始抑えたトーンで音楽ともマッチしていて、小道具・背景・効果音も割と分かり易く距離感や危機・心象表現を描写していた。脚本もちゃんと伏線を張ったり、印象的なセリフがバシバシ繰り出されたりで、流石は北川悦束子!と毎回唸らせるものがあった。

それらの個別の良さが、なぜ全体の良さに繋がらない、ひいては視聴率に繋がらないのか、非常に難しいものがある。で、良く考えると上述のような拙さが浮かび上がってはまた個別の良さを捨てられず……と果てしなくループする。

この解決しない無限ループが今の執筆者にはとてもストレスで、笑いに逃げたり、誰かに責任を転嫁させたくなって今回の低レベルな記事になったとさ。
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2006年12月20日(Wed)▲ページの先頭へ
バンド・オブ・ブラザース(最終回)

【あらすじ】「戦いの後で」1945年5月、ヒトラーの別荘のあるベルヒテスガーデンに入る第101空挺師団第506連隊。ナチのSSがゲリラ戦を仕掛けるかと思われたが、街には人影がない。第2大隊E中隊は山を登り別荘:イーグルズネストを占拠。間もなくドイツ降伏の知らせが入る。VEデー(戦勝記念日)をゲーリング邸の酒で祝う。

名誉除隊の85点に達していない兵はそのまま占領軍として残る。抽選で特別に除隊となったパワーズは帰国途中に交通事故で入院。101空挺師団は沖縄に転戦するとの噂が専らで、訓練を始めさせるウィンターズ少佐。転戦の決まった13空挺師団への転属願を出したウィンターズだったが残るよう言われる。

検問のヤムベックも交通事故で死に、酒に酔ったI中隊の工兵は殺人事件を起こし、止めに入ったグラント軍曹も頭を撃たれ死亡。E中隊に残ると決めた中隊長のスピアーズは犯人をMPに引き渡す。リプトン少尉は大隊本部付になりドイツの将軍の降伏に立ち会う。将軍は兵に最後の訓令をする。

「諸君らは特別な絆で結ばれている。戦場でのみ生まれる絆だ。兄弟達と共に戦い、死も苦しみも共に味わった。諸君と共に戦えた事を誇りに思う。これからは平和な人生を送って欲しい」

精神疾患で戦列を離れていたコンプトンが復帰し、野球をする隊員達。そこへ日本降伏の報が入る。戦後、コンプトンは検察官→判事になった。ウェブスターは記者、マーティンは鉄道員→建築、ラズは便利屋、ロウは建築屋、ペルコンテは郵便配達、リーブゴットはタクシー運転手、ランドルマンは土地開発、モアは事故死、リプトンはガラス工場長、ウェルシュは教育委員、スピアーズは朝鮮戦争にも参加し刑務所長になり中佐、ニクソンは二度の離婚を経て再婚し世界旅行、そしてウィンターズはニクソンの会社の人事課長だったが軍に呼ばれ訓練担当官に。今は小さな農場を経営している。

【感想】○
ナチ親衛隊のゲリラ戦もほとんどなく、あっさりとヒトラーの別荘を落としたE中隊。ここが戦争のゴールとなる。しかし古参兵でも点数が足りず帰国できない者が多数。沖縄転戦の噂も流れる中、やる事の無くなった兵達に事故死や不幸な死が相次ぐ。幾多の戦闘でも死ななかった兵があっけなく死んでいく。結局、オーストリアにいる間に第二次世界大戦は終結。各員は社会復帰していく。

ベルリン占領がロシア軍の担当となり、最終目標を失った米英仏軍の中、ヒトラーの別荘占拠を果たしたE中隊は幸運な方だったと言える。カラヒー山の走破訓練に始まり山荘の奪取で終わったE中隊。別荘で絶景を眺めながらワインを飲んではしゃぐくらいのご褒美は、今までの戦いを思えばあっても当然。

そんな幸福な時間はあっという間に終わり、帰国したくても出来ない現実が待っていた。活躍の点数が足りないというつまらない理由。鬱屈の溜まる兵達は気の緩みもあって、これまたつまらない事故で次々に死んでいく。死は戦争と平和に関係なく、古参兵にも補充兵にも関係なく訪れる。

沖縄転戦の噂は、隊員達の気を引き締め、士気を維持するための上層部の策とも思えた。ウィンターズの転属願が受理されなかったのも、経歴がどうこうより、そもそも転属の必要がないからという事だったのでは。

行き場のない兵に何とか口実を付けて隊を去らせるウィンターズの優しさ。そんな最中にドイツ将軍の言葉が感動的。戦場で戦った兵には特別な絆があると。ドイツ軍も連合軍も、兵士達の意識に対立などなかったのだ。これをドイツ側に言わせて嫌味を無くすニクイ演出。

勝った側も負けた側も、兵は戦争が終わって社会復帰をしなければならない。部下を去らせて自分は軍隊に残るか迷うウィンターズだったが、戦場で結ばれた絆は永遠だ、生き残った者にも散った者にも…と気付いて軍隊を去ったのだろう。

【総評】○
スティーブン・スピルバーグとトム・ハンクス制作で制作費も映画スケールだったバンド・オブ・ブラザース。CGを極力使わず徹底的にリアルな描写にこだわり、史実を再現しようとしていた。ただ、そこに固執したせいか、軍隊という組織の中で同じ動きの要求される兵隊という面がどうしても出てしまい、個々の兵達の人物描写が弱かった。

よってキャラを覚えるのも難しく、感情移入もしにくかった。全体的に戦闘描写が淡々と進む演出からテーマや主張を見出すのも一苦労で、ドキュメンタリードラマにそれが必要なのかという根源的な疑問を感じる時もあった。でもそれでは記事に出来ないのでこちらで勝手に見出してみたのが実状。以下、各話を振り返ってみる。

#1はスパルタのソベルによって鍛えられる隊員とそれへの反感を描いた回。訓練に必要な要素が実戦向きとは言えないという教訓。ソベルは去り隊員達の絆は既にここで生まれた。

#2はノルマンディ降下で散り散りになった兵がウィンターズの下に集まっていく様子が描かれる。兵達の身体的な距離だけでなく、急に指揮官となったウィンターズに信頼が集まっていく。

#3はカランタン攻略と戦闘拒否のブライスを描いた回。ドイツ軍の反撃で極限まで追い詰められた状況で、戦う意識と戦う理由が目覚める。それは政治的でも銃後にある発想でもなく、大義名分など関係無い目覚めだった。

#4はマーケットガーデン作戦の流れを、E中隊とブルの動きで説明しようとしていたようにも思えた意欲作。その試みは失敗気味だったが、この手法自体は興味深かった。

#5はトム・ハンクス監督回。戦いの合間という中途半端な時期を、戦争と平和にある人間の違いという全体にも繋がるテーマで描いた。主人公ウィンターズの心にも迫っていて、ハンクスがこの回を担当したのも分かる(自ら望んだのかは知らないが)。

#6はスピルバーグがこだわる「衛生兵」に焦点を当てた回。最大の激戦を、命を救う衛生兵視点で描いて戦闘モノではなく人間ドラマにしていた。

#7は指揮官と隊員の亀裂を描く。両者に信頼関係がない事が最大の敵だった。強い絆で結ばれた兵達には、その中から自然に生まれた信頼できる人物こそ指揮官だった。

#8ではさらに、元E中隊指揮官ウィンターズの温情の決断が光った回。中間管理職のような地位になったウィンターズが、上のためでなく部下のために軍規に反する行動に出る。それが事の本質のため最善の手段だったから間違いなく正しいと思えた。

#9は強制収容所の解放。この記事ではその非道さにもっと触れる必要があったかもしれないが、それは当然、人が持つべきものとの前提に立って、あえてニクソンの苦悩に目を向けてみた。

そして最終回の#10。国家と国家、国民感情の対立という戦争にあって、そんな単純なものではない戦場の兵の思いは、敵味方に関係無く存在する。戦争を実際に行う場所:戦場には何があるのか。絆や生と死は戦場以外にも存在するのに、戦場には特別な絆が存在するという。その絆が生と死に関係無く永遠だという。これを知ってなお、「戦場ドラマは格好いい」とか「戦争はいけない」との感想を持てるだろうか。
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バンド・オブ・ブラザース Vol.1(1、2話)
Vol.2(3、4話)
Vol.3(5、6話)
Vol.4(7、8話)
Vol.5(9、最終話)

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2006年12月18日(Mon)▲ページの先頭へ
その時歴史が動いた:ひらがな革命

【あらすじ】中国からの律令制度で統治していた平安時代、一万人の官僚の中から秀才として頭角を現した菅原道真。26歳で方略試、40歳で文章(もんじょう)博士となった。一方、藤原氏の御曹司:藤原時平は16歳で殿上人として政界デビュー、当時考案されて間もないひらがなで和歌を詠み、明るい美男子であったため色恋も絶えなかった。

讃岐国長官として地方における律令制度の崩壊を見た道真は、寛平5(893)年に国務大臣に相当する参議に就任するや、改革に乗り出す。だが時平は3年前に参議となっており、道真はひらがなと和歌にうつつを抜かす時平とは反りが合わなかった。それでも政治の実権は道真が握り、中国の律令制度からの脱却を図る改革として遣唐使の廃止、有力者の土地所有を認めての課税などを進めた。

道真の改革を勝手な振る舞いと見た官僚と貴族は、政務をサボタージュし、次第に時平の下に集まり出す。昌泰4(901)年正月、突如として道真追放令が出て大宰府送り。実権を握った時平は、土地の所有を認めた上でその広さに応じて課税という道真の政策を遂行する。だが同じ路線ではやはり官僚が付いて来ず、時平も追い詰められていく。

律令制度を絶対視する官僚の意識を変えるため、時平は紀友則・紀貫之ら和歌の得意な下級官僚にひらがな和歌集の編纂を命じる。恋歌ばかりの和歌に季節・祭事・旅などを加えた13種1100首の古今和歌集が延喜5(905)年4月に完成。和歌は漢文によらず日本古来の音によって心情を素直に表現できると宣言し、官僚達の意識も次第に変わった。これは源氏物語や枕草子、寝殿造り、十二単などの国風文化に繋がった。

道真は失意のうちに903年に59歳で死去。時平は道真追放以降、昇進を望まず左大臣で通して財政再建を進めたが909年に39歳で死去。

【感想】◇
漢字こそ公の文字とする菅原道真と、ひらがなをこよなく愛す藤原時平。歳も離れ生い立ちも性格も正反対な二人を対比させつつ、律令制度からの脱却をひらがな導入という切り口から解釈した大胆な新説の提示の回。もともとこの時代に疎い上に、あまりに大胆すぎて理解が追いつかない。

従来の、道真は学問の神様、時平は私利私欲な権力者という図式とは全く違う構図も提示していた。道真を漢文にこだわる頑固者、時平は柔軟で熱意ある改革者だという。道真と時平が対照的だという部分は良く分かった。ゆえに反りが合わないというのも自然な流れ。ここで時平が個人的な道真への嫉妬や権力指向から追い落としたのではなく、官僚や貴族全体の意見に沿って追放したと解釈していた。

従来と今回の新説のどちらが正しいかはそれこそ解釈によるが、その後の時平の行動を見るとやはり道真への個人的な僻みはあっただろうとは思う。位が一つ下でも歳は上で実権を握り、頭も良いため時平は道真に敵わなかったのだろう。

ただ、人柄とは別に道真の政策は時平も評価していたのかもしれない。律令制度の限界に改革が必要だとの思いは共通していた。時平が道真の政策を踏襲したのは、それ以外に思いつく能力が無かったとも言えるが、元の律令制度に戻したのでもない事を見ると、時平自身も改革の必要性は分かっていたと言えそうだ。

この改革がなぜ成功したのかの説明に「ひらがな」による意識革命に答えを求める所が斬新。中国からの律令制度の脱却と日本独自の文化の開花を結びつける。漢文に拘りつつも遣唐使を廃止した道真の意志を、ひらがなを愛する時平が受け継いだからこそ国風文化が華開き、延喜の改革となったというもの。ホントに大胆な新説。

ひらがなが初めて公の文書に使われた古今和歌集が、官僚の経済政策にどう影響を与えたのか分からないが、どちらも時平という人物によって行われた事を最大限に利用した説明か。まぁでも、今で言うとギャル文字を総理が愛して経済白書に使われたら、官僚もビックリだ。ギャル文字が日本古来の音かどうか知らんけど。
前回記事
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古今和歌集
消された政治家 菅原道真
国風文化の時代
紀貫之
日本語の歴史

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2006年12月16日(Sat)▲ページの先頭へ
N・H・Kにようこそ! #23

【あらすじ】「三日とろろ、おいしゅうございました」
ひきこもり脱出講義にて、マラソンの円谷選手の遺書を読み上げる中原岬。
「やっぱり皆、死んじゃう前に故郷に帰りたくなるのかな?」
岬の故郷は日本海の自殺名所。その岬でよく遊んでいた岬は、目の前で女の人が絶壁から落ちるのを見た記憶がある。突然、最終試験を行うと佐藤達広に宣言した岬。翌日、佐藤と岬は繁華街で映画を観たりマックで食事したり。試験結果は見事に合格。岬は佐藤に新しい契約を差し出す。

『ダメで寂しい人間の相互契約』
佐藤達広を甲、中原岬を乙とする。

  1. 甲は乙を嫌いにならない。
  2. つまり甲は乙を好きになる。
  3. ずっと心変わりをしない。
  4. いつまでも心を変えない。
  5. 寂しい時はいつも、側にいてくれる。
  6. といっても乙が寂しいのはいつもであり、甲はいつも側にいる。
  7. そうすれば多分、人生がいい方向に進む。
  8. 苦しいことが無くなると思う。
  9. 約束を破ったら罰金1000万円。

「簡単な事だよ。私に優しくして。私も佐藤君に優しくするから」
「こんなの、虚しすぎるよ」
佐藤は署名を拒否し自室へ走って帰る。佐藤の脳内に語り掛ける面々。
プルリン「ねぇ佐藤君、さびしくないプリン?」
山崎「人間は自分をダメ人間だとは認めたがらない。だから自分よりダメ人間を捜し求める」
小林「ネット上に他人の悪口が溢れてるのもそのためよ」
柏「いっそダメ人間と認めてしまえば楽になれるんじゃない?」
一同「認めましょう」
佐藤「お前ら…誰だ?」

父が入院し実家からの仕送りが途絶え、山崎からの乳製品送付も取り止めになった佐藤。幾田綜合警備保障(株)で働き始め生活は安定し出す。だがある日、岬の住む千葉邸に救急車が来て、風呂場で倒れた岬が運ばれていく。佐藤は千葉氏から声を掛けられ、病院に行く事に。千葉氏は三田ハウスの大家だった。

千葉氏の妹の娘だった岬。生まれてすぐ父は亡くなり、母の再婚相手は暴力男。母は絶壁から落ちて死亡、その後岬は父から暴力を振るわれ続け、千葉氏が引き取った。だが岬は高校もすぐに辞め、千葉の妻:和子と宗教勧誘に出たり、千葉氏経営のマンガ喫茶でバイト。それでも佐藤と知り合ってから明るさを取り戻したという。

209号室に入ったが岬は行方不明。枕元の時刻表に挟まっていた紙を見た佐藤は電車に飛び乗る。
「三日とろろ おいしゅうございました。だから皆さん さようなら」

【感想】◇
「誰も知らない遠くの町」に行くという中原岬の都合により、カウンセリングの最終試験を受け合格した佐藤達広だったが、更なる契約を拒否し岬との関係を絶つ。空腹に耐えかねて働き出した佐藤は岬の入院を知る。病室には遺書が残されており、佐藤は岬の後を追うのだった。絶望した岬を救い、自分が治った証拠を見せる役割が佐藤に課せられていくラスト直前回。

ここでようやく岬の正体と絶望が明らかとなるのだが、あまりにも唐突に思える岬の闇と、一気にひきこもりを脱出する佐藤とその理由の拙さが痛い。岬の理解に関しては今までの状況のおさらいが必要で、佐藤の拙さは二番煎じによる所が大きい。

今回の岬は有名人の遺言、自殺名所へ里帰りなどで最初から死のモード。やはり前回の柏と佐藤のホテル目撃が堪えたか。それも引き金であり、もっと前には佐藤が柏と出ていったり(#11)、山崎に詰問されたり(#12)。そしてネトゲー引き離し失敗と小林による連れ出し(#16)、マルチ商法を知らなかったり(#17)、クリーニングオフとの失言(#18)…などなど、シリーズ後半の岬は失敗続き。カウンセリングを継続し食事係(#19)で挽回しようとするも、その必要性はもはや薄れており、突然の最終試験とそれを合格させるしか道は残されていなかった。

そこで新たな契約(事実上の終身恋人契約)が必要となる。これは見えない物を信じないという意味での現実主義の岬の性格をよく表している。宗教勧誘をしながら神を信じていない岬、秘密を書き込んだノートに「秘密ノート」と表題を付ける岬、猫の名前を「ねこ」と名付ける岬。空想に走らず、調べ物はネットでなく本を買い、契約書も手書きの岬は二次元デジタルとは全くの対極にあるアナログなヒロイン。恋愛も契約で成立すると考えている。

その性格が母の自殺、父からの暴力に起因する事が明かされる。そして夢を見なくなった岬は現実に存在するダメ人間:佐藤を見つけ、佐藤に必要とされる事で自分の存在意義を見出そうと画策する。しかしそれも崩壊し、佐藤がひきこもりを脱出するのを見て、自分の役割は終わったと岬は絶望する。

一方の佐藤は、岬の状況をどれだけ理解していたかが問題。岬については第一回カウンセリング(#5)から失望し、尾行した#10で信用しなくなっていた。だが特に害は無く、食事もくれるから拒みもしなかったのがシリーズ後半。岬の事は深く考えないようにしていた模様。

でも今回、自室に帰ってからの「俺には岬ちゃんを救う資格なんてない」とのセリフは、岬の闇に気付いていたようにも思える。そして山崎・小林・柏の幻覚に対する「お前ら…誰だ?」の返しは岬と同様の妄想否定の現実勝利を思わせる。

そしてひきこもりからの脱出は、小林友一と同じ空腹からの脱出(#19)がもたらしたのか、岬のカウンセリングが効いたからなのか。友一と同様に、環境が理由ならば非常に評価が低くなる。結局、この番組も新たな答えを提示できていない事になるから。

ここまで書いてきてやっと最終回の展開が見えてくるわけで、ポイントとしては初回に立ち返っての「岬のカウンセリングは効果があったのか?どういった効果が・誰に?」という点ではないかと。

佐藤がひきこもりを脱したのはカウンセリングなのか、環境なのか。岬は佐藤への仕送り・山崎援助の途絶を知らない。かといって自分のカウンセリングのおかげとも思っていない。強引に講義を卒業させ、自分との関係が無くなった後で佐藤は立ち直ったから。だが岬は、佐藤と関わっている間は明るかった。

佐藤は「なぜ引きこもり続けられるのか?衣食住が保障されているから」と自問自答し、ひきこもりを脱する。だがこの答えでは岬を自殺から救えない。岬が役に立ったと説得する必要がある。それに、佐藤は柏の陰謀説を冗談でかわしたり、妄想を否定するだけの力は付いている。それは現実対処の岬に影響されたからだろうか。ではN・H・K(日本ひきこもり協会)の陰謀をも打ち砕く事ができるのか。

…さて、千葉氏が大家だったというオチには、それで入居した店子を妻が宗教勧誘するというオマケが付く。恐るべき陰謀。そして自分が経営するマンガ喫茶のバイト募集のチラシも入れる。労働で与えた賃金を家賃で徴収するという資本家による搾取か(笑)。#1記事の最後で「チラシを岬が入れ続けていたとしたら(しかも佐藤の家のみに)これこそスゴイ陰謀だ」と書いたが、あながち大外れでもなかったかも。

あと、岬と佐藤の
岬「さびしくないの?」
佐藤「さびしくないさ」
岬「私は…私はさびしいよ」
佐藤「俺は…さびしくない!」
岬「うそつきー!!」
のシーンは、文字だけ見ると何の内容も無いのに、牧野由依・小泉豊の熱演、力の入った作画によって物凄い山場のように見えた。感情のぶつかり合いと根底での共感を見せる製作陣のレベルが高いとしか言いようがない。
前回記事
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2006年12月14日(Thu)▲ページの先頭へ
たったひとつの恋 #9

【あらすじ】月丘菜緒(綾瀬はるか)を抱き締めた大沢亜裕太(平岡祐太)だったが、我に返りアパートを出て神崎弘人(亀梨和也)に連絡を付ける。翌日午後3時、港から菜緒と弘人は遊覧船に乗る。
菜緒「家、捨ててきた。私は何に代えても弘人が必要なの」
弘人「大人になれよ。冷静になれよ」
菜緒「私は今、一緒に居たい。私のために何かを捨ててよ」
弘人「俺は弟も母親も捨てられない。俺達はさ、それぞれの場所に帰るんだよ」

港に着くまでの15分、手を繋ぐ二人。菜緒の病気が再発しなくなる3年後まで、クリスマスにオレンジのイガイガを振る事を約束する。菜緒と別れたと知った亜裕太は弘人とケンカ。亜裕太は菜緒の事が好きだった。

3年後、弘人は神崎造船鉄工所を畳み、磯子に引越して大手の造船所に就職。母:亜紀子(余貴美子)は水商売を辞め総菜屋で働く。弟:廉(齋藤隆成)のぜんそくは治り中学で野球部。オレンジのイガイガは2年間振られたが、3年目に振られることは無かった。
「彼女が死んだとは思えず、僕を忘れたんだと思った。死んだのは彼女ではなく、彼女の心の中の…僕だ」

草野甲(田中聖)と森田ミカの結婚式で久々に再会する弘人・亜裕太・甲。亜裕太は車のセールスマンに。式場近くの喫茶店に実家の神戸からやってくる本宮裕子(戸田恵梨香)。甲と裕子は自然消滅したが時々手紙のやり取りはする関係。タバコを買いに行った弘人は港で菜緒を見かける。菜緒も弘人に気付く。菜緒は中学の英語教師となり、斎藤(池内博之)との結婚式場選びの最中だった。

翌日、裕子と会った菜緒は、昨夜弘人が菜緒のことを知って荒れていたと聞く。菜緒は自室のクローゼットの奥にしまってあった箱からイガイガを取り出し振ってみる。すると工場跡から光が応答する。工場まで走った菜緒は弘人と再会する。

【感想】◇
家を出た菜緒は弘人に駆け落ちを迫るが、弘人は家族を捨てられず、二人は別れる。3年後、大きく変わったお互いの状況で再会する二人。菜緒は結婚直前、弘人は別の地で別の仕事に就いていた。完全に縁の切れる直前で再会できた事に意味はあるのか。互いに気持ちの整理が着いたと思っていただけで、本心はどうなのか。忘れようとしていた恋は再燃するのか…という所で最終回へ。

前回予想した通り、「このドラマのラストシーンは次回の劇的な展開には繋がらない法則」があるので、亜裕太は菜緒とは何事も無かった。そして今回のラストシーンも法則により、弘人と菜緒をすぐに結びつける方向には進まないだろう。

また、前回書いた「弘人と斎藤が対決、菜緒が断るのに悩んだりする」は有り得るかもしれない。このドラマが徹底的にベタならば、菜緒は悩みつつ結婚式→式に弘人が飛び入り→菜緒を連れ出そうとする→斎藤は良い人だから容認→ハッピーエンド。という図式が成り立つのだが、今まで劇的な展開と演出を抑え、何度も肩透かしを視聴者に食らわせてきただけに、そう単純な結末になるかどうか。

ここで参考になるのが、もうひとつの恋として展開していた甲と裕子の関係。弘人と菜緒のように親の反対、駆け落ちといった要素もなく付き合っていた二人。ここは対照的。だが結局、自然消滅という形で別れている。そして甲は別の人と結婚、裕子は踏ん切りもついていて素直に祝福。

甲と裕子を弘人と菜緒の対比として描くなら、弘人と菜緒は結ばれる。暗示として描くなら結ばれない。どっちもありな予想にしかならないが、恋人から友達になった甲と裕子に対し、そうはなれなかった弘人と菜緒という状況を考えると、対比が有力か。3年前は本当に恋人と言えたのかと弘人が本心に気付くような回想ナレーション「あの頃僕は、君を愛せていたのかな」などもあったし。

でも、時々登場するクジラの比喩を考えると、弘人と菜緒は結ばれない結論となる。離れていても交信できるクジラ。イガイガを3年間振る事でこの比喩は使い果たしたかに思えたが、互いの身体的距離は離れても、心は繋がっているという結末に使われるのかもしれない。結婚と恋愛は別だという決着か。

あと、視聴者の願望は無視できないかも。公式BBSでの書き込みで採用が決まった今回の「菜緒が一生懸命話して弘人が可愛いと言うシーン」などを考慮すると、圧倒的にハッピーエンドを望む声に、脚本:北川悦束子が反する事ができるのかどうか。

…とまぁ、最終回の予想をどっちつかずでしてきたが、それと言うのも、もうこのドラマの楽しみはそこにしか残されておらず、執筆者の心は既に感情移入レベルから遠く離れてしまっているから。#3までの気持ちの盛り上がりはどこへやら。

場面場面の良さと全体の良さの乖離が、回を重ねる毎に大きくなった(積み重なった)結果ではないかと。今回も、港での再会シーンは遠景ショットと表情アップの相互挿入がバッチリ決まって印象的だったが、「再会」を重視して全体を考えるとここで再会させるのは間違い。工場での再会が何の意味も無くなる。その時その時で製作者がやりたい事をやっているだけのようにも思えてしまう。
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2006年12月12日(Tue)▲ページの先頭へ
バンド・オブ・ブラザース#9

【あらすじ】「なぜ戦うのか」1945年3月、ドイツ・シュテッツェルベルク。農家の卵と鶏を取るペルコンテとラズ、情事を楽しむ兵、高級食器を持ち出すスピアーズ大尉、ニクソン大尉は酒に溺れ連隊付から大隊付に降格。ウイスキー:バット69を探して店に押し入るニクソン。妻から離婚申し立ての手紙。ペルコンテは歩哨任務でいつ戦闘が始まるかと聞く補充兵オキーフと口論。
「戦争の中では今が一番快適。いつ戦闘がとか考えるな!」

ヒトラーのゲリラ戦に備えてアルプスのババリア地方に進軍する101空挺師団E中隊。新聞記事を読むウェブスター。ドイツ民族は悪だから戦うと書いてある。降伏した30万のドイツ軍と擦れ違う。ランズベルグに到着。降伏したドイツ兵を射殺する米兵。ペルコンテ達は民家を接収。
「こいつらナチじゃないってよ!何で会う奴みんなナチじゃないんだろうな?」

ルーズベルト大統領死去の報が伝わる。ニクソンは上級将校の家に押し入り酒を探すが、その妻に睨まれて出て行く。森を偵察した中隊は収容所を発見。ウィンターズ少佐とニクソンはリーブゴットを通訳に中に入る。衰弱し切ったユダヤ人やポーランド人。警備のドイツ兵は殺せるだけ殺して逃走。小屋の中には病気が蔓延し横たわるユダヤ人、列車に積まれた無数の死体、あちこちに死体の山。食料と水を与えたが、連隊軍医長ケントが急に与えるとショック死すると止める。移送先が決まるまで強制収容所から出す事もできない。

テーラー将軍は戒厳令を敷き地元民を死体処理に動員。何も知らなかった住民達。ニクソンは作業している将校の妻を目撃。一ヶ月後、ヒトラーはベルリンで自殺。だが戦争は終わらず、E中隊はヒトラーの別荘のあるベルヒテスガーデンへ出発。

【感想】◇
ドイツの敗北と連合軍の勝利は決定的になり、ドイツ兵は逃げ、続々と降伏してくる状況。低下していたE中隊の士気も回復して来るが、目立った戦闘も無く緊張感が薄れ、軍の規律は緩む。各自がやりたい事をやっても止める者も無く、何をやっても許される。そんな天国を味わう兵達の眼前に突如として現れる強制収容所。戦場とは違う別の地獄を見た兵達。

「なぜ戦うのか」が問われる。ドイツ兵を倒す任務が薄れた状況の中、一人ひとりの兵の行動によって答えの例が示される。食料強奪、情事、略奪、酒、処刑、悪の打倒。悪を倒す善の軍隊が行う所業。どれも正解とは言えない。長い戦闘で心に傷を負った兵は他人の悪行を笑って見るだけで止めようとしない。

勝利の結果としての、咎めを受けない快楽を享受する兵達だが、一方で誰も彼も、戦争は終わってほしいと思っている。いつベルリンに降下するかを気にしている。オキーフに言い放つペルコンテが象徴的。終わらせたいが自分が戦闘をするのは考えるのも嫌だと言う。

ニクソンは妻から離婚され、息子も犬までも失う。家族のために戦う必要も無くなったニクソンは一層、酒に溺れていく。将校の家でその妻に睨まれ、犬にも吠えられ無言で出て行くニクソンが、自分の家の状態と重なり合う。大統領死去も知り、最高司令官のためという大義も無くなる。

天国にあって全く満たされない兵達。そして発見した強制収容所。ただ殺されるために集められたユダヤ人や少数民族。最初はそこが何なのか解らない。自分達の常識を超えた光景だけが目に飛び込んでくる。すぐに解放したいがそれも出来ない。集めておいた方が効率的に治療できるから。効率的に殺すために集められた収容所に戻すしかない。

そして地元民も収容所の存在を知らなかった。怒りの持って行き場所もない。ニクソンの押し入った将校の家は、恐らくこの収容所の所長の住まいだったのだろう。所長の命令で無数のユダヤ人は殺された。だがその妻もまた、夫が何をしていたか知らなかった。毅然とした態度でニクソンを追い払った所長の妻が、死体処理を行う惨めな姿。それを見たニクソンは何も言えない。

空挺に志願し、一発の銃弾も撃たずに大尉にまで昇進したニクソン。自分が負傷したり、敵を殺傷した兵達の痛みも分からず、家族も放っておいて仕事をしていたから、戦死した兵の家族に手紙も書けない。ニクソンは妻の離婚申し立てに最初は怒ったが、惨めな将校の妻を見て悟った。知らなかった・知ろうとしなかった事の罪を。戦いによってそれを知ったのだ。
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バンド・オブ・ブラザース Vol.1(1、2話)
Vol.2(3、4話)
Vol.3(5、6話)
Vol.4(7、8話)
Vol.5(9、最終話)

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2006年12月10日(Sun)▲ページの先頭へ
N・H・Kにようこそ! #22

【あらすじ】「陰謀としか思えないわ」
柏瞳は言う。城ヶ崎と一緒に外出したが仕事の呼び出しで一人に。佐藤達広とばったり再会したのも
「陰謀か。相も変わらず私達の周りにひしめいてる陰謀」
「結婚という儀式だって、どこかの巨大組織の陰謀かも」
カフェから居酒屋へ。マリッジブルーになっている柏。城ヶ崎は素敵な男性。だが
「こんな美味い話あるの?陰謀じゃないの」

「不倫とか、しよっか」
佐藤と柏はホテルへ。柏は裸になり佐藤に伸し掛かる。
佐藤「ここでやっちゃったら、悪の組織の思うつぼですよ」
柏「そうね。あやうく陰謀にはまる所だったわ」
腕を組みホテル街を抜ける二人。陰謀にはまったふりで悪の組織を欺く。その姿を蔭から見ていた中原岬。佐藤は柏と別れる。
「私、お母さんになるんだ」

井の蛙線の渋爺駅で岬は待っていた。当初の目的の初詣にはいかないと言う。
「神様がいるとしても、きっと悪者に決まっているから」
今日の試験は、はぐれたから無効として帰る岬。佐藤には山崎から電話。
「田舎の人間関係は酒さえ飲んでいれば何とかなるんです。人生は酒です!
食事を持って来た岬だったが、佐藤は山崎から余った乳製品を送ってもらえるようになったと話す。岬は部屋を出ていく。

夜のカウンセリングでは公園の猫が死んでいた。人生の9割は苦しい事だらけ。そんな世界を作った神様は悪者。
「佐藤君とあの先輩がホテルから出て来る所を私に見せたのも、神様の意地悪です」
だから世界を良くするために神様を倒せばいいと語る岬。
「いっそ神様を信じられれば、全部神様のせいに出来るのに。そしたら私は悪くないって確信できるのに」
泣き出す岬。佐藤は訳もわからず自室へ戻る。同じく自室の岬。
「佐藤君はもう、私の虜だよね…」

【感想】○
中原岬によるカウンセリング期末試験ではぐれ、マリッジブルーになっている柏瞳と再会した佐藤。相変わらず何でも陰謀説に結び付ける柏による不倫の持ち掛けを、陰謀返しによって断った佐藤。だが、必死に佐藤を捜していた岬に見られ、食事係としての必要性も薄まり、岬は情緒不安定に。そして遂に、佐藤に近づいた岬の真の目的が語られる…。

基本的に柏瞳は幸せモードなので、陰謀話も深刻なものではない。それを読み取った佐藤が陰謀話に付き合いつつ、ジョークのように自分も陰謀説を唱える優しさが良い。そんな佐藤の軽い陰謀説を受け入れる柏も、改めて自分の状況が暗い物ではないと気付いていく様子が描かれ、最後は笑顔で別れる二人。

本来、柏と佐藤の陰謀話は高校時代の2年間を同じ文芸部で過ごした間柄の、仲間内だけで通じる内輪ネタだったはず。それが二人が別の道を歩み、柏は人間関係のもつれや他人の嫉妬を陰謀だと思い込み、精神科医に通うようになるまでになった。一方の佐藤は強迫観念で引きこもりになり、それがN・H・K(日本ひきこもり協会)の陰謀だと思うようになった。

再会した二人(#5)は、互いに発展させた陰謀説と、過去の内輪ネタの陰謀話のノリを錯覚してしまう。これが柏にとっての理解者は佐藤君だけとの思いを喚起させ、自殺オフ会に誘うきっかけとなる(#11)。佐藤は佐藤で、自分の理解されない状況を陰謀で片付けてくれる柏に救いの道を見出し、柏を救うためにもとオフ会に参加(#12)。

結局、自殺オフ会では、柏に必要だったのは理解者である佐藤でなくて、現状を打破する力のある城ヶ崎であり、佐藤に必要だったのは人生の分岐点にいた過去の柏でなくて、ドン底を今ともに歩んでいる山崎と岬であったというオチ(#13)になり、柏と佐藤は別れる(#14)。

そして今回の再会をするわけだが、これを運命かと捉える佐藤は柏とのベッドシーンを思い浮かべる。だが、陰謀だとかわして事を成就させない。これは、佐藤の言うように「だいぶよくなった」証拠である。状況にだらだらと引きづられる以前の佐藤だったら、柏に付いて行っただろう。深刻な陰謀説を打ち消すのは城ヶ崎のような力ではなく、ジョーク交じりの陰謀説で、過去の内輪ネタの陰謀話だった。佐藤なりの解決策を見出しそれを柏にも解らせたのだ。

だが、佐藤の柏との妄想が、岬の妄想と同じであった所が巧い。ホテルそしてベッドを妄想したシーンは佐藤のものだけでなく岬の脳内描写でもあった。ここで岬はある意味「キレて」しまう。岬は怪しげな宗教勧誘に付き合いながらもマンガ喫茶で働き、現実を生きてきた。佐藤へのカウンセリング(#5)、偽恋人(#7)デート(#8)、自殺引き止め(#13)、ネトゲー引き離し(#16)、クリーニングオフ(#18)、食事係(#19)…と全て彼女なりの現実対処で佐藤と関わってきた。

現実が破綻し妄想を見た岬は、今までの行動の原点をつぶやき、あの妄想を否定するように「佐藤が自分のトリコ」だと妄想する。父親から虐待され(たと思われる)、親戚宅に身を潜めている岬は、自分を必要としてくれる存在を求めていたのだ。佐藤を宗教勧誘で見つけ(#1)、変態ロリコン男だと知っても動じない(#3)。このダメ人間:佐藤を自分がサポートし、まともな人間になれば自分の自信になる。そうならなくても佐藤が自分を頼るしかない状況に置かれている限り、自分の存在意義がそこにあると。完璧なプロジェクトにして完全な陰謀。

佐藤は岬の状況と目的に十分気付く立場にいたのに、自分の事ばかり考えていたのと岬を誤解した(#10)ために、未だに岬の苦悩に気付けないでいる(番組的に、気付いたらお終いという理由は別として)。他者のダメっぷりを責めない佐藤は、これまでは優しさとも受け取れていた(#6記事「ツッコミなしの気遣い」など)が、いよいよ最後に岬を諌め・助け、自分が治った証拠を見せる時が来た。…はず。
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2006年12月08日(Fri)▲ページの先頭へ
たったひとつの恋 #8

【あらすじ】神崎弘人(亀梨和也)と月丘菜緒(綾瀬はるか)は小型船の中で幸せな一夜を過ごす。病室に戻った菜緒は退院し、山本という運転手兼ボディーガード付の生活に。ハーバーカフェに寄り、大沢亜裕太(平岡祐太)に「必ず親を説得するから」と弘人への伝言を頼む。

夜、光るイガイガ(フラッシュボンボンボール)を振る菜緒。気付いた弘人は懐中電灯を振り返す。一方、神崎亜紀子(余貴美子)はスタージュエリー前をうろつき、困った月丘雅彦(財津和夫)は弘人を呼び出し金を渡す。手切れ金ではなく亜紀子の揺すりを止めさせる金だと教える。弘人は金を受け取らなかったものの菜緒を諦める。菜緒から頼まれて作っていた手製の指輪も海に捨てる。
「もう終わりだよ…」

雅彦は菜緒と部下:斎藤(池内博之)を食事させる。怒った菜緒は家で雅彦と口論に。亜紀子の件も弘人に伝わったと知り、菜緒は家を出て行こうとする。母:みつこが止めに入る。
「何があなたをそこまでさせたの?あの男の子に恋をした事?だとしたら恋って怖いわね」
菜緒は部屋を出て兄:達也(要潤)も振り切り家を出る。弘人宅に行くが弘人は不在。

工場の金を持ち逃げした棚田(田口浩正)から自殺ほのめかす電話が入り、弘人は箱根の河鹿荘に向かい棚田を助けていた。菜緒は本宮裕子(戸田恵梨香)の家に行くが
「駆け落ちとか。弘人君にも家を捨てさせるつもり」
と言われ裕子の家も出る。亜裕太のアパートに辿り着いた菜緒。
「参っちゃった。ごめんね、突然」
亜裕太は優しく迎え入れ、菜緒を抱き締める。

【感想】◇
菜緒の誘拐未遂事件、母の揺すりなど、全てが月丘家に知られて弘人は菜緒を諦める。菜緒は行動を制限され婚約候補と食事させられ、怒りが爆発し家を飛び出たものの、肝心の弘人と連絡が付かず、行き着いた先は亜裕太のアパートだった。別にどこに決定的な粗があって、どこが絶対いけないという事もないが、何だか事象がただ起こっているだけの話に見えて、感情移入とか共感まではいかない。

前回予想した一夜は、「あった」という事で。でもそれが既成事実として扱われない(無かった事のような)展開がやや疑問。箱入り娘の家族にとってはこの一線は重要だと思うが。違うのかな、よく知らんけど。結局、弘人が菜緒を諦めるのと、菜緒が出て行く直接的理由が亜紀子の揺すりだったというのも、弱いというか何というか。

亜紀子の借金の理由が説明されていない所から腑に落ちない。男に貢いだからか、廉(齋藤隆成)の治療費のためなのか。そして「親を説得する」と言った菜緒は、大人しくしていれば許してもらえるという考えでいて、全然説得してないし。また、菜緒の決意を伝え聞いた弘人は、亜紀子の件が判明した時点で問い質すべきなのでは。菜緒がやるなら自分もとはならないシンクロ率の低さ。

光るイガイガでの交信シーンは良かった。#2記事では「演出の犠牲?」とも書いたが、北川悦束子脚本の伏線として、最初の通信手段で最後に残った繋がりとして見れば、むしろ今回の方がロマンチックに思える。

斎藤(池内博之)が婚約候補とは#6記事の最後で予想した通り。これをもっと発展させて弘人と斎藤が対決!みたいな展開もできたと思うが(斎藤も良い人なだけに菜緒が断るのに悩んだりする姿とか)、もう話数もないし無理か。

菜緒の出て行くシーンは、父が「出て行け!」は当然としても、母と兄の使い方(配置)がミスったような。どちらかが父でどちらかが娘をなだめるのが定石かと。どっちも菜緒を止めようとし、しかも前回使った「裏切るの?」を再利用して下手だった。ここは裕子と併せ、全てが菜緒の敵となっていく過程を描きたかったのだろうが。

弘人の基本姿勢:「許し」によって救われる棚田。弘人が亜紀子を問い質さないのも「許し」で罪悪感を喚起させる戦略か。時間の掛かる方法だけに時を置く展開になりそうな次回。あと時間といえば、亜裕太の「待てば海路の日和あり」戦略も実ったかのようなラストだったが、このドラマのラストシーンは次回の劇的な展開には繋がらない法則を何度も見てきたので、亜裕太が何事かをする事はないだろう。
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2006年12月06日(Wed)▲ページの先頭へ
バンド・オブ・ブラザース#8

【あらすじ】「捕虜を捉えろ」1945年2月9日、仏ハーゲナウでライン川を挟んでドイツ軍と対峙する101空挺師団E中隊。マーケットガーデン作戦で負傷していたウェブスターが復帰するが、バストーニュを共に経験しなかったため補充兵扱い。隊員は減り、新顔も多く、皆一様に暗い顔。幹部候補生上がりのジョーンズ少尉と共に第2小隊へ配属される。

シンク大佐の命により、ドイツ兵を捕らえて情報を聞き出すため、斥候15人の選出を大隊長ウィンターズ大尉から任されるスピアーズ中尉。第2小隊の全員が選ばれる。マラーキーは精神状態が悪くジョーンズと交代、ウェブスターは通訳で参加。ゴムボートで対岸に渡り、指揮所建物を襲撃、2名を捕虜にする。だが突入時の手榴弾でジャクソンが重傷、直ちに引き返し猛烈な銃撃をくぐり帰還。ジャクソンは皆が見守る中、死亡する。

ベストやポパイは捕虜を殺そうとし止められ、翌朝、コップは酔って悪態をつく。シンク大佐は任務成功と見てあちこちに自慢し、もう一度斥候をE中隊に要求。ウィンターズが直々に作戦説明。しかし、作戦を決行した事にして皆に眠るよう命じる。
ニクソン「新しい戦争のやり方だな」

翌日、前線を離れる事になった101空挺師団。肺炎だったリプトンは正式に少尉に、ジョーンズは中尉に、そしてウィンターズは少佐に昇進。

【感想】○
過酷な戦場での連戦により、仲間を次々に失い、断続的な砲撃で士気の低下しているE中隊。そんな事情を知らずに戻ってきたウェブスターと新任のジョーンズ。小規模な戦闘での更なる仲間の死が隊員に与えた影響と、その心を知らない上層部の間にあって、ウィンターズが下した決断とは、作戦の偽装だった。

失敗に終わったマーケットガーデン(#4)、膠着した戦線でも続く戦闘(#5)、装備もなく放り込まれたバストーニュ(#6)、その掃討戦での指揮官への不信(#7)、そしてまた前線に立つ今回といったように、E中隊は何度も休暇予定を取り消された上、一番厳しい戦場に配属される。勝利の実感もなく転戦し、兵達の士気は低下する一方。

だがドイツの降伏は目前とされ、誰もが死を避けたいと思うようになり、斥候に誰が選ばれるか、自分が選ばれない事を皆密かに願っている。本来は士気を上げるための成功確率の高い任務であるが、それすら拒否感を持つようになっている隊員達。士気の高い(というか普通)のウェブスターとジョーンズが志願するのと対照的。

戦闘で新たにジャクソンが死に、斥候達の精神状態は異常なものになる。捕虜を殺そうとする者と止めに入る者とのケンカ、酒に浸って上への文句を公然と口にする者。しかもこの斥候作戦が、シンク大佐の自慢のネタにするためのものだと判明した時、ウィンターズも上に反抗する。

そつがなく面白味がないが従順で忠実だったウィンターズが、意外にも作戦の偽装を命じる。呆気にとられた後、喜ぶ斥候達。士気の回復が目的なら、戦闘をしないという選択が正しかった。同時に起きた時限爆弾を仕掛けた敵指揮所の爆発は、兵達の怒りと喜びの感情の爆発にも思える。

兵達の気持ちを知らずに、無意味な作戦を命じる上層部へのささやかな反抗が示された後、米本土では生活が向上し、戦場の事など忘れかけられていたと入るナレーション。国民も上層部と同じ。そして戦線膠着の間の小競り合いやそこでの兵の死は、戦史家からも注目されていない。でもそこで生き、死んだ兵士がいた。
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バンド・オブ・ブラザース Vol.1(1、2話)
Vol.2(3、4話)
Vol.3(5、6話)
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2006年12月04日(Mon)▲ページの先頭へ
N・H・Kにようこそ! #21

【あらすじ】自作ゲーム『True World〜真実のセカイ』が完成し、自分達の名前が流れるスタッフロールに感動する佐藤達広と山崎薫。だが冬コミでは5枚しか売れなかった。
山崎「売れなくてもいいんです。東京で生きてたって証が残せれば」

山崎の引越し準備を手伝い、プルリンちゃんグッズ・食料・PCなど貰う佐藤。引越し当日、中原岬も三田ハウスの外で見送り。
山崎「佐藤さんの事をお願いします。…岬さん」
小野急の幾田駅まで見送った佐藤。
山崎「佐藤さんは負けないで下さいよ」
佐藤「お前!負けて帰るわけじゃないだろ!!」

山崎の居ない三田ハウス。佐藤は独りぼっちの寂しさから、地球にも宇宙にも自分一人しかいないと空想する。そして自分こそが宇宙創造の唯一絶対神だと悟る。だから不可能はない。山崎を念力で呼び戻そうとするが、山崎は現れない。
「山崎、何やってんだ。今すぐ帰ってこい、ヤマザキー!!」

12月30日、食事を持って来た岬が、カウンセリングの期末試験として初詣に行くと提案。大晦日、深夜の渋谷で人込みの中を歩く内、岬とはぐれてしまう。ビルの陰で動けなくなった佐藤に声を掛ける女性。
「佐藤…君?」
それは柏瞳だった。その頃、岬は佐藤を捜し回っていた。
「佐藤君には、もう私しか居ないんだから」

【感想】◎
ようやくゲームが完成したものの、全く売れずにやはり山崎は実家に戻る事に。山崎を介してのクリエイターへの道は閉ざされ、ひきこもり生活にリセットさせる佐藤。食事係とカウンセリングを続ける岬と初詣に出掛けるが、はぐれて柏と再会する。佐藤にとっての山崎の重要さを改めて感じさせる別れが前半。後半の試験は、ひきこもり脱出かどうかが、実は佐藤ではなく岬が試されているのだという構図が面白い。

シリーズ終盤の山場になると予想(#12)していた冬コミが、こんなにもあっさりと失敗で片付けられるとは。その虚脱感が、去って行く山崎の物悲しさと重なる巧さ。クリエイターへの夢破れ負けたと解釈するか、両親の都合で帰らざるを得ないだけと解釈するかの、山崎と佐藤の最後の会話シーンが胸を突く。

ここまでの雰囲気の出し方が実に上手く、完全に青春モノになっている。ひきこもりとキモオタでもこれが出来る、一般人と大差ないではないか、というこの番組で何度も繰り返された主張(特にシリーズ前半#5#6#8#9など)が最後まで貫かれる。

自分は神だとの妄想を抱きつつ、ゲームが売れなかった事実で「やっぱり俺達は負けたんだ」とか、山崎を超能力で戻せない現実に気付く佐藤。ひきこもり生活へ見事にリセットされる。(冬コミ処理にも驚いたが、クリスマスすら一気に飛ばす展開も驚愕)

山崎から佐藤を託され、変に気負ってる岬。なぜか、佐藤と仮デートした時(#7)にメニューを真剣に見ていたシーンを思い起こした。彼女にとっても佐藤との関係は自分へ自信を付ける訓練とも思える。創作活動にも良いという理由(#19)だった食事係を律義に続け、初詣にも連れ出す。

人込みでも平気かどうかを試す岬だったが、佐藤を掴えておく事が出来ず、その佐藤は#11同様、またしても柏とどこかに行ってしまいそうな気配のラスト。努めて佐藤と関係を持とうとする岬に対して、離れても運命的に佐藤と出会ってしまう柏。#16でも書いたが、岬はこれで自信喪失になったりしないのか。いよいよ岬と佐藤の関係が、柏によってクローズアップされそうな予感。
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2006年12月02日(Sat)▲ページの先頭へ
たったひとつの恋 #7

【あらすじ】「君には何もない」
神崎弘人(亀梨和也)に月丘雅彦(財津和夫)は言い放つ。
弘人「愛があります」
雅彦「それは若さゆえの情熱だ。ただの恋だ」
弘人「僕にとっては、たったひとつの恋なんです。俺の命と引き換えに菜緒が助かるなら、今すぐ差し出します」

神崎造船鉄工所の従業員:棚田(田口浩正)が通帳と印鑑を盗み、佐伯船舶からの入金200万を持ち逃げ。取り敢えず今週末の支払い30万の確保のため、外山電気・久良木金融・新井場エンジニアリング・シーモータルエンジニアリング・北洋技研工業・盤栄興業・海本工務店・古宇田自動車整備工場など取引先を回って金を借りようとする弘人。千葉の吉井さんから何とか30万を借りる。

大沢亜裕太(平岡祐太)のアパートに呼ばれた草野甲(田中聖)と本宮裕子(戸田恵梨香)。お互いに謝り仲直り。「おせっかいおじさんかよ」と自嘲し、コンビニと寂しく乾杯する亜裕太。

弘人と月丘菜緒(綾瀬はるか)は船の上で逢う。雅彦に会いに行った事、菜緒の体(子供産めない)の事を話す。その上で
弘人「アンタ以外の人と居る所、想像できないよ」
菜緒「弘人とずーっと居る事想像したら凄い嬉しい。嬉しすぎて死ぬ(笑」
じゃれあう二人。「楽しすぎて何か怖いね」

男から借金している神崎亜紀子(余貴美子)は雅彦と面会。菜緒と弘人の密会の隠し撮り写真まで見せる。
「お宅にとっちゃ、端金でしょー、100万や200万」
「ゆすり…ですか」
その頃、弘人と廉(齋藤隆成)は菜緒のクリスマスプレゼントのクジラの置物を作成中。菜緒は弘人の手袋を編み始める。

菜緒は風邪を引き、念のため検査入院。その間に菜緒の携帯電話契約を兄:達也(要潤)が止める。達也から菜緒の誘拐未遂を聞いた雅彦、そして月丘みつこ(田中好子)。みつこは病室で菜緒と話す。
「あなたのスキャンダルは怖い。スタージュエリーに傷は付けられない。あなたに骨髄をくれたお兄ちゃんを裏切らないで」
菜緒は翌朝に飲むカフェオレをみつこに買いに行かせる。
みつこ「明日の朝、飲むのよね」

菜緒は病室を抜け出し弘人に電話し、丘公園のガゼボの下で逢う。一緒に泊まろうと迫る菜緒。だが弘人は菜緒と連絡が付かず不安だった、でも今腕の中にいるから安心した、とただ抱きしめるだけだった。

【感想】◇
弘人側には工場の経営難、母親の揺すり。菜緒側には誘拐未遂の親バレ、携帯禁止、運転手兼ボディガード予告。互いの家の者は違った形で弘人と菜緒の自由を制限する方向に動く。弘人の雅彦への率直な訴えもこれらに撥ね返される一方、菜緒は一夜限りの自由を最後のチャンスと捉え、弘人と関係を迫る選択に出るのだった。

…と文字にまとめてみると、なかなか上手く包囲網が出来上がっている事に気付くわけだが、この番組の特徴である抑えた演出と、すぐには(その場では)劇的に動かない展開が続くので、見ている段階ではその包囲の厳しさをあまり感じない。だから最後の菜緒の行動も突飛に映るし、弘人の不安と安心の大きさもいまいち伝わってこなかった。

今回のキーワードは「怖い」と「先の想像」か。甲は医者の娘である裕子との先を想像して怖気づく。持ち逃げの件を菜緒に話さなかった弘人について亜裕太は「菜緒ちゃんに嫌われるのが怖い」と推測。弘人と菜緒は先の想像をし、一緒に居る事を確認し合うが、その幸せがいつか無くなりそうで怖い。スキャンダルが怖いとみつこ。菜緒と連絡が付かず何かあったのかと怖くなっていた弘人。

人は先の想像をし、不安に駆られるから怖い。月丘家の者は、今の状態が続く事を願っている。娘との交際は無理だと言う雅彦、弘人の家に乗り込んで会うなと言った達也。そして今回は菜緒の理解者と思われた母:みつこまでもが菜緒を諭す。なんとその内容は家を守るという最も外面的な理由だった。

みつこの説得が、感情の達也、事実の雅彦よりも力があった。菜緒の気持ちを十分に理解しながらも、母親としての立場、スタージュエリーの嫁としての立場、これまでの菜緒への家族の貢献を切々と言い聞かせるみつこ。「菜緒を守る」事が全てを守る事に繋がるとの論理。それは家族だから、スタージュエリーの家だから。

だがみつこは「命懸けで菜緒を守る」と語った弘人も高く評価している。その弘人の言葉の本気さは、菜緒が弘人に惹かれた事から証明されている。菜緒を本当に大切に思う心は、自分たち家族と同じくらい弘人が持っている。その気持ちに菜緒は惹かれたのだから。

そこまで分かった上で「もう会わないで欲しい」と言うみつこ。弘人より一枚も二枚も上手だ。だからこそみつこは、菜緒と弘人にチャンスを与える「余裕」を見せる。菜緒に病室を抜け出す意思がある事を察知しつつ、わざと包囲網に穴を開ける。朝までには戻るとの確約を取り付けた上で。みつこは恐ろしいほどの駆け引き上手。

劇中では「怖い」の感情を打破する展開も示される。甲の怖さは亜裕太の計らいで解消、そして菜緒は彼女自身の行動によって打破していく。楽しさ・幸せの時に感じていた漠然とした不安と怖さが、現実のものになって来た時、弘人との既成事実しかないと判断し、菜緒は迷わず弘人に迫る。駆け引き無しの直球の菜緒がみつこと対比される。

…で、そんな事情を知らない弘人は菜緒を抱きしめるだけだったが、事情を知ったら知ったで引いてしまうのが男のデリケートさ、か?菜緒とは何事も無く一夜を過ごしそうだが(笑)。でも菜緒は家族に何事もあったと虚勢を張る展開を予想するがいかに!あーでも既成事実って強いし大事かも(ぉぃ)
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