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【あらすじ】山崎薫の父が倒れ、実家へ一時的に帰る。佐藤達広は隣からアニソンも聞こえない自室でぼんやり過ごし、高校時代を思い出す。望遠鏡で星を見る佐藤。あの星の光が届く頃には自分たちは死んでいる。柏瞳は言う。
「私たちの人生って一体何の意味があるんだろうね」
佐藤「人の一生なんてゴミみたいなもんだよな」
中原岬「生きる意味を考えてみましょう」
ひきこもり脱出講義で砂山を足で踏み潰す岬。形ある物はいつか壊れる。
佐藤「ゴミ以下の時間の中で俺達は生きている」
山崎が三田ハウスに帰って来る。山崎がこの歳で専門学校一年生だった訳は、実家の牧場を継ぐ事、保険の人生設計に書かれたプラン(結婚・第一子・第二子・子供の教育・引退・死去)という敷かれたレールに反発したからだった。
「人の人生を勝手に決めつけやがって!神様にでもなったつもりかよ!」
地元の畜産学科を辞め、一年間バイトして上京し、仕送りなしで生活していた山崎。だが父はもう牧場で働けず、いよいよ家業を継がなければならない。冬コミまでの猶予はもらった。そこでゲームが評判になればゲーム作りも続けられるかもしれない。
「ラストチャンスです」
雪が降り、雪見酒をする佐藤と山崎。寒いから焚き火をする。
「やっぱり教科書はよく燃えるなー。まるでゴミみたいだ」
学校で使ってるプログラムの本を燃やす山崎。声優科の緑川七菜子を呼び出し、ギャルゲーだらけの部屋を見せ、その際の七菜子のリアクションを佐藤が撮影する計画を実行。ギャルゲー・フィギュア・同人誌、そして七菜子をモデルにしたHゲームを作っている事まで自白する山崎。
七菜子「確かにHなゲームとかは正直キモいとか思うけど、真剣に向き合ってる姿は男らしい。山崎君のそういう所、割と好きだよ」
予想外の展開ながら、山崎は追い討ちを掛ける。七菜子は頭大丈夫?な隠れギャルゲーマニア、触手いじられ願望の持ち主かと。七菜子は山崎を殴り付ける。
「死ね!キモオタ野郎。お前らなんか世の中から消えてしまえ!!」
去っていく七菜子。山崎は言う。
「最高の別れ方だったじゃないですか。これ以上ないドラマチックな別れ方だったでしょう?」
【感想】◎
倒れた父と残された母の生活を守るためという、家の都合により牧場を継ぐはめになった山崎の、冬コミにかける思いと、努力しても報われなかったクリエイターの夢が入り交じる。自暴自棄になって教科書を燃やす諦観、わざと七菜子に嫌われる事を言って別れるケジメの寂寥感が冬の日とよく似合う。
人生の意味という哲学的命題から人生設計、不確実な夢・恋愛、読みとは違う相手の反応、という小さな所までカバーしておき、決定的な暴言で終わらせて、やっぱり人生とは何かを考えさせる運びの巧さが素晴らしかった。
人の一生なんてゴミと思ってる佐藤は、だから自分の人生もゴミかそれ以下と考える。その、人々の一生の積み重ねと繰り返しが、山崎の家のような畜産家業を形作っている。でも岬の言うように、形ある物は壊れる。#5で山崎も牧場を継がないと宣言していた。だが先祖代々の家業はそうそう壊れなかった。砂山を足で踏み潰すようにはいかない。
山崎の作りかけの砂山は代々の砂山に飲まれる。保険の人生設計には、色々な人のこれまでの統計的な砂山の総体が書かれている。その例外となる新しい人生を歩むのは容易ではない。それでも予想外の事も起きたりする。山崎と佐藤の隣部屋同士の再会、佐藤と岬の出会い、山崎と七菜子の出会い。友情や恋愛は、新しい人生を一時にせよ感じさせる。
ひとつのゲームのヒットによる逆転の夢、カウンセリングによるひきこもり脱出、モテ子と付き合って二次元から脱却。しかし、素人ゲームが売れるはずもなく、怪しいカウンセリングも役立たず、恋愛幻想はより深い二次元へと誘う。後に残ったのはダメ人間同士の三田ハウスでのゴミな生活。必死に勉強した教科書の内容と、それを活かしたゲーム作りよりも、一瞬にして燃える教科書そのものの方が役に立つ現実。
形ある物はいつか壊れる。砂山は壊れると砂場になる。星は壊れてもその光は長く残る。教科書は燃えて体を温める。形にもなっていないゲーム作りは時間と労力の無駄。
どうせ決められたレールしか進めないのなら、最後にやりたい事をやってしまおう。24時間監視のゲーム作り、七菜子との酷い別れ方の演出。だがゲーム制作は思うように進まず、何より七菜子は最初、思った通りの反応を示さない。彼女もまた、一時の夢を見ている人間だったから。
山崎は七菜子の夢を壊さないために、敢えて最悪の言葉を投げつける。敷かれたレールを歩むのは自分だけで充分。七菜子と最悪の別れ方をする事が、未練を断ち切り、七菜子を逆に傷付けない最高の別れ方となる。
去っていく七菜子に涙が一瞬映り、七菜子が好きだった山崎は涙をこらえる。実はその涙こそがゴミではない人生の意味であり、砂山よりも星よりも壊れる事の無いものだったりする。
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