テレビ批評的視聴記 - 2006/11/12

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2006年11月12日(Sun)▲ページの先頭へ
その時歴史が動いた:柳田国男

【あらすじ】柳田国男は兵庫で生まれ茨城に移り住み、東京帝国大を出て農商務省に入省。明治後半になると日本は、西洋風の華やかな消費生活を謳歌していたが、農村は貧しいままで、柳田は農政官僚として豊かさを享受できる農村、農民が自立できる農政を目指していた。

宮崎県椎葉村を訪れた柳田は、焼き畑を目撃。1年目そば・2年目ひえやあわ・3年目あずき・4年目大豆・5年目は地力回復という山間部で生き抜く知恵を知る。しかも土地は共有財産で「富を均等配分するユートピアだ」と柳田は感心する。また、山の神からの授かりものとされているイノシシは、狩りをしてよい方角が日によって違い、獲り過ぎを防ぐ知恵がある事も知る。

岩手県遠野市出身で早稲田大文学部の佐々木喜善から、遠野の民話を聞く柳田。山の神・家の神・山男・山女・天狗・河童などの言い伝えには具体的な地名や名前が語られており、興味を持った柳田は明治42(1909)年8月に遠野を訪れる。そして伝承が人々の生活に息づいている事を知る。だが、画一的で急速な近代化が農村の伝統的生活文化を捨てさせている事にも気付く。

明治43(1910)年6月14日、柳田国男は『遠野物語』を出版。「現在の事実なり」「願わくばこれを語りて平地人を戦慄せしめよ」と記す。ここに、庶民の歴史や営みに光を当てる日本民俗学が誕生した。その後柳田は「郷土研究」創刊、「民間伝承の会」(後の日本民俗学会)を発足させた。

【感想】△
農政官僚として近代化を推し進める立場にあった柳田国男が、土地の言い伝えや教訓を守って生活している農民と接し、彼らの生き抜く知恵に感心し、西洋化で無くなりつつあるその生活を世に知らしめるため、遠野物語を出版したその時。日本人による日本人の発見と言われている。

柳田が、農政官僚で農村改革推進の立場から、全く逆の古くからの生活を守る人々の擁護に転じた所が面白味のある部分なのだろう。しかしながら、番組を観ても特に思う所も無く「へー」という感想しか出てこないのはなぜか。伝統と近代化という対立軸にあって、農民が目立った反旗を翻したわけでもなく、柳田が遠野物語を出した所で農政が劇的に変化したわけでもない辺りが原因か。番組的に山場がない。無理に(捏造してまで)山場を作る必要もないけど。

柳田が出会った椎葉村の人々も、佐々木喜善も遠野の人々も、特に主張があったわけではない。ただ昔からの生活を守っていただけ。柳田はそんな声無き人々と、農政近代化・都市化という進みつつある現状の両方を知り得る立場にあった。失われていく先祖の知恵・伝承を残し、近代化へのアンチテーゼも込めて遠野物語を出したのだろうか。

だが、近代化の荒波に飲まれてしまった事は今日の状況が示すとおり。日本民俗学は学会内に留まり、「現在の事実」は過去の記録になってしまった。結局、伝承による生活文化は効率と科学の近代化に太刀打ちできなかった。

しかし最近、郷土愛や自然を大事にする心、つまり「愛国心」がいわれ出している。日本らしさを守り美しい国を目指すこの動き、民俗学を利用する事はないのだろうか。郷土での生活と伝統文化を守る心が国を愛する(大事に思う)心に繋がるって本当か。「平地人」が生み出した聞こえの良い連想言葉の気もするが。

あと、解説者:立松和平が都市化・画一化を嘆いていたが、都市伝説という新しいものも生まれているわけで、古い物だけが民俗学ではないとも思う。
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遠野物語
図説 遠野物語の世界
日本民俗学の源流―柳田国男と椎葉村
柳田国男のえがいた日本―民俗学と社会構想

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