テレビ批評的視聴記 - 2006/10/26

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2006年10月26日(Thu)▲ページの先頭へ
たったひとつの恋 #2

【あらすじ】神崎弘人(亀梨和也)の工場へ上着を返しに行った月丘菜緒(綾瀬はるか)。
「うそつき」
「残念だったね、慶應の学生さんじゃなくて」
弘人は代金を取って来るが、菜緒は帰ってしまう。本宮裕子(戸田恵梨香)にも弘人達が嘘を付いていたと話す。だが裕子はクリスマスまでの繋ぎとしてキープを提案。大沢亜裕太(平岡祐太)の横浜自動車整備専門学校へ菜緒を連れ出す。亜裕太はバイト先のハーバーカフェで二人に謝る。

亜裕太は菜緒の連絡先(横浜市西区みなとみらい7-3-2 MMシティータワー4517)のメモを弘人に渡す。弘人の工場は赤字続きで従業員にボーナス払えず、水商売の母:亜紀子(余貴美子)は従業員から嫌味を言われたと泣く。弟:廉(齋藤隆成)のぜんそく日記を付ける弘人。
「廉が海賊船の船長なら、命を奪われても惜しくない」
菜緒の事を思い出さないようにしていた弘人だったが
「うそつき、の言葉は冷たい水に入れられた氷砂糖のように溶けなかった。どうしても心に残り、沈む」
タワーに金を持って行き、受付に渡して帰る弘人。

夕食後、母:月丘みつこ(田中好子)から封筒を渡された菜緒。中には一万円のみ。兄:達也(要潤)がストーカーだと冷やかす。再度カフェに行った菜緒は亜裕太から弘人に返してもらおうと封筒を渡す。亜裕太は天神祭りに菜緒と裕子を誘う。待ち合わせ場所には草野甲(田中聖)、そして弘人も来ると知って帰ろうとする菜緒だったが、弘人が到着。祭りを楽しむ裕子らと対照的に気まずい雰囲気の菜緒と弘人。

弘人はクリーニング代が分からず一万円を入れたと話し
「嘘付いてて悪かったな。ゴメン……なさい」
弘人を許した菜緒は光るヨーヨー釣りでオレンジのイガイガを取ってとねだる。弘人がもう少しで釣り上げようとした時、何も知らない裕子が邪魔してイガイガは水に落ちる。
「お前、何すんだよ」とじゃれ合う。
「何だこれは。心が凍った」菜緒は嫉妬。

「私、やっぱりあのオレンジの欲しい」
菜緒の駄々に、誰もが弘人は怒ると思ったが、意外にも弘人はもう一度ヨーヨー釣りに向かう。その間に獅子舞いを見に行く裕子達。戻った弘人が菜緒に渡す。
「つーか、ガキかよ、そんなもん欲しがって」
「あなたが取ってくれたのだから欲しいんだよ」
「俺も、あんただから取ってきたんだけど」
後ろ向きに手を差し出す弘人。菜緒はその手にイガイガを乗せる。
「違うだろ、はい」
菜緒と弘人は手を繋いで獅子舞いを見に行く。

弘人の家から菜緒の家が見えると知り、夜9時にバルコニーから光るイガイガを振る菜緒。その光を見つける弘人。弘人も懐中電灯を振って応える。翌日、雑誌「FREA」のセレブな暮らしの記事で、月丘家が全国36店舗の元町スタージュエリー経営だと知る弘人。そこには菜緒の写真もあった。

【感想】○
あー、くすぐったい。こそばゆさを解消するため、あのオレンジのイガイガ君で全身を掻きむしりたい気分(笑)。今回のドラマは、前後の文脈よりもその場のトキメキやもどかしさを重視しているように思えた。冷静に振り返るとおかしい点もあるが、とにかく胸をキュンとさせる演出力は発揮されていて、だったら良いんじゃないかと思わせてしまう。

視聴率が悪い(1話12.8%、2話10.4%)とか言われてるが、強力な裏番組を気にせず観た人にだけこの赤面な感情を呼び起こす訳で、あまり他人にベラベラ勧めたりする性質のドラマではないからかも。知ってる人だけ知ってる感じで今後も行けば。それがゴールデンタイムに相応しいかは別として。

身分の嘘がばれて開き直る弘人。ショックで帰ってしまう菜緒だったが、裕子は可笑しいと言ってあまり怒らない。そして繋ぎとして関係をキープしようとする。嘘を付いた人と関係を維持する理由付けとしては説得力がない。裕子は前回のハロウィンで行けなくなった分、皆でたまに遊ぶくらいの仲なら良いのではと思ったとか、弘人以外の亜裕太や甲がどう出るか知りたかったとか、菜緒が本当は弘人と仲良くなりたいと思ってる気持ちを察してこの説明をした、という好意的解釈をするしかない。

菜緒は嘘をつかれた事よりも、慶應の学園祭に行けなくなった事がショック、せっかく服も買ったのに…などと説明されていて、裕子も菜緒も気にすべき論点がズレてる人なのかとも思ってしまう。この段階では二人とも恋愛意識が一番ではないと制作側は言いたいのだろう。裕子は面白い男の子達との友達感覚、菜緒は制服の可愛さで志望高校を選ぶような、中学生レベルの子供っぽさを強調したいのか。

カフェで亜裕太は誠実に謝る。甲にも悪気はなかったと知る。一方の弘人は謝っていない。そしてボーナスが払えないと従業員に謝る弘人の様子。「謝る」がキーワードとして浮かび上がる前半。弘人が「うそつき」の言葉が心残りと独白するのも、謝っていないからと分かる。

だが弘人は高層タワーに気後れしたのと、自分の工場や家族に立ち入って欲しくないとの気持ち(の適用)があるため、菜緒の家に出向いて謝る事が出来ない。それが手紙も無い一万円となる。それを渡された菜緒の「金の問題か?」という再度のショックがもっと強く描かれるかと予想したが、家族が居る手前、その様子は抑えられていた。

負い目の弘人と困惑の菜緒は祭りでも気まずい。だが、弘人がやっと嘘を謝った事で菜緒は許す。その後の光るオレンジのイガイガのシーンが独特。オマエと言われて「そんなに仲良くないし」と否定した菜緒だったが、裕子をオマエと呼ぶ弘人に嫉妬してしまう。嫉妬というと「炎」が慣用句的にあるが、水をキーワードに据えるこのドラマでは「心が凍った」と表現。普通の「心が凍る」という意味とは逆に使われている。

また、前回からの「水と魚、釣り」というキーワードで考えれば、ここは金魚すくいをやるのが自然とも思うが、光るヨーヨーだったのは、その後の互いの家のシグナルに使われるからだった。北川悦束子脚本もこの演出の犠牲になったか。また、オレンジのイガイガは刺がありそうでいて柔らかく、中身は光ってるという弘人そのものを表わしているのかもしれない。

手を繋ぐまでのシーン、一万円よりも謝罪やイガイガを取って来る優しさが大切だったという菜緒の気持ちが良く表現されている。最初、イガイガを弘人の手に乗せてしまうのも、実はイガイガ自体への拘りが薄かったのと、手を繋ぐ事への躊躇も合わさっている。

菜緒のイガイガへの拘りは裕子を見ての嫉妬だが、嘘の件を謝罪され、クリーニングの一万円も解決し、よく考えると菜緒と弘人の繋がりはこれで切れてもおかしくない状態に置かれての、菜緒の焦りとも捉えられる。そう考えると弘人の気持ちを菜緒が試したと言える。焦りが強かったので、意図的に試した訳ではないが。

以上、嘘を気にしない裕子、嘘より服が大事な菜緒、実は謝っていない甲、金の問題が浮かび上がらない不発、光るオレンジのイガイガという小道具重視の演出…などなど不自然な点は多々あるが、それを全部帳消しにする弘人と菜緒の不器用でありながら最後には真っ直ぐになるやり取り。その場その場の赤面モノのシーンの力は何なのだろう。亀梨和也と綾瀬はるかの演技力か、抑えた演出力か、小さく遠い伏線が繋がる脚本の力か、まだ良く分からない魅力がこのドラマにはある。

あんまり関係ないが、この祭りのシーンは群集がエキストラっぽくなく、実に自然で、本当の祭りの中で撮影しているようにも感じさせられた。その後の花火や空撮など、やっぱゴールデンドラマは金が掛かってる。だから視聴率は大事なんだけどさ。
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