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【あらすじ】「あの…、死ななくて良かったね」
砂浜に座り込む佐藤達広に声を掛けた中原岬。佐藤は思わず拳を振り上げる。岬はその場にうずくまる。もう一度、拳を振り上げる佐藤。
「やだー!」
頭を手で覆い怯え切っている岬。佐藤は今度こそ殴ろうとする。
「もうやめて!」
泣き出す岬。佐藤は拳を砂に叩き付ける。
「俺は、もっと怖かったんだ」
城ヶ崎彰のクルーザーで無人島を後にした一行。旅館の人が待っていた。城ヶ崎の計らいで温泉に浸かる事に。掃除の爺さんが、本当に死んでいたらヨットハーバー関係者や漁師、旅館の客足などに影響したと語る。
「自分の都合だけで命を捨てて、他人に迷惑を掛ける阿呆どもの愚かしさが分かったか」
野村と草野の家族が迎えに来る。野村をぶつ母親、草野をなじる両親。一段落してソファーに座る佐藤に野村が言う。
「悲しむ人間がいる間は、死んじゃだめだ」
草野は佐藤にオンラインゲーム:アルティメットファンタジーの無料パスを渡す。RMT(リアルマネートレード)で金を稼げるらしい。野村と草野は帰っていく。
部屋に戻ると山崎薫は大事な用で、中原岬はいつのまにか帰ったと城ヶ崎。旅館を出て柏瞳が、佐藤を巻き込んだ事を謝る。
「いいんスよ。気にしないで下さい。お幸せに。先輩」
駅まで佐藤を送ろうとした峰岸だったが、息子が母に言われて迎えに来ていた。また家族でやり直そうと言われ涙する峰岸。佐藤は一人で電車に乗り、幾田駅に帰る。自宅ドアポストに中原岬からの手紙。
「いつもの時間に いつもの場所で 待っています」
「佐藤さーん、生きてますかー」
酔った山崎がコミケから帰り、体験版3000円が全く売れなかったと恨み節。佐藤はそんな山崎を置いて公園へ。岬は契約書コピーをかざし、無断欠席と自分が住所を教えなかった件でチャラに。また明日から講義を再開すると告げる。
「何、勝手に決めてんだよ!」
コピーを乱暴に取り上げた佐藤。岬はまた泣き出す。
「良かった、佐藤君が帰って来てくれて。 おかえりなさい」
「……ただいま」
【感想】◎
オフ会の自殺は食い止められ、当事者達のその後を描く。両親に迎えられる者、恋人と結婚を決める者、家族と和解する者。だが巻き込まれた形になっている佐藤には誰も迎えが来ない。山崎は夏コミに、中原岬は何時の間にか居なくなる。周囲が理解する佐藤の状況と、佐藤の心の内とのズレが丁寧に描写されている。結局、自分を理解しているとは言い難いものの、佐藤は岬との待ち合わせ場所に落ち着いてしまう。
冒頭での岬の無神経な言葉は佐藤を激怒させる。岬もどう声を掛けて良いか迷った末の、事態を重く考えないようにとの優しさだったと気付く余裕も無い佐藤。そして拳に過度に反応し怯える岬。一度目はわざとらしいと判断した佐藤は再度、拳を上げる。怯え切る岬に本気を感じ取ったものの、振り上げた拳の落とし所も無く、また殴ろうとする。泣き出した岬を殴れず砂を叩く。
このシーン、何もセリフで説明されてないのに、岬が父親から虐待されていたと連想させる。岬の境遇を明かさずに、普通の女子高生ではないと思わせる演出がずっと続いている。そして岬の境遇を突っ込まない佐藤から、他者を考える余裕の無さも描き続けている。
湯船に浸かる峰岸・野村・草野と、洗い場にいる佐藤で微妙な立場の違いを描写。女湯にいる柏とはもっと距離がある。柏は途中で城ヶ崎とドライブに抜け出すほど立ち直っている。掃除の爺さんが、前回よりまともというか、当事者以外の立場で自殺の愚かさを諭す。佐藤と他のメンバーに距離はあるものの、死んでしまえば他人から見れば一緒なのだ。
野村や草野の家族の出迎えを見ている佐藤。本当に死のうとしていた者には助かって安堵する家族が居た。自分には誰も来ない。山崎も岬も帰ったという。そして柏は城ヶ崎と共に帰っていく。オフ会追跡に始まりクルーザー・旅館を手配したり家族を呼んだり、城ヶ崎のあまりの器用さ手際の良さに、逆に不安になる柏というのも分からないでもない。
柏は佐藤の孤独を心配し、また会う約束をしようとした様にも思えた。だが佐藤は幸せを掴んだ柏に自分が関わるとロクな事はないと思ったのか、強がって別れてしまう。柏は後ろ髪を引かれる思いで城ヶ崎の車で去る。そんな佐藤を気遣って峰岸が駅まで送ろうとするが、峰岸にも迎えが来て、佐藤は本当に一人になってしまう。
夏コミで体験版が売れなかったのを価格のせいでなく、ユーザーのせいにする山崎。彼もまた他者との距離の取り方の不器用な人間ではある。だが今回の佐藤の自殺騒動を、岬に追い込まれ、柏にそそのかされた結果だと受け止めている。自殺もアリと思った佐藤の心の内など知る由もない。「生きてますかー」も本当に佐藤が死ぬと思ってないから言えるセリフ。
なぜか岬に会いに行ってしまう佐藤。岬は今回の件はチャラにし、普段通り講義を続けると一方的に通告。岬が一番分かってないと再度怒りが込み上げる。だが岬の泣く顔を見てしまう。岬との印象に残った今までの会話を思い出す佐藤。岬はなぜ泣くのか。自分を必要とする本当の理由が別にあるのか。
そして野村の言った「悲しむ人間がいる間は、死んじゃだめだ」。佐藤はまた引きこもり人生へと戻って来る。自殺騒動に巻き込まれたのでも、自殺を強く望んだのでもなく、ゲーム作りにも身の入らない、他人からは理解されない曖昧な引きこもりの状態に。岬の涙など何の解決にもならない。だからこそ佐藤の居場所は、同じく解決にならない岬の「ひきこもり脱出講義」にしかなかった。
…さて、佐藤に掛かって来た母:静枝の電話。内容は聞こえなかったが、その時、バックでサイレンが鳴っていたので、父:達男が事故に遭って仕送り不能になったか。予告での「働きなさい」はそういう事かと。で、草野のオンラインゲーム「ヴィナテーロで逢いましょう」で稼ぐ展開になるのかな。
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