テレビ批評的視聴記 - 2006/09/07

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2006年09月07日(Thu)▲ページの先頭へ
黒い太陽 #6

【あらすじ】立花篤(永井大)はキャスト充実のため、幼馴染みの桜井久美子(杏さゆり)をスカウトしようかと考えるが思い留まる。他の女を金で釣り、新人を続々入店させ、衣装を工夫し、料金も下げたミントキャンディ。それでも売上一位になれないため、黒服の嶋を解雇し給料も5%カット。

三宅川(峰岸徹)が来店し1000万を返す立花だったが、利子がないと杖で殴られる。最近アフター・同伴を断っている千鶴(井上和香)を問い質すが千鶴は
「あたし、出会った頃の立花君が好きだった」
と言う。スカウトマン:ケン(田中要次)に若い衆でピンクソーダを荒すよう依頼する立花。ケンは「お前、真っ黒だな」と断る。千鶴は社長:藤堂(伊原剛志)に辞意表明するが、原因は立花だと言い当てられる。

イメッ娘学園店長:神崎(渡邊邦門)は自分も噛ませ犬の1人で、長瀬(菅原卓磨)には勝てないと明かすが、立花は諦めない。休むと連絡のあった千鶴宅に行った立花は、今日が両親の命日だと知る。店に戻った立花に黒服の反乱。笑子(酒井若菜)と関係を持った掟破りを責められ、大滝(吹越満)を店長に据えると。暴行も受けた立花はゴミ捨て場行き。

開店後、大滝が指示を出し、笑子は干されて店を辞める。三宅川から電話を受けた立花はフラフラで三宅川邸へ。立花の役目は終わりホール長に降格だという藤堂との話を隣室で聞かされる。藤堂に一泡吹かせろと命令する三宅川。千鶴は藤堂が代議士も参加の非合法地下パーティにホステスとして潜入。立花はそれをネタに藤堂に辞職を迫る。

だが、千鶴は藤堂に立花の計画を教え、赤坂三丁目ダイヤモンドローズビルはもぬけの殻。立花をクビにし、財布にあった40万を退職金として投げつける藤堂。這いつくばって拾う立花。笑う藤堂、泣く千鶴。立花はピンクソーダの長瀬を殴った後、姿を消す。

一年後、ミントキャンディはキャストもスタッフも代わり、今は大西(田辺伸之介)が店長。千鶴は不動のNo.1。そして吉祥寺のキャバクラ。そこで働く立花。その店のNo.1は笑子。

【感想】○
店の経営をどう頑張っても長瀬には勝てない立花が、次々と汚い手段に手を出し、耐え切れなくなった周りの人間から反発を食らい、信じていた人にも裏切られ、今まで築き上げてきた全てを失うまでを描く。非常に解釈の難しい回で、特に千鶴の真意は見方によって異なり、その解釈次第で全体評価も異なって来るのでは。

立花の経営手法は前回からさらに過激になり、新人・低価格・解雇・人件費カットなどで店の経営基盤は極めて不安定。これでは働くキャストとスタッフに動揺を与えるばかりで、売上不振と後の反乱への伏線となったのだろう。実際、三宅川への利子も払えないほどだったのだから。

この余裕の無さが、立花の焦りをさらに駆り立て、ピンクソーダ殴り込みへと繋がる。三宅川からの暴行、黒服反乱とリンチ、長瀬を殴るなど、暴力シーンの連鎖。最後に自暴自棄で路地裏で狂ったように暴れる立花。暴力のやり場も無くなる哀れなバッドエンド。

この暴れるシーン、立花が受けた数々の屈辱を所々回想で流しながらというのが普通の演出だと思うが、ずっと立花を映す事でその絶望を描き出していた。回想シーン挿入で絶望を増幅させるのではなく、永井大の演技力に賭けた制作側の意図的演出が面白かった。それに応えた永井大も。

今回のキーワードは「リセット」だと思う。千鶴の真意は、出会った頃に戻って欲しいというものであり、ただ藤堂と同じ道を歩もうとしている立花の目を覚ます意図があった。それが予想外の反響となってしまい、取り返しのつかない事をしたと後悔するも後の祭り。

千鶴は今までに何度も警告を発していながら、それが立花に届かない事に失望していた。仕事にも身が入らなくなり、アフター・同伴も断り出す。しかし辞意を藤堂に伝えた時、「逃げの人生」「強く生きろ」と言われて思い直す。立花の変化を止められないから自分が辞めるのではなく、立花を辞めさせてでも変化を止めようと。

ただ、本当に立花を辞めさせようと「売った」のではない。藤堂がいきなりクビを宣告するのも、立花が消えるのも千鶴には予想外だった。立花の目を覚まさせ、リセットしようとしただけの千鶴は、この結末に驚くだけでどうする事もできなかった。

立花を止め、リセットさせようとの意思は他の人からも読み取れる。ケンは立花に一線を越えさせない。神崎は自分も噛ませ犬だと明かし、出来レースだからこれ以上の努力は無駄だと諭す。黒服達も自分達が上だと下克上を起こし、立花が入店したての頃に戻るよう暴力で伝える。大滝が店長というのもリセット。藤堂も立花をホール長に戻すと話している。そして三宅川ですら「一泡吹かせろ」と命じただけで、藤堂を倒せとは言っていない。

周囲の人は敵味方・程度の差こそあれ、立花が黒い太陽になる事を望んでいない。それを読めなかった立花が舞台から去っていくのは、必然的帰結だったのか。分かっていながらもプライドがそれを許さなかったのか。

さて今回も大滝と笑子の2つの衛星から立花の状態が分かるようになっている。大滝は前回は忠実な部下だったのに、今回は店長にとって替わった。二人の関係は最初に戻ったが、それは立花の店での努力が水泡に帰した事でもある。

一方の笑子は、どこまでも立花に付いていく。ただの黒服とキャストに戻るような事はしない。これまでバランスを取っていた2つの衛星は完全に別方向へ進み、黒い太陽の立花の終わりも意味する。ただ、笑子も立花を一人の男として付いていっており、黒服立花の経歴否定という点では大滝と一致する。

複雑なストーリーにあって、笑子だけが一途で分かり易い行動を取っており、どうしても笑子に感情移入してしまうのはそこが原因ではないかと。暗い過去を隠すための表裏一体の笑顔さえ分かってしまえば、笑子がただのバカ女ではないと理解できる。そしてバカ女役では天才的演技を見せるとウィキペディア酒井若菜の項にも書いてある通り、酒井若菜はこの役がハマリ役だ。
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