テレビ批評的視聴記 - 2006/06/27

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2006年06月27日(Tue)▲ページの先頭へ
吉祥天女(最終回)

【あらすじ】叶小夜子(岩田さゆり)が遠野涼(松尾政仲)を好きなのではと問い掛けた麻井由似子(桐谷美玲)は、逆に小夜子から涼が好きなのではと返される。由似子の男嫌いは完治。風呂に入る小夜子に小川雪政(井田國彦)は、このままでは叶家の土地は全て涼のものとなり叶家は滅亡だと忠告。

猟銃を持って小夜子狙撃を目論む涼だったが、決心がつかず実行できない。翌12時に小夜子を学校屋上に呼び出し銃を構える涼。
「私は自分の家を守ろうとしただけ。それが私がこの世に生まれてきた意味。それが宿命」
「お前は自分のした事の罪を償うんだ」
一旦は銃を下ろした涼だったが、遠野暁(池田努)の亡霊が撃つよう命じる。銃は暴発し命を落とす涼。雪政が銃に細工していたのだ。
「暁のやつ、やっぱり俺を手放さないつもりらしい」

遠野家では今井久子(渡部彩)らが去った後、涼の死体と話す小夜子。
「俺、お前が好きだった」
「知ってたわ。私もあなたが…」
唇を軽く合わせる小夜子。「さよなら、涼」
「美しきもの。恋しきもの、死にし男」
海を見ながら涙を流す小夜子。

麻井鷹志(村上幸平)は吉祥天女の絵を描き上げ小夜子に贈る。小夜子は長野に戻る事に。涼の妹:水江(大窪汐里)は叶家の養女となり、遠野建設も叶家が受け入れる。鷹志は小夜子への疑惑を口にするが雪政にあっさりとかわされる。小夜子を見送る麻井由似子と大野真理(水崎綾女)。

【感想・総評】◇
小夜子への不信が頂点に達した涼は暁の命令もあって小夜子を撃とうとする。だが銃の暴発で落命し、叶家は土地を守り切り、遠野家を滅ぼす。土地を廻る両家の争いの中、互いに惹かれ合った小夜子と涼だったが、その恋は叶わず死に別れ(個人的には最後の小夜子のキスで涼が生き返ってハッピーエンドで良かった気もする。そうでないと天女との関わりが薄すぎ)。

…と書いてまとめてみると、要するにロミオとジュリエットなのだが、劇中から受ける印象ではそんな感じはしなかった。「自分の家を守ろうとしただけ」との小夜子のセリフは建前の言い逃れに聞こえるし、対する涼は土地の事など頭に無く、魔性の女:小夜子を抹殺するか否かで苦悩していたから。

この、両家の争いよりも、小夜子の行為と涼の葛藤(小夜子の心を信じるか行為を断罪するか、存在を否定するか)が焦点となった事で、この作品を最後まで小夜子と涼の心理劇にする事には成功したものの、同時に分かりにくさをも生んだ結果となった。

#1で小夜子(女優)岩田さゆりが天女降臨wしたが、叶家の跡目を継がせるための登場。しかし#2の担任教師:根津(神保悟忠)の死は両家の争いとは直接的関連性は全く無い。自分の置かれた役目への小夜子の反発と解釈するしかない。

#3の大沢(山根和馬)も関連性は薄い。しかし#4と併せて考えれば、大沢を利用した暁と、大沢を利用して涼の気を惹こうとした小夜子の構図となり、この辺りから小夜子と涼の心の動きが中心テーマへと一気に浮上した。

だが#5で涼の存在は霞みがち。また、父:叶靖(谷本一)への仕打ちは小夜子の立場を危うくするものにしか見えない。自分が前面に立って両家の争いに入って行くとも解釈できるが。

前回の結末予想で銃の暴発が当たったわけだが(あれだけ可能性を列挙すれば、どれかは当たるわな)、いったい雪政がどの時点で銃に細工したのか、それを小夜子が命じたのは何時なのか。やはり#6で両家の人々が集まっていた時にこっそり…と考えるのが自然か。とすれば、キジ狩りで銃が暴発し一郎死亡との恥ずかしいほど外れた執筆者の予想も、大外れではなかったのか。

しかし#7で一郎はその銃の手入れをしている。細工がバレても不思議ではない。また、その銃を涼が使おうとしたのだから、細工してあればこの回で涼が死んでもおかしくなかったと言える。一郎を殺すのが暁か涼か、小夜子の狙いはどちらだったのかという疑問は解消しない。

小夜子と涼が結ばれない決定的な原因となったのが#8の浮子(北川弘美)の死だった。暁の死の現場に涼も居合わせたため(一郎の死の現場との対比)、涼の小夜子への疑いは晴れそうだったのに、浮子を小夜子が殺したと知って裏切られた涼。最終回の「自分の家を守ろうとしただけ」は、叶家の土地を手放そうとした浮子に対してやった事だとの言い訳なのか。

#9で再び猟銃が出て来るが、この段階では細工は完了している。#6で細工がなければ、涼の心を取り戻せないと知った小夜子がここで細工を指示したのか。#8では雪政に遠野家を調べるよう命じているし。

以上、銃の細工がどの段階でなされたのかによって、その暴発が一郎に向けられたものか涼に向けられたものか考察し、そこから小夜子の涼への本心を探ろうとしてきたわけだが、2つの解釈が可能で判然としなかった。

というか思春期においては、大人になって行く自分の立場・体と、純粋でいたい自分の心のバランスは非常に不安定で、思いとは裏腹の行動をとったり、その思いで突き進んで取り返しのつかない行動をとったりするものだ(暁が象徴的)。

この「吉祥天女」での小夜子の全体を通しての行動も、最終回での涼の行動も、思春期ならではの心と体のバランス崩しと結論付ける事は出来る。どちらが本当・嘘ではなく、どちらも本当。それを選べないのが思春期。選んで行けるようになり、どちらかを捨てたフリして詰まらない大人になっていくのだ(←フリが重要だよw)。死んだらお仕舞だけど。

(追記)
麻井鷹志(村上幸平)の役割は、#4で解釈した「欲望の男:暁、理性の男:雪政、それらとは異なる男:涼」に更に付け加えるべき「芸術の男」ではないかと。鷹志は小夜子を芸術の対象物として見ようとしており、転じて最終回では第三者的役割をあてがわれる事になった。視聴者目線の代表が鷹志となるラストシーンは唐突な気もしたが、上記のように考えれば理解できるかと。

あのラストで小夜子に人を超えた力があったのか、小夜子が全ての犯人なのか、という疑問を鷹志と視聴者が共有し、鷹志は視聴者の代わりとなる。鷹志の事件への関与の薄さと、視聴者がドラマに干渉できない点も合わさって。小夜子、または涼に感情移入していた視聴者は、傍観者的な鷹志によってドラマ世界から現実世界へと引き戻され、ドラマの終わりを告げられる。
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吉田秋生の原作コミック
吉祥天女 1
吉祥天女 2
吉祥天女 3
吉祥天女 4

ノベルズ
吉祥天女(1) 小学館文庫
吉祥天女(2) 小学館文庫

CD
GOD SISTA:LISA(ED曲「It's On」のPV付)
吉祥天女 イメージ・アルバム

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