テレビ批評的視聴記 - 2005/12/31

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2005年12月31日(Sat)▲ページの先頭へ
プロジェクトX最終回SP

【あらすじ】「地上の星たちへ」無名の日本人達の闘いのドラマ。6年間に200本以上を放送し、5000人以上に会った当番組。ナレーター:田口トモロヲ「行間を大切にして、観ている人達に想像してもらいたい」“トモロヲ節”と呼ばれた。

テーマ曲「地上の星」は124万枚の売上で147週連続でヒットチャート100位以内を記録。歌った中島みゆき「私が光を当てるのではなく、この人達に光があるんだ」。そして2002年の紅白歌合戦で「プロジェクトXにお礼の意味で」黒部ダムから初出場。

第一回「富士山レーダー」、最も反響の大きかった第二回「VHS」。世界30ヶ国で放送され、教科書にも採り上げられている。子供に見せたい番組4年連続一位。

スタジオゲストの顔が良いとの声多数。「青函トンネル」「南極越冬隊」「電気釜」「伏見工業ラグビー部」「心臓バチスタ手術」「ホテルニュージャパン火災救出」「瀬戸大橋」…。

山口良治、高野甲子雄、須磨久喜をゲストに迎え、他の回をどう観ていたのかを聞く。
「私とは立場が違う」
「私には出来ない」
「色んな乗り越え方がある」
「私達が特別な人間ではない」
101スタジオで中島みゆきがヘッドライト・テールライトを熱唱しフィナーレ。

【感想】◇
今までの高評回ダイジェストを織り込みつつ、番組に係わった人達の話や視聴者の声、ゲストのコメントでの大総括の最終回。この番組が果たしてきた実績を強調する自画自賛モード全開だったが、その意図する所は「打ち切り」への現場からの抗議だったのだろう。

相次ぐNHK不祥事の責任を、一時期「看板番組」とまで言われた当番組をスケープゴートにする事でかわそうとしたNHK。公共放送で一民間企業を採り上げる不公平性、中島みゆきの“疑惑の時差”つきの紅白生中継、淀工合唱部の警察出動捏造などなど、この番組の問題点を最大限に利用されての打ち切り。

番組中、何度も繰り返された「無名の日本人達のドラマ」というフレーズ。我々はそこに焦点を当てて逆境をバネに成功をつかんだ人々を紹介したのだ…というメッセージ。だから個別の企業宣伝には該当しないのだと。

そしてドラマの中の人達もまた、特別な人ではなく普通の人である。だから市井のサラリーマンが自分の事に置き換え、感動し、励まされ、明日への活力をつけ、CDも売れた。視聴者の皆様の支持があったから6年も続いてきた。正に「皆様のNHK」を具現化していたのがプロジェトXなのだ。それが終わるのは、決して視聴者の皆様の支持を失ったからではないのだ…と伝えたかったのだろう。

【総評】○
この番組がドキュメンタリーとして異色で画期的だった事は誰しもが認めるだろう。淡々と事実を伝え、極力編集の跡を感じさせないようにするのが一般的なドキュメンタリーだが、プロジェクトXはそこにドラマ性を前面に押し出して世に問うた。

心動かされる曲に始まり、OPでの字幕を使ったダイジェストと文字の多様なアニメーション効果。説明的で冗長になりがちだったドキュメンタリーのナレーションにあって、間を充分に置いた断定調の語り口。

本編では、最初から弱小の立場、もしくは大手でも危機的状況に陥った状況を前半で紹介、逆境を感じさせておき、そこからの解決手段を提示しての逆転劇に一気に雪崩れ込む。谷と山を越えての爽快感の余韻を持ったエンディング。

スタジオには当事者達をゲストに呼び、再現VTRで泣かせ、感想を聞き、教訓を引き出す。当時と今を結び付ける場であり、真実味を感じさせる新しいドキュメントの場。

このように画期的手法を全編に渡って取り入れたプロジェクトXだったが、問題となったのもその画期的な手法にあった。ドラマ性に必要不可欠な谷である逆境。そこを強調すればするほど山場が生きてくる。その谷を深く掘り過剰演出の墓穴まで掘ったのが淀工合唱部の回だった。力のない一社員という立場を強調するために、企業や組織の壁に触れざるをえず、企業名の連呼となった。

新しいドキュメンタリーへの挑戦は、新しさに問題を孕んでいたとはいえ、スタッフ=挑戦者たちには、一定の達成感と大きな不満が同居する終わりであっただろう。
前回記事

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