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【あらすじ】染子(貫地谷しほり)を見舞った安子(内山理名)は、柳沢吉保(北村一輝)に疑いを持つが、元夫:牧野成住(田辺誠一)の命をちらつかされる。葬儀後、右衛門佐(高岡早紀)は祈祷僧:隆光(火野正平)を問い詰めるが、政治は吉保が担当とかわされる。安子とお伝(小池栄子)は徳松の墓前で和解。
御台所:信子(藤原紀香)と右衛門佐は安子に徳川綱吉(谷原章介)毒殺を再び要請。その役を買って出る大典侍(中山忍)は、自分が子を産みその子が将軍になれば問題無いと言う。信子は大典侍の部屋の前に蝋を塗ろうとして大火傷。
安子は綱吉に柳沢吉保の罷免を求める。吉保が命に反し成住を生かしている事を明かすが逆に不興を買う。信子を見舞った綱吉は、薬を口移ししようとして信子に取り押さえられる。飲まされたのは毒で、信子は無理心中を図る。
音羽(余貴美子)が成住の牢に忍び込み、これまでの経緯を話し刀を渡す。柳沢吉保に斬り掛かった成住は返り討ち。それを知った安子は音羽を許す。綱吉の重体の間に、吉里が世継ぎで吉保が後見と決まる。
綱吉の回復祝いの日、安子は柳沢吉保に斬り掛かる。吉保が取り上げた刀は綱吉に刺さる。表向きは病死とされ、綱吉が書き換えていた遺言により、吉里は後継から外され、甲府藩主:綱豊が家宣として6代将軍に。
綱吉の死から7日後に信子も亡くなり、吉保は殉死も許されず神田橋屋敷に蟄居。大奥の側室達は落飾し、お伝は瑞春院、大典侍は寿光院、安子と音羽は尼寺に入る。
【感想】◇
柳沢吉保の陰謀を食い止めようとする安子と右衛門佐・音羽の努力も空しく、最後は将軍綱吉が御身を犠牲にして、相打ちの形でもって終幕となる。善が勝つ終わりでないのでモヤモヤ感が残るが、大きくなり過ぎた悪を無くすには、多大な犠牲が必要だという事か。
柳沢吉保が悪である事が明白になっていく様子が前半で描かれる。そしてその悪を食い止める唯一の存在である将軍綱吉は、悪の存在を全て知った上で
「愛しい女を殺めてまであの男が手に入れようとするものは何か。ワシには無い執念を見届けたい」
と静観の構え。これを変えさせない限り吉保の暴走は止まらない。それを優柔不断だとして毒殺を要求する右衛門佐。
信子も毒殺を望みながらもその真意は、将軍家世継ぎの総潰しであり、その元となる側室全てへの憎悪であった。その更なる奥底には綱吉の愛を得たいと願う心であり、心中する事で屈折した想いを成就させようとした。満たされぬ愛が異常なまでの憎悪に変わっていたのだ。その憎悪を利用したのが吉保であった。
安子もまた、綱吉が全ての元凶だと認識しつつ、話し合いの解決を望んだ。母:阿久里(萬田久子)と成住の仇打ちで大奥入りした安子だったが、成住が生きていると知り、その決意は揺らいでいたのだ。また安子は、綱吉の行動には悪意がない事にも気付いており、説得可能と判断していた。
水戸光圀(大杉漣)の手下だった音羽は、その成住に刀を渡して実力行使に出るが失敗。音羽は水戸の立場上、主君を殺すのではなく、主君の存在を脅かす吉保を殺そうとの考えだったのだろう。最終手段である実力行使の失敗により柳沢吉保を止める手立ては完全に失われる。ここに吉保の悪は頂点を極める。
後半はその悪の終焉が描かれる。安子が吉保に斬り付けた刀が綱吉に刺さり、それをさらに深く刺す綱吉。武士である成住ですら吉保殺しに失敗したのに、女である安子が斬り掛かった所で失敗は目に見えているが…。こういった一貫性も無く浅はかな点がこの主人公:安子に最後まで感情移入できない部分でもあった。
「吉保、これが見たかったのだろう。吉保の毒で信子が長丸を殺した。信子の恨みを育てたのはこのワシじゃ。つまり長丸はワシが殺した」
そう言って死んでいく綱吉。吉保の悪も、正室・側室・総取締役ら全ての人の望みも叶えた綱吉。
「生まれ変わったら安子と夫婦になりたい」
「生まれ変わったら花になりたい」
最期に自分の叶わぬ望みを口にして死んだ綱吉。やはり綱吉役の谷原章介だけがこの「大奥〜華の乱」で株を上げたように思う。
【総評】◇
善は悪に勝つ事はなく、悪を蔓延らせた張本人である綱吉が責任を負って死に、悪を消した事になる。
この終わり方こそ、このドラマを象徴するような形式だった。単純な勧善懲悪にしない所は評価できるが、悪を描き過ぎたきらいがある。最後に安子は
「善人と悪人がいるのではなく、人の心に善と悪がある」
と言ったが、ならばドラマの中で心の善悪をもっと描くべきであった。特に善を。
そもそも主人公:安子が善の心を持っているのではなく、母と夫の仇討ちで大奥入りし、その決意もすぐに揺らいだ上、憎悪渦巻く大奥に取り込まれてしまったかのように対立劇を演じてしまった所が致命的だったのでは。
もう一人世継ぎ候補を…という強欲の結果、孫を二人も失った桂昌院(江波杏子)。卑しい身分を跳ね返すために不必要なほど対抗意識を持って身を滅ぼしたお伝。逆に高き身分ゆえに綱吉から愛されず、嫉妬と憎悪が全ての人への復讐へと向かった信子。善行をする意思を持ちながら、結局は政治に口出ししたかった右衛門佐。イケズをしたいだけの子悪魔キャラに終始した大典侍。吉保への愛を貫くため、結果的には悪行に手を貸す事になった染子。
悪への対立軸が示される事無く、不純で不毛な対立だけが延々と続き、その対立を利用する悪がさらに増大していく…といった展開を最後まで見せられた視聴者は、うんざりしたのではないか。そんな中、悪意を持たず、その善意が常人とズレているがゆえに周りに不幸をもたらす徳川綱吉だけが異なる存在に見えた。どの女達にも感情移入できず、悪を増長させる柳沢吉保を傍観するしかない視聴者。傍観と同じような姿勢である綱吉にしか我が身を置く事ができない。
前評判の高かった「大奥〜華の乱」だったが、こうして女優陣が総コケとなる中、異彩を放った谷原章介だけが高評価された。個々の演技がどうこうというよりも、憎悪の塊になりきった者ほど今後の女優業に支障を来たすほどのダメージを受ける、ある種恐ろしいドラマだったように思う。
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大奥〜第一章のレビュー
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