テレビ批評的視聴記 - 2005/12/01

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2005年12月01日(Thu)▲ページの先頭へ
その時歴史が動いた:真珠湾への道

【あらすじ】山本五十六は日本海海戦で伝令として参加。その後、海軍エリートコースを歩み、米国との覇権争いを牽引した。しかし駐米武官となって米国に滞在し、豊富な資源を基板とする産業大国ぶりに驚く。米国を仮想敵国とする無謀さを痛感。

軍縮条約の全権を任された山本五十六は、米:英:日の5:5:3の軍艦比を平等にするよう求める国の方針に疑問を抱く。
「日本が3に縛られているのではない、米英を5に縛っている。条約が消え、無制限の建艦競争が始まれば10:1にもなってしまう」
だが山本の考えは理解されず、条約は破棄。大艦巨砲主義での軍拡競争となる。山本は航空分野へ左遷。

日中戦争で米国が中国を支援した事に対し、政府は独・伊との三国同盟を結ぼうとする。海軍次官となった山本五十六はこれに命を狙われながらも反対し続ける。結局、独がソ連と組んだため三国同盟は立ち消え。山本は退職前のお飾り的なポストである連合艦隊司令長官となる。

その日、独がポーランドに侵攻。第二次世界大戦勃発。三国同盟も締結へ。異を唱える山本五十六の声は空しく響いた。米国は日本に経済制裁。もはや米国との戦争が避けられなくなる。

山本五十六は開発を進めた97式艦上攻撃機を使って、魚雷発射訓練を始める。高速で移動する飛行機からの攻撃を、戦艦は回避できなかった。
「あれで真珠湾をやれないか」

【感想】○
開戦前、最も強く戦争反対を唱え続けていた山本五十六が、連合艦隊司令長官として真珠湾攻撃を決意するまでを描いた回。山本が職を辞すか作戦を練るかの選択を迫られ、誰も思い付かなかった(実際には参謀:黒島亀人が発案)真珠湾攻撃を決断する。その瞬間が「その時」とするもの。

戦争反対でありながら指揮する立場になった皮肉な運命と、山本自身の逆説性・ジレンマ・隔絶した両面性を重ね合わせる手法。これまで良く知られている解釈だが、しっかりと基本線を押さえているとも評価できる。

米国との戦いが無謀である事を知り、それを理詰めで日本の軍人たちに説いたが、理解されなかったというのは、山本の力不足とも言えるし、軍人たちの理解力不足とも言える。ともかく、山本以外には米内光政と井上成美だけが戦争反対では止められなかった。

余談だが、米国滞在中の山本五十六には次のエピソードが残っている。コーヒーを頼んだ山本が何杯も何杯も砂糖を入れていたので、不思議に思った隣りの人物が訊ねると
「これで米国の国力を少しでも減らすんだ」
と答えたという。つまり、日本が米国と戦うのはこれくらい無意味な事なのだと言いたかったのだろう。

軍縮条約交渉での「米英を5に縛っている」との山本の見解は、全くその通りだったのだが、日本が少ないとだけ思っている上層部にはそれは詭弁だと捉えられる。ここに、日本だけしか知らない者と欧米を知る者との決定的な差が凝縮されている。

戦争が決定し、山本は短期決戦論に傾倒していく。持久戦では勝ち目がなく、軍拡で開いた艦船の戦いでは負ける。ならば、まだ競争の激しくない航空主兵でスタートすれば勝機があるのでは?そして真珠湾という心臓部を最初に叩き、米国の戦意を喪失させる。その間に南方を占領し、有利な講和に持ち込む。

…山本のこの構想は、連合艦隊司令長官の枠を遥かに越えたものだった。しかし彼は国家はもとより、陸軍や海軍全体をも指揮する立場ではなかった。この事が一条の光にも見えた真珠湾攻撃の先を説明する場も機会もないまま、無条件降伏への道を辿る悲劇にも繋がっていく。

その第一歩が、真珠湾攻撃での現場指揮官:南雲忠一へ攻撃の真意が伝わらなかった事や、宣戦布告手続きの不備であったのだろう。それらに関しては来週に放送されると思われるので今週はここまで。
前回記事

山本五十六 (上巻)阿川 弘之
山本五十六 (下巻)阿川 弘之
人間・山本五十六―元帥の生涯
父 山本五十六
山本五十六―"常在戦場"の生涯と連合艦隊 歴史群像シリーズ
全記録 人間山本五十六(太平洋戦争研究会)
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