テレビ批評的視聴記 - 2005/08/12

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2005年08月12日(Fri)▲ページの先頭へ
赤い背中

【あらすじ】谷口稜曄(たにぐちすみてる)少年は、長崎で郵便配達中に被爆する。彼の背中を貫いた放射線と熱線は、遺伝子レベルまで背中を焼き尽くし、背中は真っ赤に染まった。

赤い背中となった谷口少年は、うつ伏せのままの4年間の闘病生活を送り、胸は床ずれで骨までえぐられた。十数回に及ぶ皮膚移植手術は失敗し、背中には薄い膜が張っているだけ。それでも谷口少年は生き延びた。

妻・栄子さんは谷口さんの体重維持と薬を塗る作業が日課。体重が増えると背中が裂け、化膿する。また、原因不明の石灰質の肉塊が繰り返し出現する。

背中から皮膚呼吸が出来ないため、谷口さんの声は小さい。体温調節も難しく、夏は焼けるように痛い。車や電車では背もたれに身を預けられない。

「こんなにした原爆、原爆を作った人間、原爆を作らせた人間、原爆を使った人間、原爆を使わせた人間、これは人間じゃない」

戦後40年経ってから自分の経験を口にするようになり、現在も各地で講演をする。NPT:核拡散防止条約の会議に合わせたデモに参加するため、渡米する谷口さん。もちろん飛行機の中でもシートを使わず、一睡もしない。

核を持つアメリカが拡大防止を呼びかける。それは説得力が無いとして受け付けない各国。議論は一歩も進まない。
「核を持つ国が他の国に持つなと言ってもおかしい」
赤い背中の写真を名刺に印刷し、ただ配り続ける谷口さん。

【感想】◎
知らない事の中で知っておかなくてはいけない事がまだまだたくさんあるのだと痛感した次第。あの赤い背中の写真は見た事があるものの、その本人はとっくに死んだと思い込んでいた。

「私が助かると思っていた人は一人も居なかった」
その中の一人に自分も入っていたのか。それほどまでにあの写真は強烈だ。そして、生き延びた今も傷は治っておらず、火傷と闘う日々が続いているとは。現在の医療技術をもってしても手の施しようが無いという。

それでも76歳まで生きてこられたのは谷口さん本人の強い意志と、妻:栄子さんの支えがあったればこそだ。はたまた、生かされた事に意味があり使命があったからか。それにしては、講演や核廃絶を訴える行為は本当に「小さな声」で終わってしまうかもしれない。

番組中、唯一の明るい場面があった。夫婦が互いに幼い頃の学校の集合写真から、自分を探させる。
「鼻が低いからすぐわかった」
とおどける谷口さん。今度は栄子さんが谷口さんを探し当てると
「よう探せたね」
と安心したように言った谷口さん。二人の絆の深さというか、出会いは運命だったのか…とまで思わせるニクイ演出。こういった違うトーンのワンポイントがあると印象的になって非常に良い。

「長生きして下さい、とよく言われるが、生き続ける限りこの苦しみが続く」
と吐露する谷口さん。
「アメリカ行って背中を見せてこい」
と励ます妻:栄子さんの偉大さには敬服してしまう。

…とまぁ記事を書いみても、自分の言葉の陳腐さに嫌気が差すだけなので、この辺で打ち止め。本当に良い番組には記事なんか必要ない。心に留め置いて生き方に活かすのみ。

原爆写真 ノーモア ヒロシマ・ナガサキ
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